478 名前:名無しさんちゃうねん 投稿日:2003/01/12(日) 01:13 ID:???
後藤の苦悩(>>464テーマ2)
 
 諸君 僕はともちゃんが好きだ
 諸君 僕はともちゃんが好きだ
 諸君 僕はともちゃんが大好きだ

 制服姿のともちゃんが好きだ
 私服姿のともちゃんも好きだ
 体操服姿のともちゃんが好きだ
 水着姿のともちゃんも好きだ
 髪の長いともちゃんが好きだ
 髪の短いともちゃんも好きだ
 走ってパンを買いにいくともちゃんが好きだ
 英語のテストでやまを張るともちゃんも好きだ

 教室で グラウンドで
 体育館で プールで
 自動販売機の前で 鯛焼き屋の前で
 路上で 地下で
 商店街で 空港で

 この地上に存在する ありとあらゆる状況におけるともちゃんが大好きだ

 だが…この思いを伝えられる日が来るかどうかは誰にもわからない

 彼女には、恋人がいる。その名は水原暦。眼鏡をかけた茶髪の女子高生だ。
 小学校からともちゃんとずっと一緒のクラスで、家も近い。
 女同士の恋などと、諸君は馬鹿にするかもしれない。
 だが、彼女たちは愛し合っているのだ。
 人前でも気にせず堂々と。
 もちろん学校でも堂々と。                (1/4)

479 名前:名無しさんちゃうねん 投稿日:2003/01/12(日) 01:15 ID:???
――朝。

 ともちゃんが学校に来た。水原も一緒。
 しかも、腕なんか組んでる。
 ああ! 水原! ともちゃんから離れろ!
 ともちゃんはお前の所有物じゃない!

「おはよーさん」
「おはよ。めずらしい、早いやん」
 ともちゃんのキュートなボイスに、大阪から来たから大阪という渾名の春日
が応える。そう、彼女たちがこのようにして登校する姿は、日常的なものなの
だ。入学当初は訝られたものだが、谷崎先生や木村先生の指導により、クラス
メイトたちの同性愛に対する偏見は今や失われていた。
 それでも僕は声を大にして言いたい。
 同性愛が好きとか嫌いとかはいい。
 俺を愛するんだ! と。

 ともちゃん。僕は君と腕を組みたい。
 この国の居心地が悪ければ、僕と一緒にアメリカに行こう!

――昼休み。

 ランチタイムだ。
「夏休みどーすんの? またちよちゃんの別荘行っていいの?」
 ともちゃんが仲間と雑談する声が聞こえる。
 その声を聞くだけで絶頂すら感じそうだ。 (2/4)

480 名前:名無しさんちゃうねん 投稿日:2003/01/12(日) 01:17 ID:???
「あ、後藤。その玉子焼きうまそうだな。ひとつくれ」
 ん!? 大山? お前、あのともちゃんのプリティ極まりないヴォイスを聞い
て、何の悦楽も感じないというのか!? 心の貧しいやつめ。キリストがなんと
言おうと、少女の可憐さを愛でる心のキャパシティのない奴が幸いだとは思え
ない。ああ、やるよやるよ玉子焼きの一つや二つ。お前のような物欲小僧は、
ガツガツ人の弁当の冷えた玉子焼きでも食ってろ。

「はい、よみ、あーんして」
「あーん」
 あ! ともちゃんが水原に自分の玉子焼きを食べさせてあげてる!
「ん、おいしい。これ、ともが作ったのか?」
「うん。巻くのがなかなか難しくて」

 ナニ――! ともちゃんの、手作り…食べたい食べたい、玉子焼き食べたい
――!
「後藤。これうまいな。もう一つ貰うぞ」
 あん!? ふざけんな、玉子焼きはおれのものだ。
 僕は、人の玉子焼きを強奪しようとする不埒な大山の箸を剣道の達人の如く
払いのけ、玉子焼きを食べた。
 母の味だった。

「お返しだよ。あーん」
「あーん」
 あ。今度は水原がともちゃんにコロッケをあげてる。
「辛っ!」
 一口かじって、ともちゃんは口を覆った。
 水原は笑っている。酷い女だ。
 こんな女といても、ろくなことはないぞ。
 気づけ、ともちゃん! この女はきっと将来君を傷つける。
 来るんだ、ともちゃん! 真に君を愛している僕の許へ! (3/4)

481 名前:名無しさんちゃうねん 投稿日:2003/01/12(日) 01:18 ID:???
「ちょっと食ってみ?」
「えー。そやから、辛いのはあかんゆーてるやん。人の話きかなあかん」
 ともちゃんのかじったコロッケを、水原は大阪に勧めた。拒否する大阪。

 ともちゃんの食べかけのコロッケ。食べたい、食べたい…
「玉子焼きうまかったからかわりにこれやるよ」
 大山が自分の弁当からコロッケをつまみ、僕に差し出した。
 あん!? ふざけんな、そんなむさ苦しいコロッケはいらん。この俺を甘く見
るな。
 僕は、憤りのあまり大山に籠手をくらわした。不意を突かれバランスを失っ
た大山の箸は、暑苦しいコロッケを真っ二つに砕いた。びとりと生臭い音をた
ててコロッケは机に墜落した。ばらばらになったコロッケは、最早食物に供せ
るような代物ではなかった。生ごみだ。餌だ。野良犬の餌だ。
 僕が食べたいのは、ともちゃんの食べかけのコロッケ。ともちゃんの食べか
けなら、どんなにひどい味付けのコロッケでも、僕は食べてみせる。

「ほんなら、ちょっとだけ」

 え!? 大阪、待ってくれ! 僕は、そのコロッケが食べたい! ああ、そっ
ちじゃなくて、歯形のついてない方から食べて! ああ…
 大阪はともちゃんの食べかけのコロッケをまるごと食べてしまった。
「へへー、ともちゃんと間接キッスやー」
「変なこというなよー、大阪ー。間接キスなんて、私らにとっちゃ空気みたい
なもんよー」

 その後大阪は七転八倒したが、その話はここまでとする。 (4/4)