527 名前:Birthday Present ちよ視点 投稿日:03/06/09 01:55 ID:???
今日は私の家で誕生日パーティ。みんなが私の家に来てくれた。
ケンカしてともちゃんはよばないなんて言ったけど、やっぱりみんなと一緒が楽しいな。
『♪ハッピバースデー トゥーユー ハッピバースデー トゥーユー
ハッピバースデー ディア ちよちゃーん ハッピバースデー トゥーユー』
みんなの歌が終わってロウソクを吹き消した。これで私も少しお姉さんになった。
「と、いうわけでこれから大プレゼント大会のはじまりー!」
ともちゃんの掛け声でみんな盛り上がった。
「とも、お前今年は『気持ち』なんて書いた紙じゃないだろうな」
「大丈夫だって。今年はすごいの用意したから」
「わー、楽しみです」
「ちよちゃん、あんまり期待しない方がいいぞ」
よみさんのツッコミも相変わらずだった。
よみさんは最近流行りのファンタジーの本、大阪さんは大きい犬のぬいぐるみ。
やっぱりプレゼントがもらえるってすごく嬉しい。


528 名前:Birthday Present ちよ視点 投稿日:03/06/09 01:56 ID:???
「てなわけで私達は二人で一セットです!」
「わー」
榊さんと神楽さんが渡してくれた箱の包装を開けてみた……
なに――― これ―――
「おっと! 一つ一つで見ればわかんないかもしれないけど ガキャーン 合体!!」
なに――?
「じゃあ、最後は私のプレゼントだな!」
どうしようもできずに固まっていると、ともちゃんが助け舟を出してくれた。
「ともちゃんはどんなプレゼントですか? 何も持ってないですけど」
「それはねー」
そう言ってともちゃんは笑いながら顔を近づけてきた。そして……
ちゅっ。
「どう、私のプレゼント? 私のキスってすごいレアでしょ」
私は今度こそ何もできずに固まっていた。


529 名前:Birthday Present ちよ視点 投稿日:03/06/09 02:07 ID:???
しばらくの間、思考することさえできなかった。
キスされたんだって理解するまですごく時間がかかった。
……そんな……わたしのはじめてのキスが……
なんだか泣きたくなってしまった。
「あれ? ちよちゃんどうしたの?」
ともちゃんの無責任な言葉にすごく腹立たしくなった。
「もうしらない! ともちゃんのバカ!」
私は部屋を飛び出した。
「あ、ちよちゃん!」
誰かが私を追いかけてきた。


530 名前:Birthday Present ちよ視点 投稿日:03/06/09 02:08 ID:???
寝室で一人泣いてると、よみさんが部屋に入ってきた。
「ちよちゃん……」
私は泣くだけで何も答えられなかった。
「ごめん、ちよちゃん。私があのバカをちゃんと見てなかったせいで」
「もう……ともちゃんなんかしらない」
いつもの私だったら、そこで「よみさんのせいじゃないですよ」って言うはずなのに。
「ホントはさ、私ならともが何をするか予測できたはずだったんだ」
え?
「小学校2年生のときの私の誕生日にさ、あのバカ、プレゼントとか言って私にキスしてきたんだ。
クラスメートのみんなのいる前でさ。それであのバカ何て言ったと思う?
『私のファーストキスだよ。これでよみは一生の親友だよね』って。」
よみさんもファーストキスとられちゃったんだ。ともちゃんってほんとにしょうがない人だなあ。
「あいつバカだけど、ちよちゃんのこと大好きなんだよ。だからさ、とものこと許してやって」
すぐには「うん」とは言えなかったけど。でもよみさんに笑いかけることはできた。
「じゃあ、とも連れてくるから。ちゃんと謝らせないと」
そう言い残してよみさんは部屋を出て行った。


531 名前:Birthday Present ちよ視点 投稿日:03/06/09 02:09 ID:???
「こら、とも! バラしてんじゃねえ!」
隣の部屋からよみさんの声が聞こえてくる。バラすって……さっきの話かな?
私はさっきのキスのことを考えた。
ともちゃんの柔らかい唇の感触……いや、そういうことじゃなくって。
ともちゃんがよみさんにキスした後の言葉。よみさんが私に言ってくれた言葉。
そうか。そういうことなんだ。
自然と私の顔がほころんできた。
「ほら、入れよ」
よみさんの声が聞こえた。私はわざと怒った顔になった。


532 名前:Birthday Present ちよ視点 投稿日:03/06/09 02:10 ID:???
ともちゃん、私を見て少しは反省してくれるかな? いや、反省してもらわなきゃ。
「ちよちゃん、ごめんね。ちよちゃんのこと全然考えてなかった」
わかってくれたみたい。ならいいんだ。私はもうともちゃんのことを許しているんだから。
でも、今度はこの怒った顔をいつ元に戻すか、それに困ってしまった。
ともちゃんがポケットから何か取り出した。
「これ、本物の誕生日プレゼント。これあげるからさ、許してよ。また一緒に遊ぼう」
ともちゃんが渡してくれたのはブローチだった。天使が小さな宝物を守っている、そんなデザイン。
そのブローチにはともちゃんの気持ちがあふれているように思えた。
「はい、ありがとうございます」
作りものではない、本物の笑顔になることができた。ともちゃんも笑ってくれている。
「じゃあさ、改めて私からのプレゼント」
ちゅっ。
「……もう、ぜんぜん反省してないじゃないですかー」
また怒った顔になった。でも本当は笑っていたかった。
ともちゃんの『気持ち』は受け取ったから。私もともちゃんのこと大好きですよ。

―おしまい―