44 名前:メロン名無しさん 投稿日:02/09/17 15:04 ID:???
「なあ、今度の日曜日・・・空いてないか?」
「えっ?」
それは余りのも意外な、そして突然な一言だった。
少し驚いた表情の俺をよそに、彼女は話を続けた。
「今度の日曜日からさ、榊や智たちとちよちゃん家の別荘に行くんだ。
 それでもし良かったら○○も一緒にどうかな〜、って思ってさ」
言い終わると彼女はにっと無邪気な笑顔を見せた。
彼女の名前は神楽。水泳部のエースであり・・・俺の、彼女だ。
付き合い始めたきっかけは、彼女からの告白だった。
それはある日、一人夜のプールに残り、タイムが伸びないからといって
必死に練習を繰り返す神楽を励ましたのがきっかけだった。
前々から気になっていた存在ではあったのだが、夜のプールで抱きつかれて以来
俺には欠かせない存在へとなっていった。
そして、思いを伝えようと思い始めた矢先、彼女の方から告白してきたのだ。
告白されたときは思わず、「お・・・俺でいいのか?」なんて聞いてしまったものだ。
その時は月並みな言葉だが、まさに夢のような瞬間だった。
今思い出しても、少し照れてしまうほどに・・・


45 名前:メロン名無しさん 投稿日:02/09/17 15:05 ID:???
「おい、○○?聞いてるか?」
ハッとして我に返ると神楽が俺の顔を覗き込んでいた。
「・・・え?ああ、ゴメンゴメン。何だっけ?」
「ったく・・・人の言うことはちゃんと聞けよな」
少し不満げな表情を浮かべながら神楽は言った。
「だからさ、今度の日曜日から四日間ちよちゃんの別荘に遊びに行くんだ。
それで、○○も一緒にどうかな、って思ってさ」
「へえ・・・今週の日曜日か。それで、他には誰が来るんだ?」
神楽は指で数えながら言った。
「え〜と、あたしとちよちゃんと智、それから榊とよみ、あと保護者として
ゆかりちゃんと黒沢先生が来るかな」
「・・・ゆかり先生に保護者がつとまるとは思えないけどな、俺は」
「あはははは!言えてるな、それは!」
ショートの髪をかきあげながら、神楽は楽しそうに笑った


46 名前:メロン名無しさん 投稿日:02/09/17 15:06 ID:???
「――――しかし・・・」
「ん?どうかしたか?」
ふう、と一息ついてから、俺は言葉を続けた。
「俺以外、みんな女の子なんだな・・・」
「・・・あ!」
俺の一言で神楽も気がついたようだ。そう、この旅行、俺以外の全員が女子なのだ。
急にそれまで楽しそうだった神楽の表情が曇った。
「そ、そうだよな・・・男一人なんてやっぱり気まずいよな・・・」
みるみるうちに沈んだ表情になっていく神楽を見て、俺は少し慌ててしまった。
「あ・・い、いや・・・その・・・他の皆がいいって言ってくれるなら・・・」
「えっ!?ほ、本当か!?」
俺の言葉を聞くや否や、神楽の表情がパッと明るくなった。
「ああ。俺もその日はどうせ暇だし、な」
「よっしゃあ!」
神楽は嬉しそうに小さくガッツポーズをした。
それを見ていた俺も自然と笑顔になってしまった。
「じゃああたし、みんなに聞いてくるね!」
すんだ瞳を本当に嬉しそうにキラキラさせながら、嬉しそうに神楽は言った。
「おう」
小さく手を振りながら走り出す神楽を見送りながら、俺は言った。
旅行か・・・神楽と付き合い始めてから既に三ヶ月が経っているが、実のところ
神楽とはキスはおろか、手を繋げもしないままでいた。
・・・まあ、プールで抱きつかれたのは別だが。
それを今回、神楽の方から旅行に誘ってくれるなんて・・・
心の中で、俺は少し何かを期待していた。

