792 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/21 10:57 ID:???
「神楽と僕」クリスマスSS −その1

 限界だ・・・そう僕が悟ったのは

 「もうすぐサンタクロースじゃなくて酸欠ロ〜スが来るな」

 ・・・という、どうしようもない泥酔のオヤジ級の駄洒落が頭を
チラチラしてきたからだった・・・もうすぐ僕も終わりだな。

 息を吸っても充実しない不快感は、今や次第にフラフラと揺れて
グルグルと回る快感に変わりつつある。
 頭の中でウチのクラスの名物「大阪」こと春日と美浜ちよちゃんが
「おもしろ〜〜〜〜い!!」と二人並んで手を叩く様が浮かんだ。

 うん・・・走馬燈みたいなもんだ・・・間もなく僕は確実に死ぬぞ。

 僕は今、トナカイの着ぐるみの中に居る。
 ここは近くの大型スーパーのセンターモール。
 僕は着ぐるみに入って呼込のバイトの真っ最中だ。

 23日・24日の夜だけ、しかも比較的高額なバイト。
 そういう言葉に吊られて応募したのは良いけれど、暑いと言われる
着ぐるみの中だから、寒い聖夜なら丁度いいやという僕の読みは
アッサリと外れたりしてる。
 そんな寒い聖夜だから、スーパーはガンガン暖房を焚くんだな。

 続く!!

793 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/21 11:04 ID:???
「神楽と僕」クリスマスSS −その2

 着ぐるみの臭さはもう慣れた。
 確かに・・・戦隊モノと違ってサンタやトナカイは永遠のキャラ
だから作り替えなんてそうしないわなぁ。
 オマケにこの狭い視界・・・鼻ツラの長いトナカイの視界は悪いと
思ったけど本当に悪いとは。
 この視界と臭い、そして酸欠でゲロ吐きそうに何度なったか。

「でもさ、何で大学生が応募しないんだろ?」

 バイトが決まったその日、学校で友人に話してみた。

「彼女持ちや友達と遊ぶ人が多いんだろ?クリスマスにまで働く
には、このバイト料は大学生には安すぎるんじゃないか?」

 友達の予測は少し外れてる・・・仮に彼女や友達がいたとしても、
聖夜に臭いトナカイの中というこのザマはちょっと寂しい。

 こら!!そこのクソガキ!!けっ飛ばすんじゃねぇ!!シバクぞっ!!
 こちとら酸欠の頭で怖いモノは・・・い、いやいや、すみませんね
結構きれいなお母さん・・・大丈夫ですよ〜。

 周りには同じようなサンタやトナカイ、雪だるまの着ぐるみ達。
 みんな、その中で自分と同じ事を考えてるんだろうか・・・。

 続く!!


794 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/21 11:05 ID:???
「神楽と僕」クリスマスSS −その3

「お〜い!!サンタ隊」

 一人の係が僕らを呼ぶ。

「誰か一人、外のケーキ販売の手伝いに行ってくれ〜。」

 かわいらしい着ぐるみ達の手が一斉にガバッと上がる。
 皆も酸欠なのか?この狭苦しさよりは外の寒気の方が楽っちゃ楽だ。

「但し、あくまで着ぐるみの呼び込みだぞ。」

 一斉に着ぐるみ達の手がダラリと力無く下がる。
 いかにもガッカリとした手つきが、着ぐるみの中の顔を伺わせる。

 僕の顔もガッカリ顔には違いない・・・のだけど、手は降りない。

 やる気満々のように見える真っ直ぐに挙げたその手はトナカイの
ツノか何かに手の飾りが引っかかってしまっただけの話だ。
 手が降りないよ〜〜〜〜〜!! 降りてくれ〜〜〜〜〜!!

「じゃトナカイ2号に決定だな。」

 ・・・寂しい聖夜だ。

 続く!!

