- 92 名前:血チ緋ヒ炉ロ 投稿日:03/11/23 14:55 ID:???
- あなたの顔がそばにある。
私はあなたの近くに寄り添って、公式に数字を当てはめる。
頭の中は上の空。それでも問いを解くのは簡単。
だってあなたの志望校、私は余裕で受かるもの。
かおりんが受かって私が落ちたら、私はそばにいられない。だけど逆の立場だったら、今のようになれるから。
親にも内緒で受けた模試は、いつも完璧A判定。
学校とかではわざとミスって、BとかCとか取っていた。
わざと浪人選んだことも、かおりん追ってることだって、誰にも悟られたくないの。
そうしてその目論見は、今の結果を生んでいる。だから、こうしてそばにいられる。
解き方教えるこの時を、なるたけ引き延ばしたくって、ちょっと考え込むフリしたり、逆に聞き返したりする。
嬉しいな。私の口から出ることをちゃんと聞いてる、答えてる。
あなたの声が立てる振動、わたしの喜び振るわせる。
それでもね、
あなたがそんなに熱心なのは、あの人の場所を目指すため。
瞳は私を映さない。
でも、いいの。
こんな思いも、こんな孤独も、これでおしまい、打ち切り、終了。
悲劇の幕はここで閉じるの。
- 93 名前:血チ緋ヒ炉ロ 投稿日:03/11/23 14:55 ID:???
- ねえ、かおりん。
休憩しよっか。
ねえ、かおりん。
紅茶いれるよ。
ねえ、かおりん。
これ美容にいいの。
ほら、飲んでみて。
お肌の健康にとてもいいって。でも、かおりんには必要ないかも。だって、そのままでかわいいもん。うそじゃないよ、冗談でもない。おだててなんかいるわけない。これは私の本当の気持ち。
どう? どうかな? 効いてきた?
うん、これ、すぐ効くの。
え、眠い?
そう、眠いの。眠いんだ。
じゃあ、やっぱり効いてるんだよ。即効性の睡眠薬。
だって、ホラ。
寝不足はお肌の天敵だもん。
ね、かお り ん …
- 127 名前:血チ緋ヒ炉ロ 投稿日:03/11/28 07:54 ID:???
- ・
・
・
・
・
起きたねかおりん。大丈夫? 足とか手とか痛くない?
やらかい布を挟んであるけど、縛りがきついの変わりないから。
ベッドの金具に結わえてあるから、動くとかえって痛いかも。
恥ずかしがらなくてもいいよ。かおりん、とっても綺麗だよ。
何にも恥ずかしくないよ。私だって裸だもん。
大丈夫。
服とか全部たたんであるから、しわがつくことなんてない。なんならアイロンかけよっか?
どうしたの? なんでこんなことするかって?
そうだよね。わかるわけがないもんね。
わかってくれたらこんなこと、する必要なかったもん。
ねえ、かおりん。
そろそろ私を見てくれない? あなたはずっと見てくれない。
ねえ、かおりん。
あの人、あなたを見てくれた? 私はずっと見つめてた。
ねえ、かおりん。
あの人、キスとかしてくれた? 私がこれからしてあげる。
- 128 名前:血チ緋ヒ炉ロ 投稿日:03/11/28 07:55 ID:???
- そんなに暴れちゃ危ないよ。
結構痛いよ、ナイフって。私もかおりん、切りたくない。
そうだよ、かおりん、それでいい。じっとしてれば問題ないから。私はやさしく愛してあげる。
石のように固まった、愛しい人に近づいて、私はそっと触れあった。
これが私のファーストキス。あなたにとってもファーストキス。
やらかいな。温かいし、気持ちいい。
生まれたままで抱き合って、ロマンチックなこの時に、私はじんわり溶け込んだ。
まだだよ、かおりん。もっと、もっと。
表面だけのキスだけじゃ、孤独の長さは埋まらない。心の渇きは治まらない。
いいでしょ、かおりん。ねぇ、お願い。
少しでいいから口開けて。
私の舌を受け入れて。
- 129 名前:血チ緋ヒ炉ロ 投稿日:03/11/28 07:58 ID:???
- 閉じた唇ゆるませて、あなたの中に入り込む。
ぬめる感触こすりたて、温度がどんどん高まるの。
もっと奥まで感じたい。かおりん、もっと味わいたい。
舌も、歯茎も、口蓋も、私の舌で埋め尽くす。
この味、この熱、このぬめり。全部あなたのものなんだ。全部私のものなんだ。
もっとしようよ、ねぇ、もっと。舌が一つになるまでさ。
大好き、かおりん、とても好――
――ッ
……情熱的だね、かおりんは。噛み切られるかと思ったよ。
わかっているよ、大丈夫。もっと激しくしたいよね。
こことか、ココとか、此処とかさ、いっぱい弄ってあげるから。
経験全くゼロだけど、練習だけは重ねてきたから。
この日この時それまでに、頭の中で反芻したの。イメトレだけで何万回、たくさんやってきたんだよ。
だから、ほら。
イメージ通りの動きが出来る。
だから、ほら。
イメージ以上の反応が来る。
気持ちいいでしょ、ね、かおりん。私もとっても気持ちいい。
- 130 名前:血チ緋ヒ炉ロ 投稿日:03/11/28 07:59 ID:???