外には真っ青な青空に入道雲が顔を覗かせていた。
暑い夏の日だった。

142 名前:44 投稿日:02/09/21 17:56 ID:???
ごめん、141の文章がおかしいのでもう一度 スマソ


ピピピピピピ・・・・
「・・・う〜ん・・・」
けたたましい目覚し時計の音で、俺はゆっくりと目を開けた。
普段ならば嫌気のさすこの瞬間も、今日ばかりは少し爽やかに感じる。
―――そう、神楽との旅行の日がついにやってきたのだ。
快晴・・・絶好の旅行日和だ。
初夏の爽やかな風が、心地よく通り抜ける。
まだ半分寝ているような頭に、蝉の声が響く。
昨日は・・・良く眠れなかった。
まあ、それも仕方の無いことなのかもしれない。
なぜなら、この旅行には神楽も来るのだから。
普段は急いでいておちおち食っていられない朝食を今日は少々余裕を持って食べる。
少し濃い目のコーヒーをすすりながら、俺の心はまるで遠足の日の小学生のように
弾んでいた。
出発前に念のため、もう一度荷物を確認する。
衣類、洗面具、MD・・・そして、カメラ。
今回の旅行の為に、今まで貯めておいた金で買ったものだ。
旅行中、神楽との思い出をしっかり残せるように・・・って、何言ってんだ、俺は。
時計を見ると、もう出発の時間だ。
靴の紐をいつもよりやや念入りに結び、美浜宅へと向かう。




143 名前:44 投稿日:02/09/21 17:58 ID:???
ちよ)「あ、○○さーん!おはよう御座いまーす!」
美浜家につくと、可愛らしいお下げをぴょこぴょこ言わせながら、ちよちゃんが
出迎えてくれた。
○○)「ああ、おはよう、ちよちゃん。今日から宜しくね」
ちよ)「いえいえこちらこそ!あ、どうぞお掛けになってお待ちください!」
○○)「ああ、有難う・・・ところで、他の皆はまだなのかな?」
ちよ)「あ、榊さんはもう来てますよ?」
○○)「え?どこにも居な・・・」
―――居た、庭の隅の木陰に。ちよちゃんの犬の横で悦に入っているようにも見える。
○○)「・・・あー、ちよちゃん?榊はどうしちゃったんだ?」
ちよ)「え?ああ、榊さんは動物が好きなんですよ〜」
○○)「へえ、そうなんだ・・・」 
ちよ)「一時間前からずーっとああしてるんですよー」
○○)「い、一時間!?」
意外だ、あの榊がそこまで動物好きだったとは。
どこかクールなイメージがあるから、動物の類なんぞ興味を持たないと思っていたが・・・


144 名前:44 投稿日:02/09/21 18:02 ID:???
よみ)「おはよー、ちよちゃん」
ちよ)「あ、よみさんおはよう御座います!」
そんなことを考えているうちに、水原が来たようだ。
彼女は今回のメンバーの中では比較的常識があるタイプだろう、
やはり集合時間前に到着した。
よみ)「へえ、珍しいこともあるもんだな〜」
気が付くと、水原が不思議そうな顔をして俺の顔を覗き込んでいた。
よみ)「お前が時間前に来るなんて、雨でも降るんじゃないか?」
○○)「そうか〜?普通だと思うけどな」
よみ)「何言ってんだよ、お前いつも学校に来るときはゆかり先生の直前だったろ?」
○○)「う゛・・・」
軽く笑いながら、水原は俺のことをからかった。
どうも俺はこいつには叶わないようだ。


145 名前:44 投稿日:02/09/21 18:03 ID:???
よみ)「ところで・・・」
水原は辺りを見回して、尋ねた。
よみ)「智はまだ来てないのか?」
○○)「智?ああ、滝野のことか。まだだけど?」
よみ)「やっぱり・・・」
フウ、と水原は軽くため息をついた。
○○)「ん?滝野がどうかしたのか?」
よみ)「あいつさあ・・・」
やや茶色がかったストレートのロングへアーを指先で軽く撫でながら、
水原は言葉を続けた。
よみ)「こういう旅行とか遠足とかになると必ず前日の夜なかなか寝付けなくてさー、
  いつまでも夜更かししてるんだよなー・・・だから今日も遅刻しないといいんだが」
○○)「へぇ・・・水原と滝野って本当に仲がいいんだな」
よみ)「ま、まあな」
○○)「ひょっとして、一緒のベッドで寝たこととかあるのか?」
よみ)「!!!!」
俺の一言で、なぜか水原の顔が真っ赤になった。
よみ)「な・・・なななな、何言ってるんだお前はっ!!そんなわけ無いだろっ!!」
何故か水原は急に怒り出してちよちゃんの方へと行ってしまった。
・・・俺の冗談がそんなに気に食わなかったのだろうか?
何で怒ってんだ?アイツ・・・