795 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/21 11:05 ID:???
「神楽と僕」クリスマスSS −その4


 大型のスーパーだから結構な距離を着ぐるみで歩いた。
 酸欠はさらに進み、もう殆ど考えることが出来ない。
 せめてもの救いは中の暑さと外の寒さが少し中和した事かな。

「クリスマスケーキ、5号、今から3割引で〜す!!」

 ??、どっかで聞いた声がするぞ。
 でも外は暗いから、狭い視界じゃ何も見えないと来た。
 それに酸欠だから誰の声なんて考えられない。

「トナカイさん、思いっきり元気よくお願いね!!」

 空気穴から現場の女性チーフと思われるオバサンの声がした。
 え〜〜〜い!!やけくそだ〜〜〜〜っ!!踊ってやる〜!!

 ちゃんかちゃんかちゃんかちゃんか・・・真っ赤なお鼻の
トナカイさんは〜サンタクロ〜スに騙されて笑いモノ〜♪

 お〜、受けてる受けてる!! もう少しサービスしたろ。

 奈良の公園に居るのがトナカイだと思ってた〜♪・・・あれ?
 煎餅をた〜べてた〜♪・・・あれあれあれ?

 続く!!


796 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/21 11:06 ID:???
「神楽と僕」クリスマスSS −その5

 少しフラ〜っと来たかと思うと、後ろでドンと衝撃がした。
 なんだか判らないけど手足が軽いぞ・・・丁度いいや、
もっと激しく踊ろうっと・・・主〜わぁ〜き〜ませり〜♪

「バイトさん!!バイトさん!!大丈夫!?」

 セ〜ロリ〜パセリ〜♪はいはい〜〜〜っ!! 大丈夫ですよ!!

「ちょっとはしゃぎすぎだよ!! あっちで少し休みなよ。」

 え〜〜〜、やっとエンジン掛かってきたのにぃ〜〜〜。

「誰か起こしてやって。あそこのツリーの下で休ませてやって。」

 ほへ〜〜〜、さっきの衝撃って転んだからだったんだ〜〜〜。

「アタシで良いんですか?」
「頼むわ。体力有りそうな女の子で手が空いてるの、他に居ないし。」
「判りました、ほらトナカイさん、アタシの肩に掴まって。」

 どこかで聞いた声だなぁ・・・どうでもいいや・・・なんか
酸欠って行き着くと気持ちいいんだなぁ・・・。

 続く!!

797 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/21 11:07 ID:???
「神楽と僕」クリスマスSS −その6

「頭取りますよ・・・」

 がば・・・ひえ〜〜〜外は冷てぇ・・・。

「うわ!!・・・@@じゃねぇかよ!!何やってんだよ!!」

 僕の視界には・・・チカチカするクリスマスツリーの電球と、
円らな無表情の目をしたトナカイの大きな頭を抱えた・・・

       ・・・神楽じゃないか。

「いきなり馬鹿みたいに踊って、突然ばったりブッ倒れるし・・・」

 サンタ風の衣装を着た神楽はトナカイの頭を徐に渡すと、
呆れ顔で僕の顔をじっと見た。

「倒れてもまだ踊ってるって、これじゃ本当のウマシカの馬鹿
なトナカイだなぁ〜って思ったら中身は@@だったのかよ。」

 ため息のように神楽は鼻からフーッと息を吐く。

「馬鹿で悪かったなぁ・・・神楽こそ何やってんだよ。」

 トナカイの実に「シカト顔」の頭を持ち、この寒空に着ぐるみの
中身から沸く湯気を立てながら僕がそう返すと、神楽はちょっと
目を逸らしてバツが悪そうに答えた。

 続く!!・・・取り敢えず今日はここまで!!

801 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/22 01:43 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その7

「う・・ん、ちょっとな、普段は部活でバイト出来ないから。」

 そうだよな・・・神楽は・・・僕の水泳競技人生に終止符を
打ってくれたバリバリの水泳部員だもんな。

「@@こそ何やってんだよ?今日はクリスマスだぜぁ〜。」

 神楽は両手を腰に当てて「いかにも健康」な笑顔を浮かべ
ながら切り返してきた。

「暇だったんだよ・・・学校も終わったし・・・今日はオヤジと
オフクロが揃って外出するからウチで寝てるしかねえしな。」

 すると神楽はいつものようにニカっと歯を剥いて笑った。

「なぁんだ、いつも通り誘う彼女も居ねぇって事かぁ〜!?」
「・・・・・・・」

 僕は思わず俯いてしまう・・・さりげなくキツイなぁ。

「・・・ハイハイ仰せの通りでございますよ!!そういうアンタは
どうなの?えぇ〜!!ちょっと黒いサンタさんよぉ〜!!」

 そういって顔を上げた僕の目に、しまった・・・という顔の
神楽が俯く姿が見えた。

 続く!!


