640 名前:ケンドロス 投稿日:2003/06/05(木) 02:46 ID:???
別スレからの転載でよみとともの初めての出会いを書いてみました。
気に入ってもらえるといいな

『THE FIRST CONTACT』 ACT1

「なあなあ、よみちゃん。」
昼休み、大阪が私に語りかけてくる。またくだらない事を言い出すのかと思ったら
違った。

「よみちゃんはともちゃんとどんな出会い方したん?」
「あ、それ私も聞きたいです。」
いつの間にか大阪の横にはちよちゃんがいた。ともは・・・神楽に肩叩きをしよう
として、狙いがずれ思い切りチョップをくらわしていた。

「ともとの出会いか。」
そこから私の記憶が遥かな過去へと飛んだ。

ともと会う前の私はどちらかというと、無口で大人しかった。クラスメイトで
いうと榊に近い感じだった。でも、私の場合榊と違い『暗い』をイメージさせる
ものだ。
とにかく勉強だけにしか関心を持たず、他の物事はかなり冷めた目で見ていた。

当然クラスの中では浮いた存在だった。対照的にともは今と変わらず明るくやんちゃ
で、男子と殴り合いの喧嘩をしたりもしていた。
でも、ともには人を惹きつける魅力があったらしく文句言いながらもみんな
慕っていた。

「お前いつも退屈そうだな。あたしと一緒に遊ばない?」
いつもの様に私が次の授業の予習をしている時、ともは私に話しかけてきた。
これが私ととものファーストコンタクトだった。

641 名前:ケンドロス 投稿日:2003/06/05(木) 02:47 ID:???
『THE FIRST CONTCT』 ACT2

「悪いけど、お断りします。私にそんな暇はありませんので・・・・」
この頃の私は口調も今以上に棘があった。はっきり言えばともを見下していた。

「滝野さん、あなたもそんな事をしている暇があったら勉強でもなさったら?」
「バーカ、勉強なんてのは授業受けりゃいつでも出来んだろーが!!でも遊ぶ
のはすっげぇ限られる。だから、遊ばないと損だっての」
ともは私の嫌味な言葉にも負けないくらいの、とびっきりの嫌な顔をした。

「さっきも言ったでしょ!!断るって!!」
「いいから来いよ!!絶対面白いっての!!」
「嫌よ!!」
「人が誘ってんだから来いよ!!」
私も智も苛立ってきて口調が荒くなる。

「嫌だってんだろ!!離せ、バカ!!」
「へ〜優等生のあんたでもそんな口聞くんだ。意外だよ。」
その言葉に私の中で何かが切れた。

優等生のあんたでも・・・・何だか物凄くバカにされた気がして許せなかった。
気が付くと私はともにアッパーカットをくらわせていた。床に倒れるとも。

「いってぇ!!やりやがったなぁ!!」
ともも立ち上がり殴りかかってくる。取っ組み合いの喧嘩になり、先生が来るまで
私達はずっと喧嘩していた。先生が事態を収めた時も私達は互いにそっぽを向いていた。
これが最初の出会い。最悪の出会いだった。
でも何故か、それ以降私はともの存在が無視出来なくなった。

642 名前:ケンドロス 投稿日:2003/06/05(木) 02:48 ID:???
THE FIRST CONTACT ACT3

アレ以来私達は顔を合わすたびに嫌味を言い合っていた。

「あら、滝野さん今日も熱心に遊ぶのかしら?」
「水原さんこそ、今日もお勉強ですか〜?」
お互いに毒を吐いた後、そっぽを向く。そんな毎日だった。だけど、不思議と
悪い気はしない。そして、ある日あの事件が起こった。

私の事を嫌ってる奴がいた。当然、こんな性格だったのだからともでなくても
ムカついているのもいるだろう。しかし、そいつらはともと違い陰湿な手口を
使ってきた。

私はその日、係の仕事があって少し教室を離れていた。私が教室に戻ってきた
後、机がすごい事になっていた。机の上には何か落書きがしてあり、ご丁寧に
「死ね」だの「バカ」だの書いてあった。ゴミとかも置いてあった。
俗に言ういじめである。しかし、私は呆れるだけで特に何の感慨も沸かなかった。
クラスの連中が冷たい目で見るのも今に始まった事ではない。
ただ、ともだけは何かを考えこむような顔をしていた。

当然、こういうのは日を増すごとにエスカレートしていった。椅子の上に画鋲が
あったり、下駄箱に訳の分からないものを入れられたり、机を持ってかれたり・・・
さすがの私もこうしつこいと頭に来る。誰がやってるか見当つくだけに余計に腹立つ。