147 名前:44 投稿日:02/09/21 18:04 ID:???
とも)「おっはよー!」
大坂)「ちよちゃんおはよ〜」
神楽)「おはよー!」
ちよ)「あ、ともちゃん!神楽さん!大阪さん!おはようございまーす!」
元気な挨拶とともに滝野、大坂・・・そして、神楽の三人がやって来た。
通称“ボンクラ―ズ”の到着である。
とも)「あっはっは!どーだよみ!今日は遅刻しないで着たぞ〜!」
よみ)「ホントはそれが普通なんだよ、まったく・・・」
元気良く笑う滝野と、相変わらず鋭い突っ込みを入れる水原。
やっぱり、この二人はいつまでたっても“親友”って感じだ。
大坂)「よみちゃんひさしぶり〜」
よみ)「ああ、暫くだね」
大坂)「よみちゃん、また大きくなったな〜」
よみ)「え!?そ、そうかな?」
とも)「ほほ〜う!」
急に滝野が二人の会話に割って入った。
とも)「最近あんまり太らなくなったと思ったら、胸にカロリーいってたのか〜!」
真っ赤な顔をして水原が反論した。
よみ)「な、何言ってるんだ!!ともっ!!」
とも)「あはははは!」
二人のやり取りを見ていた大坂が言葉を継いだ。
大坂)「・・・背が」
とも・よみ「背かよっ!!」

・・・こいつも相変わらずだな、まったく・・・


148 名前:44 投稿日:02/09/21 18:05 ID:???
三人のやり取りをボーっと眺めていた俺に、神楽が声を掛けて来た。
神楽)「よ、○○!おはよ!」
○○)「ああ、神楽。おはよう」
神楽)「偉いじゃん、遅刻しないで来るなんてさ!」
○○)「そうか?そんなに偉い?」
神楽)「うん、偉い偉い!」
○○)「じゃあ、頭撫でてくれよ」
神楽)「あはははは!何言ってんだよ、お前は!」
嬉しそうに笑いながら、神楽は俺の背中をバンバン叩いた。
―――本当は撫でてもらえるかと思って少し期待したんだけど。
まあコレはコレでいいか・・・
神楽はひとしきり笑った後、言った。
神楽)「ところで・・・」
○○)「ん?」
神楽)「黒沢先生とゆかり先生はまだなのか?」
○○)「ああー、そういやまだ着てないな。何かあったのかな?」
神楽)「いや・・・」
少々何かを考えた後、神楽は切り出した。
神楽)「ゆかりちゃんのことだ。多分前日に酒飲み過ぎたとかそんなんじゃないか?」
○○)「おいおい、ゆかり先生だってもういい年の大人なんだし、それは・・・」
そんな話をしている、まさにその最中だった。


149 名前:44 投稿日:02/09/21 18:06 ID:???
にゃも)「あーもう!だからあれほど急ぎなさいって言ったのに!!」
ゆかり)「うるさいなー、にゃもは・・・そんなに怒ってばっかりいると小じわが増えるぞ」
にゃも)「ぬぅわんですってぇぇっ!!」
ちよ)「あ・・・あの・・・ゆかり先生、黒沢先生、おはようございます・・・」
にゃも)「・・・え!?・・・あ・・・ああ、おはようちよちゃん。それに皆も」
あっけにとられていた俺たち一同にようやく気づいたのか、
黒沢先生は慌てて挨拶をした。
よみ)「どうしたんですか?今日は。何かあったんですか?」
水原の質問に、ややあきれた顔でゆかり先生を見ながら黒沢先生は答えた。
にゃも)「いやね、昨日ゆかりが旅行の景気づけだ、とか何とか言って夜遅くまで無理やり呑みに行ってたのよ。そしたら今日の朝は爆睡しててなかなか起きなくて・・・」
・・・あっけにとられる一同。
暫くの間をおき、やっとのことで俺は神楽に言った。
○○)「・・・当たったな」
神楽)「・・・うん」
神楽もまさか当たるとは思っていなかったのだろう、ぽかーんとした表情で答えた。
ったく、この先生たちも相変わらずだな・・・