802 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/22 01:44 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その8

「・・・ごめん。またアタシ、口が滑っちゃったぜ。」

 神楽はこういう時、とても寂しそうで悲しそうで・・・そして
儚げな顔をする・・・普段の彼女からはとても想像できない。

「まぁ、アタシがこういう風にガサツだから先輩もさ・・・」

 しまったと思ったのは僕もそうだった・・・。
 神楽の中学時代の初恋は彼女の色黒が原因で終わったからだ。
 神楽の初恋の人は・・・無邪気にも彼女の前で・・・。

「言うなよ。2年前のことだろ。もう忘れろよ。」
「あのときは@@・・・付き合わせて悪いことしたな。」
「だから気にしてねぇってば。」

 目と目が合って、思わず俯く僕たち・・・気まずくなって
ふと空を見ると・・・星々達がキラキラ輝く冬空が広がっていた。
 こんな都会でもこんなに綺麗な星空が見られるんだ・・・。

「寒い訳だよ・・・ほら、星がとても綺麗だ。」
「本当だぁ〜、気が付かなかったぜ。」
「なに?バイトは外だったんだろ?ケーキ売りって事はさ。」
「うん・・・でも空なんて見てる暇、無かったからなぁ。」

 そういって空を見ている神楽を、僕は酸欠の後遺症なのか、
全身に酸素が捻り込まれるような感覚の中でボーっと見ていた。

 続く!!

803 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/22 01:46 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その9

 神楽は、赤色のサンタクロース風の衣装を着ていた。
 頭には先に白いフサフサの玉が付いた赤いサンタの帽子。
 首元にショールを巻いて・・・それは明らかに安くさいフェイク
ファーだけど・・・上は長袖であるとはいえ、ミニスカートのその
衣装はあまりにも寒々しい限りだ。

 でも水泳で鍛えられた神楽の体にピッタリとしたその衣装は、
派手な赤色が、顔やブーツとスカートの裾の間に見える、冬に
なっても抜けきらない健康的な肌の黒さに相まって、お互いの
色を競い合うように魅力的なものに見せていた。


 特に真っ赤なブーツ・・・というか"靴"にあたる部分から
ストレッチする光沢を持った布で継ぎ足したような"ブーツ擬き"
なんだけど、それは神楽の流れるような脚線を更に強調したもの
になっていて、ハイヒールになっていない分だけサーキットでの
キャンギャルの衣装とは違う、女の子の要素を"強調する"のでは
なく"引き出す"ような感じ・・・なんて言ったらいいのか・・・
「男の子」の心を呼び寄せるって言うんだろうか、判らないけど
とにかく、まるで神楽専用に誂えたような衣装だった。

「な・・・なんだよぉ・・・じーっと見て。」

 あの神楽のツリ目が困ったような、恥ずかしがってるような
目をして振り向いた。

 続く!!

804 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/22 01:47 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その10

「いやその服・・・神楽に似合って・・・良いなぁって・・・」
「な、な、何言ってんだよぉ〜!!トナカイ被って酸欠になった
から本当に馬鹿になったのかぁ〜?」

 神楽は顔を真っ赤にすると、まるで、自分の体を自分で抱き
しめるようにして身を捩らせながら言った。

「オマエ、ソコまで言うか〜!?」
「だ、だって・・・サイズ合って無くて・・・恥ずかしいんだ。」
「え?合ってないのか?」
「小さいんだ・・・だからさ・・・胸がさ・・・。」

 確かに。小さめの衣装で圧迫されているせいか、寄せ・上げ効果は
絶大でいつもの制服やスイムウエアで見ている以上に大きく見える。
 オマケに色は"情熱の赤"ときたもんだ。

「恥ずかしいったりゃもう・・・数が揃わなかったんだとさ。」
「小さいも何も・・・寒くないのか?」

 次の瞬間、僕は暫し呆然としてしまった。

「大丈夫!!その辺は抜かりないんだぜ!!ほら!!」

 神楽はそういってスカートを捲って見せた。
 確かにスカートの中にはスパッツ・・・それも2枚重ねて
履いているのかモコモコしているソレが有ったし、僕が色黒の
地肌だと思った足は、大人っぽい少し黒みがかった濃い肌色の
ストッキングで覆われていた。

 続く!!