で、極めつけは事故を装ってバケツ一杯の水を被せてきた奴がいた。私が見当を
つけていた犯人『平井百合子』だった。こいつは優等生だが、その裏で気に入らない奴を
徹底的に仲間と一緒に陰湿にいじめる女だった。

「あら、ごめんなさい水原さん。大丈夫でしたか?」
こいつ、よくもぬけぬけと・・・その後ろでニヤついている平井の仲間。
もう我慢できずに殴りかかろうとしたその時、それより早くともが平井を殴っていた。

「せこい事ばっかしてんじゃねーよ!!バーカ!!」
ともの声が教室中に響いた。

643 名前:ケンドロス 投稿日:2003/06/05(木) 02:49 ID:???
THE FIRST CONTACT ACT4

殴られた平井は目を白黒させていた。得体の知れないものを見るかのような目
でともを見ていた。私もこの展開に呆然としてしまい、ただ事態を見守るだけだった。

「な、何をなされるの、滝野さん!?」
「バレバレだっつーの!!お前、事故に見せかけてこいつに水ぶっかっけてた
けど、それがせこいって言ってんだよ!!」
ひょっとしてこいつ私の事をかばってるのか?が、次の瞬間ともはありえない行動に出た。

「どうせやるなら、堂々とやれよな!!」
ともはそう言って、思い切りバケツ一杯の水を平井の頭から被せた。私同様水びたしに
なる平井。その後、ともは自分にも水をぶっかけた。

「くぅー!!気持ちいい!!お前等もやってみろよ。気持ちいいから!」
と、どこからか持ってきたホースを手にして平井の仲間達に水をぶっかけた。
もちろん、その時連中は逃げようとしていた為何人か関係ない奴が巻き添えを
くらっていた。
もう無茶苦茶だった。教室は水浸しになり、ともはこっぴどく先生に怒られた。
しかし、その顔は全く反省していなかった。
この事件以来、平井はいじめをしなくなった。ともにやられた事がよっぽど
こたえたのだろう。でもそれ以上に厄介な事になる事を私もともも知るよしもなかった。

帰り際、私はともを捕まえて何故あんな事をしたのか聞いた。

「そりゃあお前、不満があるのに正面から文句言わないであんな陰湿な事
やってる奴見たら、誰だってムカつくだろ?」
どうやらともは最初にあったいじめの時から平井だと見当をつけていたらしい。

「だからって教室を水浸しにしなくてもいいだろ!!」
「えー、やっぱこういうのはほらみんな水浴びた方がいいじゃん。ほら、旅は
道連れって言うだろ?」
「・・・・・・・・」
駄目だ。こいつ訳分からない。でも同時にこいつの事が嫌いじゃなくなってく
自分がいた。何でだろう?他の奴が同じ事をしたらムカつくはずなのに、ともだと
許せてしまう。

「ま、まあでも一応お礼は言っておかないとな。ありがとう。」
「気にすんなよ。あたしら友達だろ?」
ともの口から信じられない言葉が出た。

644 名前:ケンドロス 投稿日:2003/06/05(木) 02:49 ID:???
THE FIRST CONTACT ACT6

「友達?」
「そーだよ。あたしがそう決めたんだから、今からよみはあたしの友達だ。
嫌だって言ってももうこれは決まった事なんだ。」
こーゆう所は昔から変わってない。私はその言葉を心の中で反芻した。友達・・・

「仕方ないな。そう言うなら私もお前の友達だ。でも何でよみなんだよ。私は
暦だぞ。」
「言いづらいからよみなの。あたしの事もともって呼べ。」
「分かったよ、とも。」
「よーし。じゃあ帰るか、よみ。」
その日、私は初めてともと一緒に帰った。初めての友達が出来た日の事だった。

「ってこんなとこかな。」
「・・・・・うう。」
いつの間にか榊が目の前にいて、感動したらしく泣いていた。その横には神楽を
伴ったとももいた。どうやら話に夢中でみんながいる事に気付かなかったようだ。

「そう、あたしがいなけりゃよみはずっと暗い奴でいたんだ。それをあたしが
救った。さあ、こんなあたしに惜しみない賞賛を。」
「まあ、そうとも言えるな。」
「ともちゃん、見直したのですのだ。」
「エエ話やな〜」
「へ〜ともにしちゃいいことしたじゃん。」
うんうんと頷く榊。

「な、何だよ〜!みんなで褒めるなんて何かおかしいぞ。あたしを騙そうとしてん
のか!?はっ、その手にはのらねぇもんね〜」
全員に褒められたのがよっぽど嬉しかったのか、顔を真っ赤にしながらともは
その場を駆けていった。
あいつが照れるなんて珍しいなと私は思った。そういえば、友達って言った時も
照れてったっけ。

THE FIRST CONTACT   終