- 651 名前:ケンドロス 投稿日:2003/06/10(火) 00:01 ID:???
- 前回は小学生編だったので今回は中学生編です。百合萌えと始まりは同じ
ですが、途中から展開が変わります。タイトルに深い意味はありません。
『Beat Force』
月日が流れ、智、暦の二人は中学生となった。
二人は同じ中学に通う事となった。
「いやぁ〜小学6年とずっと同じクラスだったのに、また中学が同じになるなんて
あたし等運命の赤い糸で結ばれてるんだな。」
「抜かせ、私には赤い鎖に見えるぞ。」
智の会話にため息をつきながらも暦は答えた。
「うふふふふ。暦ったら素直じゃないんだから。智と一緒になれて嬉しいくせに。」
後ろから声がして、誰かが智と暦に抱きついてきた。振り返ると二人のとって
苦手な人物だった。
「うわぁ、何するんだ平井!!」
「ん?平井お前髪型変わったな。」
その人物の名は平井百合子。小学生の時、智や暦と衝突していたがある事を
きっかけに友達となった。その百合子は小学生の時は背中まで伸ばしていた
髪をバッサリと切り、ボブカットヘアーになっていた。
目元まで垂らしていた前髪も全部後ろにあげてしまい、おでこが思い切り見えていた。
「あら、やっぱり気付いたのね。それより百合子でしょ?わたくしも今日から心機一転
してあなた達の事を名前で呼ぶ事にしたんだから・・・呼ばないとキスするわよ。」
「わ、分かったから、離れろ〜百合子!!」
「わ、私まで巻き添えにするな!!」
百合子と呼ばれて、満足したのか百合子は二人から離れた。
周りの人間達は唖然となってあたりを見回していた。
「さあ、行きましょう。また同じクラスだといいわね。」
「何か、もうあたし疲れた。」
「私なんか、お前と百合子に振り回されるのかと思うと倍気が滅入るよ。」
こうして三人の中学生生活が始まったのだった。 続く
- 652 名前:ケンドロス 投稿日:2003/06/12(木) 01:59 ID:???
- 結局、三人は全員同じクラスとなった。百合子は喜んでいたが、智と暦は
ちょっとゲンナリしていた。
そして、そんなある日の事・・・・
いつものように百合子は智にべったりだった。暦は先生に係の仕事で呼ばれ
いなかった。
周りの人間は「また始まった」と呟くだけでそれ以上の反応はなかった。
「な〜百合子、離れてくれよ。暑苦しくてしょうがねぇ。」
「わたくしはそうは思ってなくてよ。」
智が抗議の声をあげるが、百合子は意に介さない。
「あ〜もう離れろって!!」
智が百合子を無理に振りほどこうとした。その時にバランスが崩れ、智は百合子
を押し倒す格好になってしまった。
「もう、智ったら大胆・・・」
「ば、バカ何言ってんだ!?」
「何やってんだお前等?」
後ろで声がしたので振り向くとそこには暦が立っていた。気のせいか震えている。
「最悪・・・」
と、智は呟いた。
「お前ら、そんな関係だったのかよ!!」
暦はそう叫ぶと、教室を飛び出していった。
- 653 名前:ケンドロス 投稿日:2003/06/12(木) 23:36 ID:???
- 「行ってきなさいよ。」
押し倒された格好のままの百合子が智に向かって言った。その顔は真剣そのもの
だった。
「百合子?」
「わたくしもさすがに調子に乗りすぎだと思ってるわ。ごめんなさい。」
百合子にしては珍しく素直に謝った。
「でも、あの状態じゃ話なんて・・・」
「大丈夫よ。あなたと暦なら。私も今のままでいいとは思わない。だから
行ってあげて。」
「やるだけやるさ!!」
智は踵を返して、そのまま教室を全力疾走しながら出ていった。
外に出て、暦を探す智。何故か智には暦が外にいる確信があった。
その確信は正しかった。暦は体育館裏の木が生い茂っている所にいた。
「よみ!!」
「とも・・・か。」
背を向けたまま暦は答えた。
- 654 名前:ケンドロス 投稿日:2003/06/13(金) 00:35 ID:???
- 「あ、あのな、お前誤解してるぞ!!あれは事故で百合子とは何にもなかった
んだよ!!」
息せき切って走ってきた為か智の呼吸は荒い。
「・・・そうだよな。私ったら何を勘違いしてたんだか。笑っちゃうよ。」
背を向けたまま笑う暦。しかし、その背中はどことなく寂しそうだ。
「よみ・・・無理するなよ。」
智のその言葉を聞いた暦が振り返る。その目には涙が流れていた。
「とも!!」
暦は振り返るなり智に胸の中に飛び込んだ。智はそれをしっかり抱きとめる。
「私はどうしてこんなに嫉妬深いんだろう?そんな筈ないって分かってるのに、
お前と百合子の事を疑ってた。お前を百合子に取られたくないと思ったんだ。
情けないよ。これじゃあ小学生のあの時の百合子と同じじゃないか!!私も
百合子の事悪くいえないよ!!」
暦は一気にまくしたてた。そんな暦の頭を智は優しく撫でた。
「いいよ。気にするな。あたしは気にしてないよ。百合子も同じだ。
あたしはそんなよみが大好きだ。」
「とも・・・」
「ああ、もちろん百合子もそういうだろうけどな。」
恥ずかしそうに智はその言葉を付け加えた。
「そろそろ休み時間が終わるし、教室に帰ろうぜ。」
暦の手をとり、智は歩き出した。
「うん。」
とても嬉しそうな笑みを浮かべながら暦は返事をした。 もちっと続く
- 655 名前:ケンドロス 投稿日:2003/06/13(金) 22:28 ID:???
- その時、後ろで物音がして茂みから人が一杯出てきた。
二人は慌てて後ろを振り返った。
「いたたた、誰?押したの?」
そこに現れたのは百合子と他にも見覚えのあるクラスメイトの顔があった。
「百合子!!それにお前等・・・」
智はびっくりして次の言葉が続かない。
「見ていたのか?」
と暦。
「ええ。一部始終。」
百合子は平然と言ってのけた。
「ごめんなさい。でも私達もあなた達の事心配だったから。」
「やっぱりあんた等が喧嘩してると俺等も何か調子狂っちゃうんだよ。」
百合子の他に見ていた生徒が申し訳なさそうに言った。
「みんな・・・」
暦の胸に再び熱いものがこみ上げてきた。
「そういう訳で仲直りした訳だし、私にも仲直りの抱擁をさせて下さいな。」
「わー、何が仲直りの抱擁だー!!さっさと行くぞよみ!!」
暦の手を取って智は走り出す。しかし、その顔には笑みがこぼれていた。
(そう、それでこそ智と暦よ。落ち込んでるあなた達なんてらしくないもの。)
追いかけながら百合子はそんな事を考えていた。
(とも、私もともが大好きだ。)
誰にも聞こえないように暦は呟いた。 Fin