805 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/22 01:51 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その11

「うん・・・判ったけどさ・・・神楽・・・。」
「?」
「・・・オレもさ・・・まあ・・・男だからさ・・・そのぉ。」
「あ・・・す・・・すまなかったな・・・」

 慌てて神楽はスカートを下ろす。

「え・・・えと・・・@@の衣装も・・・何だか似合ってるぜ。」

 その場凌ぎの一言を言いながらさらに顔を紅潮させるその
表情は、僕の一番好きな神楽の顔・・・でもさ。

「・・・似合ってる?このトナカイの衣装の下だけ?」
「あ・・・あ・・・ごめん、また口滑らしちゃったぜ。」
「新年早々、これ着て学校行こうかなぁ〜♪」
「だから間違ったんだって!!」
「大阪やちよちゃんが大喜びかなぁ〜♪」
「もう!!意地悪だなぁ〜っ!!@@はっ!!」

 笑う神楽の顔が・・・ツリーを照らす夜間照明の微妙な当たり
加減で何だかとっても可愛く見える。

「神楽さぁ、胸は恥ずかしいけどスカートの中は別なのか?」
「んなの気にしたら競技用のスイムウエアなんて着られねえよ。」
「胸だって同じじゃねぇかよ。」
「む・・・胸は別だ!!」

 続く!!

806 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/22 01:52 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その12

「何でさ?」
「見る目が・・・ヤラシイからだ・・・男は皆、そういう目するし。」
「まあスカートの中身、ジーッと見てたら、暫くしたら裁判所で
自分が傍聴人にジーッと見られる事になるわな。」
「ははっ・・・確かにそうだ。」

 笑いながら、そして冗談を言いながら・・・ふと僕は少しだけ
寂しい気持ちを感じていた。

 まるで僕たち、恋人同士みたいじゃないか・・・・・でも。

「神楽ちゃ〜ん!!トナカイさ〜ん!!そろそろ手伝ってぇ〜!!」

 向こうでチーフのオバサンの声がした。

「はぁ〜〜〜〜い!! 今いきま〜〜す!!」

 僕らは、いそいそと持ち場に戻っていった。

「バイトで何か買うのか・・・?」
「BMXを買おうと思ってさ・・・ほれ!! 頭忘れてるぞ、@@。」
「う〜〜〜暫くまたこの中で我慢かぁ。えーい!!パイルダ〜ON!!」
「・・・もう・・・ロボットかよアンタは。」

 続く!! 今回はここまで。24日夜に向けて随時UPします。

808 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/23 11:31 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その13

 ふと・・・僕は足を止めた。

「・・・?、@@・・・どうした?呼んでるぜチーフが。」
「神楽・・・ちょっと頭取って。空中換装解除。」
「・・・うん???」

 また冷たい風が僕の頬を撫でる。

「あのな・・・こういう風にな・・・。」
               ***
「えー、この台は見ての通りソリの形をしてま〜〜す。そいで、
トナカイさんには閉店後、余ったケーキを載せて引っ張って
ゆくっていう罰ゲームが待っておりま〜〜す。」

 肺活量の大きい神楽の声は寒空によく通る。

「はい!!ご覧のように、この通り!!この通り!!とトナカイさん
必死の土下座のお願いです!!クリスマスケーキ買ってください!!」

 僕も自己流の即興パントマイム・・・というレベルでもない
けど、着ぐるみでの無言劇のツボが判ってきた。

「お買いあげありがとうございま〜〜〜す!! ではお約束通り
トナカイさん、貴方のために踊りま〜〜〜す!!」

 またちょっと酸欠っぽいけど、神楽と僕の息がぴったりと合って
さっきよりはケーキのハケがだんだん早くなってきた。

 続く!!