- 胸も、うなじも、おへそも、ココも。
あなたにいっぱい触れるたび、私の方も気持ちいい。
かおりん、とっても感じやすい。身をよじらせて悶えてる。
動きが何だか強ばって、身を逸らそうとしているけれど、良すぎちゃうからしちゃうんだよね。
キスをしようよ、もう一度。
さっきじゃ物足りなかったね。
こっちの口にしてあげる。
――そんな動きで誘わないでよ。
歯止めが利かなくなっちゃうよ。
- 140 名前:血チ緋ヒ炉ロ 投稿日:03/11/29 10:52
ID:???
- おかしいね。
口をつけるのまだなのに、どうしてこんなになってるの? わたしの唾とかじゃないよね。
ごめんね、かおりん、ほんの冗談。
気持ちはわかるよ、大丈夫。
いっぱい私が欲しいのね。
欲しい気持ちが溢れてる。
嘘じゃないよ、ホントだよ。
すくって、かざして、見せたげる。
きらきら光って、糸引いて。ふふふふ、かおりん、照れてるの?
赤くなって、かわいいな。目まで潤んで、泣きそうで。
それじゃそろそろ、舐めたげる。奥の奥まで舐めたげる。
すごいね、かおりん、ココすごい。
私の舌を締めつけて、「もっと」とせがんでくるみたい。
どんどん溢れて、飲みきれないよ。欲張りなんだね、かおりんは。
いいよ、かおりん、してあげる。もっと、もっと、してあげる。
私が舌を動かすたびに、かおりん、ビクッて震えるの。ビクビク震えてかわいいの。
だから私は張りきって、あちこち舐めてあげちゃうの。
固くなったココとかを、ときどき噛んであげちゃうの。
何度も何度も愛してあげたら、
大きく身体をのけぞらせ、かわいい声で叫んだの。
達したんだね、良かったね。
これで準備はオッケだね。
- 141 名前:血チ緋ヒ炉ロ 投稿日:03/11/29 10:53
ID:???
- 一つになれるね、深く深く。やっとコレが使えるね。
ちょっと痛いかもしれない。けれど私も初めてだから、一緒だから大丈夫。
ほら、見ててよ、何でもない。
私の中に埋もれてく。グッ力んで押し込んで、ほらね、一気に入ったよ。
痛かったけれど、痛みより嬉しさの方が大きいよ。
あなたと一つになれるなら、どんなことでも嬉しいの。
大丈夫。大丈夫だよ、大丈夫。
一つになれるよ、一つにね。ホラ、どんどん入ってく。
どんどん、どんどん、深く、深く。
かおりん、バタバタはしゃいでる。嬉しい。かおりん、私も嬉しい。
一つになったよ、やっと一つ。嬉しい、嬉しい、とても、嬉しい。
もっとよ、かおりん、もっともっと。
動いていいよね、気持ちいいから。
- 142 名前:血チ緋ヒ炉ロ 投稿日:03/11/29 10:55
ID:???
- きつくきつく抱きしめて、かおりんの身体を感じるの。
奥まで奥まで突き上げて、かおりんの身体を確かめる。
もっと動いて、もっと激しく、もっと一つに、もっと一緒に。かおりん、声を張りあげる。
私も歓喜の声をあげる。一緒ね、かおりん、ずっと一緒。わたしも嬉しい、とてもうれし
い。一度のうごきで、ふたりがかんじる・わたしがよくて、かおりんも・うれしいきもち
がひとつになって・わたしとあなたはいっしょなの・いっしょにいっしょ、ひとつになっ
て、わたしはあなたと、かおりんと、うれしい、いっしょ、ひとつに、ひとつに、かおり
ん、かおりん、かおりん、かおりん、すきだよ、かおりん、とてもすき――
…かおりん、何か言いたいの?
口をパクパク開けている。かすかな声が漏れている。
そっと耳を近づけて、あなたの言葉を受け止める。
- 160 名前:血チ緋ヒ炉ロ 投稿日:03/12/02 08:10 ID:???
