625 名前:610=616 投稿日:02/11/02 03:55 ID:???

神楽の視点から、前回の作品パターンに基づいて妄想してみました・・・

「どうして、結婚したらいけないんだよ・・・」

度重なる親父の反対に耐えかねて、私は家を飛び出した。

辛うじて泣くのをこらえながら、夜の街を走り抜ける。
家路につく人波をかき分けて、都心へ向かう電車に乗り込んだ。
目的地は、そう・・・

オフィス街にほど近い、アパートの一室。
突然の来客に、アイツは怪訝そうな表情を見せていた。
躊躇うことなく部屋に入ったものの、ほんの数歩で動けなくなってしまう。

「お願い、ここに居させて・・・」
今まで張りつめていた、緊張の糸があっさりと切れる。
堰を切って涙が零れるのが分かった。

とにかく一緒になりたかった。
大好きな人のそばにいたかった。
一頻り泣いてから、私はアイツに全てを委ねた。

626 名前:610=616 投稿日:02/11/02 03:55 ID:???
>>625
どれだけ時間が経ったのだろう。
閉め切ったカーテンの隙間から、仄かな月明かりが見えていた。
アイツは私のとりとめもない話に、ずっと耳を傾けてくれる。

嬉しかった。
そして、漸く決心がついたのだ。
どんなことがあっても、私はアイツと一緒に過ごしたい。

「明日も、明後日も・・・ここに、居たいよ・・・」


電子レンジのブザー音を聞いて、はっと目が覚める。
「へへっ、寝る前のホットミルクは最高だぜ〜」
熱くなっているマグカップを取り出すと、良い匂いが漂ってくる。

ベッドに目を向けると、アイツは何時の間にか眠りについていた。
今夜も、お願い・・・とは思ったが、仕事の疲れが出ているのだろう。
そっと手を握ると、少しほっとしたような表情を見せてくれた。

・・・神楽の「おねだり」って、体力的にかなりハードな予感がします。

650 名前:637-639=647 投稿日:02/11/06 01:05 ID:???

前々回(>>625-626)に引き続いて、神楽の視点から妄想してみました・・・

ゆっくりとベッドに腰を下ろして、ホットミルクを口にする。
何時ものおねだりも、今夜ばかりはお預け。
本当は我慢したくないけれど、アイツに無理はかけたくない。

「簡単には叶えられないから、夢っていうのかな・・・」

10年前の私は、文字通り夢と希望に満ちあふれていた。
第一志望の体育大学に合格し、水泳を続けられるのが嬉しかった。
だけど・・・世間はそんなに甘くはなかった。

いくら練習を重ねても、思うようにタイムが伸びない。
同期の連中は着実に自己ベストを伸ばしているのに、私は伸びなかった。
手当たり次第に本を読んでは、色んなトレーニング方法を試してみた。

それでもタイムは伸びなかった。
当然ながら、代表選考から外されることも多くなる。
何度となく眠れない夜が続き、身も心もボロボロなってしまった。

そんなある日のこと、私は久々にアイツとデートをした。
お互いに、近況報告を交わしながら・・・
ふと会話が途切れると、アイツは寂しそうな表情を見せる。

理由は分かっていた。
なかなか伸びない私のタイムを、気にしているのだろう。
ところが・・・それだけではなかったのだ。

651 名前:637-639=647 投稿日:02/11/06 01:07 ID:???
>>650
「多くの人々に、喜ばれるような勉強がしたい・・・」

アイツは難しそうな本を何冊も読みながら、英会話の勉強もこなしていた。
ゼミの教授も進学を薦めていたらしいし、私もそうするものだと思い込んでいた。
ただ一つ気がかりだったのは、アイツの両親が「就職」を強く望んでいることだった。

4回生の春、私たちはやっと進むべき道を見い出すことになる。
私は母校の体育教師に、アイツは外資系企業の営業マンに。
二人とも、夢を叶えることは出来なかった。

「だけど、これで良かったんだよね・・・」

可愛い教え子たちに囲まれて、惜しむことなく自分のパフォーマンスの全てを見せる。
水泳を諦めるのは辛かったけど、それを差し引いてもなお、教師って楽しい仕事。
黒沢先生に「教師らしくなったね」といわれて、とっても嬉しかった。

アイツは持ち前の知性を生かして、手際良く仕事をこなしているらしい。
大学時代に鍛えた英会話の能力が認められ、外国人の上司にも一目置かれている。
それでも進学を諦め切れないのか、社会人大学院の案内パンフを眺めている時もある。

652 名前:637-639=647 投稿日:02/11/06 01:08 ID:???
>>651
「夢を叶えることは、努力を続けることなのかな・・・」

私もアイツも夢は諦めたけど、人生って本当に予測不可能だと思う。
だからこそ、努力を続けることの大切さを身をもって知った。
社会人として生きている・・・今だから、いえること。


眠たそうな目をこすりながら、アイツは少し身を起こす。
「ごめん、起こしちゃった?」
そういってマグカップをテーブルに置くと、私はアイツの懐にすべり込む。
急に体が火照ってきた・・・やっぱり今夜も、お願い・・・。

・・・彼氏の睡眠時間を奪うのも、程々にしましょうね。