809 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/23 11:33 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その14

「はい!!トナカイさんバテております!!良い子はちょっとあっち
見ててね〜!!トナカイさんは酸素の補給をするそうで〜す!!はい!!
酸素はおいしいですか〜トナカイさん?ただいま復活で〜す!!」

 神楽も僕のノリに合わせてドンドンと話を振ってくれる。

「1号の2段ケーキお買いあげの方には、トナカイさんはあの
クリスマスツリーに登って見せると言ってます・・・けど、おや?
警備員さんがバツ出してますね〜〜〜。抗議してます!!トナカイ
さん猛然と警備員さんに抗議です。あ〜良い子が真似をするから
いけませんと警備員さんが言ってます。そのとおりですね〜。」

 楽しいな・・・こんなに楽しいクリスマスって・・・。

「なになにトナカイさん、ちょっと頭を開けろって?うん・・・
チーフ呼んでこいって?ふむふむ・・・え〜、お買いあげの
お客様と『あっち向いてホイ』して、お客様が勝てばシャン
メリ〜をもう一本プレゼントだそうで〜す!!」
               ***
 「いやぁ〜!!神楽ちゃんとトナカイ君の活躍のお陰で、今年は
クリスマスケーキの残りが去年の半分以下だわ!! ねえ、二人とも
正月もバイトしない?いやソコを何とか・・・」

 閉店の音楽である「スターダスト」が流れる中、チーフは
ホクホク顔をして僕らに話しかけてきた。

 続く!!


810 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/23 11:34 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その15

 そして・・・。
「あ、おねぇちゃん。うん、今バイト先。でね、社員販売ってので
余ったクリスマス食品、投げ売ってるぜ。でさ、何か買ってくる?
・・・あのさ、この電話、友達の@@のPHS借りてるから手早く
話してくれよ。うん、うん・・・。」
「お〜い神楽!! デコレーションアイス8割引で投げるってさ!!
++乳業の社員さん、ヤケクソになってるぜ!!」
「@@、どっかでオードブルの皿余ってなかったか?」
「『中華総菜の紅蓮』のヤツなら余ってたぜ。」
「おねぇちゃん、クリスマスに中華風でもいい?うん・・・うん。
@@ごめん!!押さえといて!! おねえちゃん、あとアイスクリームの
クリスマスケーキなんだけど・・・。」
               ***
「・・・でさぁ、ダウンヒルのヤツなんだけど、結構、良い値段
するからさ、オヤジに買ってくれなんて言いにくくてさ。」
「幾らすんの?そのヂャイアンてトコのソイツ。」

 寒空の帰り道・・・僕らは両手にスーパーの袋と、大きな発泡
スチロールの保冷箱を下げて並んで歩いていた。

「良い値段じゃん。オレなら原付のバイク買うなぁ〜。」
「そう言わないで自転車乗れよ〜!!健康にいいんだぜ!!」

 一緒にバイトして・・・一緒に買い物して・・・そして一緒に
星空の下・・・そして楽しく話をしながら・・・。
 本当に僕たち、恋人みたいじゃないか・・・。
 続く!!


811 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/23 11:36 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その16

 僕は・・・意を決めて・・・話し始めた。

「神楽・・・・・。」
「・・・ん?」
「す・・・素敵だったぜ・・・さっきのサンタの衣装。」
「・・・・・。」

 ザッザッザッザッザッザッザッ・・・・・。

 ゴム底のシューズが起てる、僕らの、この年代を象徴するような
足音だけが、突然、無言になった僕らを包んだ。

 チラチラと伺っても、マフラーに口元を埋めて、神楽の表情は
どう解釈して良いのか判らない。
 まずかったかな・・・やっぱり相当に恥ずかしかったのか。

「@@・・・・・。」

 長い沈黙を破って、神楽が口を開いた。

「@@・・・今日さ・・・このまんま、どっか行っちゃおうか?」
「え・・・え・・・?????」
「バイト料も入るしさ・・・。」

 少しズレたマフラーから、笑っている神楽の口元が見えた。
 ・・・でも、その口元の笑いは・・・少し寂しかった。

 続く!! 今回はここまで。次のUPで完結かな・・・?