「……か…き……さ、ん…」
そう、だよね。
わかっていたよ、そんなこと。
どんなに私が努力しても、これだけのことをした後も、かおりん私を見てくれない。
一生あなたは私を見ない。あなたは星が好きだから。
いいよ、かおりん。認めるよ。あなたは星を見続ける。
だから、かおりん、かなえるよ。星をあげるよ、一度だけ。
宙を疾る星の輝き。一瞬だけのヤイバの光。
かおりんの色が広がった。かおりんの熱が広がった。
あなたの香りも広がって、あたりはあなたで包まれる。
きれいな色だね。情熱の赤。
とても熱くて、濃い匂い。
あぁ、かおりん。嬉しいな。
緋色に染まったあなたの瞳。もう私しか写さない。目の前のものしか写さない。
紅くて熱いあなたの身体。もう私を拒まない。何をしても動かない。
私は溶けるあなたの熱で。私は染まるあなたの朱で。
とても嬉しい。涙が出てきた。溢れ出てきて止まらない。
嬉しい、嬉しい、とても嬉しい。
涙が、涙が、止まらない。
かおりん、大好き、とても好き。
とてもとてもとても大好き。とてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとても
とてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとてもとても
- 161 名前:血チ緋ヒ炉ロ 投稿日:03/12/02 08:10 ID:???
- 【ラジオ】
………今日………………帰宅し……発見……死亡し…の…………かお…………チヒ………
…………二人は互いの…………刃………心中を………図った……捜査………………………
fin.
(以下分岐)
分岐@
- 150 名前:A 投稿日:03/11/30 12:30 ID:???
- かおりん、目が覚める。身を起こそうとして、手足が縛られていることに気づく。
目の前に千尋。自分のこれまで抱いていた想いを語り出す。
――かおりん、好き。ずっと一緒にいたい。
拒むかおりん。千尋は一瞬哀しそうな顔をするが、またにっこりと笑って、右手をかざす。
親指と人差し指に挟まれた白っぽい物体を口の中に放り込む。喉の動きが嚥下を示す。
――これで一緒。ずっと一緒。私の中にかおりんがいる。私の身体と一つになって。
その時、かおりんは初めて気づく。足の感覚がないことに。
視線をそこに向けて悲鳴をあげる。
――麻酔したから痛くないでしょ。小指だけだよ、大丈夫。それにこれでおあいこだし。
恐怖と混乱でぐしゃぐしゃになった頭で、千尋の言葉を反芻する。「おあいこ」…?
――クッキーとても美味しかったよね? 焼きたてだったし、隠し味があったから。
千尋、自分の足下に目を向ける。かおりんもその先を見る。見てしまう。
――あ、また血止めしなきゃ。
白い靴下の端が不自然に凹んでおり、そこが赤く滲んでいる。
絶叫に近い悲鳴をほとばしらせるかおりん。穏やかに微笑む千尋。
――これでずっと一緒だね。
分岐A
- 162 名前:千尋ノ谷 投稿日:03/12/02 08:11 ID:???
- え。
何を言ったの、わからない。
も一度言ってよ、聞こえない。
「…………め…ん……ね」
かおりん、何を言ってるの。謝る必要なんてない。
陰口笑って言っていた。だから私のすることも笑ってくれればいいだけなのに。
いまさら何を言われても、私は私は
「気……づい…て………れ…なく、て…」
やめてやめてやめてやめてやめて。
私はもう戻れない。
あなたが私を見なかったから、あなたがわかってくれなかった、あなたが、あ、な…
私?
私が何も言わなかった、私が何も伝えなかった、だから、だから、私が…悪…イ
- 163 名前:千尋ノ谷 投稿日:03/12/02 08:12 ID:???
- 私、私は、私は何を…
なんて事をしてしま……
何をしても許されない。何をしても償えない。
かおりん、かおりん、ごめんなさい、ごめんなさい、今すぐほどく、ほどくから、
どうして。
かおりん、どうして、微笑むの。そのままでいいって、どうしてよ。
このまま…愛してほしいって…。愛して…私に…かおりんを?
かおりん……かおりん、かおりんかおりん。
ありがとう、ごめんなさい、ありがとう、大好き、大好き。
拙い動きで、ゆっくり、ささやか。
それでも私は満たされる。さっきよりも満たされる。
静かな涙は心を溶かし、綺麗にクリアになっていく。
かおりん、やさしくキスするの。私を見つめて微笑むの。
抱いていたのは私だけど、抱かれていたのは私自身。
かおりん、私を見てくれる。かおりん、私を感じてくれる。
私はあなたに包まれて、白く、光って、輝いて。
白い白さのただ中で、私はあなたと飛翔する。
- 164 名前:千尋ノ谷 投稿日:03/12/02 08:13 ID:???
私の心は歪んだままで、深い谷を作ってる。漆黒の影を落としてる。
それでも、かおりん、あなたがいれば、光が射すの、少しでも。
あなたと歩いていけばいい。あなたが側にいればいい。
ありがとう、かおりん、心から。
あなたが好きで良かったよ。
たとひ我死の影の谷を歩むとも
わざわひ恐れじ 汝我と共に在(いま)せばなり 《旧約聖書》