815 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/23 22:30 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その17

 僕らは足を止めて街角に立っていた。

 沈黙した神楽の寂しい微笑みと、驚きと戸惑い、でも・・・
ちょっと嬉しくて・・・でも神楽のその言葉を素直には受け取れ
ない僕の複雑な顔を、ショーウインドウのクリスマスツリーの
七色に輝く電球がチラチラと照らしていた。

「でも神楽・・・その金で・・・BMX買うんだろ・・・。」
「・・・うん。」
「もったいねぇよ・・・せっかく頑張ったのにさ。」
「・・・・・・・・・・・うん。」
「それにさぁ。」

 そう言って僕はデコレーションアイスの入っている保冷箱を
顔の位置まで持ち上げるとユサユサと振った。

「いくら寒い今日みたいな夜でも、さすがに溶けちまうよ。」
「・・・ふっ・・・そうだな・・・そうだよな・・・。」

 笑いながら吐いた神楽のため息の白い玉が、僕に向かって
フワフワと飛び、そして砕けた。
 神楽が"女"なんだと認めざるを得ない甘く切ないその香りは
僕の胸を・・・残酷に締め付けた。

「・・・それに家族も待っているんだろ?オードブルとかをさ。」

 店の店員が何だろうと僕らを見てるのに気がついた僕は、そう
いって神楽を促した。

 続く!!

816 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/23 22:34 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その18

「・・・・・・。」

 無言で頷いた神楽は思い出したように歩き始めた。
 何だか・・・いつもの神楽じゃないような気がした。

「そ・・・それともさ・・・社員販売で買ってきたコイツラを公園で
広げてさ・・・コンビニで酒、買ってさ・・・ヤケクソの野良宴会
でもするか〜ぁ?ぱ〜〜〜っとさ!!」

 それこそ・・・ヤケクソの冗談を僕は言った。
 急に神楽の顔にすーっと笑顔が戻ったような気がした。

「い、良いなぁそれ!! @@のウチとの分かれ目の公園の近くにさ、
コンビニ・・・確かあったよなっ!!」
「『セクハラだぞ!!ちゃんと服のサイズを調べて来やがれ!!』?」
「『酸欠起こしたのにバイト料安いぞバカヤロ〜!!』ってか?」
「ベロンベロンになるまでやったろうか!!」
「潰れる前に暴れるだけ暴れてやっかな〜!!」

 急に僕らは白い息をバフバフ吐きながら冗談を言い合った。

「でも絶対通報されるぜぇ〜@@。間違いなく親と担任が警察だなぁ。
黒沢先生、怒ると怖いからなぁ。」
「オレは大丈夫だなっ!!ウチの担任のゆかりちゃんなら今日は絶対に
飲んでるからさ!!『おい@@!!こんな日にアタシを呼びつけた以上は、
ホレ!!まず駆けつけにテメ〜の持ってるそれ!!良いから一杯飲ませろ!!』
・・・って逆に怖えぇか。」

 続く!!


817 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/23 22:37 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その19

「言えてる言えてる!!『もうテメェら何で最初からアタシを呼ばねぇ!!』
って、ゆかり先生なら缶ビール片手に説教だな!!」
「その横で『ちょっとゆかり〜』ってニャモ先生おろおろ?」

 そうやってるうちに・・・分かれ道の公園に僕らは着いていた。

「・・・でもさ神楽、神楽が・・・出場停止になっちゃうよ、水泳。」
「!!・・・ま、まあ確実にそうだな。」
「ニャモ先生・・・爆発するぜ・・・きっと。」
「・・・逆に怒らないかもな。『二人とも何があったの?』ってさ。」
「何だかその方が・・・辛れぇな。」

 そう交わした後・・・コンビニの前の公園で、僕たちは再び・・・
でも微笑みながら言葉を失っていた。
 何だか、ここで分かれたくなかった・・・でも・・・。

 突然、その沈黙を破るようにコンビニのドアが開いた。

−−俊郎先生謹製のお正月特製弁当!!ご予約はお早めに!!すぐ!!そこ!!ランクス〜♪
         ・・・は夜更け過ぎに雪へと変わる・・・♪−−

 クリスマス定番のあの歌をフェイドアウトするようにドアは閉まり、
コンビニから出てきた幸せそうな若い男女が道路を渡り、コンビニ袋を
もって僕らの前を通り過ぎた。

「も、もう正月の話してるんだな・・・コンビニは。」
「早ぇえな・・・この世の中は・・・。」

 続く!!


818 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/23 22:41 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その20
 神楽が突然顔を上げた。

「・・・@@。」

 神楽はそういうと、僕の目をじっと見た。

「ありがとうな。」
「え・・・何が・・・?」
「アタシのことさ・・・キレイだって言ってくれただろ。」
「・・・う、うん・・・だって・・・本当に・・・」
「そして・・・ゴメンよぉ。」
「・・・・・なにが。」
「まださ・・・先輩のこと・・・忘れられないんだ。」

 神楽は・・・そう言って目を伏せた。
 遠くで人々のざわめきがしていた・・・そして・・・街角で歌う
聖歌隊の歌が聞こえていた・・・時間は・・・止まっているように思えた。
 僕らの居るこの公園の時間・・・そして神楽の先輩への思い
・・・そして僕の・・・やるせない・・・。

 パンパン・・・というクラッカーを発射した音・・・一杯入った
オジサン達のクダを巻く声・・・ハンドベルを演奏してる音。
 そして遠く聞こえる誰かが叫んだ祝福の言葉・・・。

    「メリ〜〜〜〜〜クリスマァ〜〜〜〜〜ス!!」

 すべてが僕たちを置いて過ぎ去ってゆく。
 時間を止めてしまった僕たちを・・・この世の片隅に置いて。
 続く!!


819 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/23 22:43 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その21

「神楽・・・。」

 僕はそういうと、スーパー袋や保冷箱を近くのベンチに置くと、
その中からシャンメリーの瓶を取り出した。

「乾杯しようぜ・・・せっかくの聖夜なんだから・・・。」

 びっくりしたような目が笑った目に変わると、神楽もまた、
シャンメリーの瓶を自分のスーパー袋から取り出していた。

「そうだな・・・乾杯しようぜ・・・@@。」
「何に乾杯するのか判らないけどな。」
「何でも良いじゃないかよ・・・今日は1年に一度の夜なんだぜ。」

 シャンメリーのアルミ箔の包み紙を僕らはガサガサと開けた。

「準備は出来たぞ!!いくぜぇ〜!!」
「じゃ・・・3・2・1!!」

 ポ〜〜〜ンと音がして、シャンメリーの2つの蓋は夜空に飛んだ。
 僕たちが・・・白い蓋が空に消えてゆくのを・・・見ていたら。

「あ〜〜〜!!雪だぁ〜〜〜!!」
「本当だぁ〜〜〜!!」

 続く!!


820 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/23 22:47 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS −その22

 シャンメリーの蓋が夜空に吸い込まれると同時に、白い雪が
チラチラと、僕らの元に舞い始めた。

「メリークリスマス・・・神楽。」
「メリークリスマス・・・@@。」

 ボトルの口をカチリと合わせ、少し見つめ合うと、僕らはラッパ
飲みでシャンメリーを飲んだ。

「ウメ〜〜〜〜っ!!」
「確かこれ、少しアルコール入ってるんだぜ。」
「だからウメ〜〜〜んだよ!!」
「将来、アル中確定だな@@!!」

 雪は僕らの頭に・・・コートに・・・乗り始めた。
 シャンメリーの最後の一口を飲み干すと、僕らは再びボトルの
口を合わせて言った。

「・・・良いクリスマスを・・・神楽・・・。」
「・・・良いクリスマスを・・・そしていい年を・・・@@。」

 遠くで・・・男女デュオのクリスマスソングが聞こえていた。
 ふと見上げた針葉樹の街路樹は・・・白いツリーのようだった。

 踵を返して、僕は家に向かって早い歩調で歩き始めた。
 振り返ると何故か涙が出てきて・・・止まらなかったからだ。

 End!!


821 名前:ショート萌え 投稿日:02/12/23 22:49 ID:???
神楽 脳内萌死劇場「神楽と僕」クリスマスSS プラスワン!!

 そのころ某所では・・・。

【と  も】「わぁ〜雪だ〜〜〜〜〜〜」
【ち  よ】「クリスマスに雪なんてロマンチックですね〜」
【きむりん】「ホワイトクリスマス・・・だな・・・」
【 一同 】「わっ!!」
【よ  み】「なんでいるんだあんた!?」