111 名前:素敵過ぎる贈り物 投稿日:2002/10/22(火) 00:40
それは、薄ら寒い夏の雨の日の事だった。
夏休みも終盤に差し掛かっているのに、よみが目を覚ましたのは午前の十時ほどだった。
よみ「ん……、そろそろ夜更かしする癖直さなきゃなー……。…ふわぁ」
軽く伸びをするよみ。今日はそれぞれに都合があったらしく、家には彼女以外の誰の気配も無い。
よみ「お腹…、空いたな」
ぼんやりとした頭で服を着替え、誰もいない居間へと向かう。しかしそこにあったのは、現金三千円と
それで夕飯も食べてほしいという旨の書かれた母親の書置きだけだった。
しかし、その事は事前に話もしてあったので問題は無い。彼女は身支度を整えた後、
食事よりも雨降りの一日をどう過ごすかを思案していた。
すると、
「ピンポーーン、ピンポーーン」
呼び鈴の鳴る音が響く。
「……誰だろ。ともか?」
暇つぶしの相手を期待しつつ扉を開ける。が、その向こうに立っていたのは親友ではなく、若い宅配業者だった。
業者「あ、水原さんにお届け物です。ハンコ、お願いします」
よみ「あ、はい、ちょっと待ってて……」
タンスの引出しから印鑑を取り、小包を受け取る。綺麗な模様の包装紙に包まれており、そんなに重たくもない。
そして、その小包の宛先は……、
よみ「あ、私宛てだw」
せっせと懸賞ハガキを出した甲斐があったのかも……と、内心ウキウキしながら送り主を確認する。
プレゼントに当選したのは初めての事だ。
しかし、ここでまたしても彼女の期待は儚く裏切られてしまう。
よみ「あれ…………これ、懸賞じゃ、ないのか……?」

伝票の送り主欄には、割と達筆な文字で"谷崎ゆかり"と署名がしてあった。

113 名前:素敵過ぎる贈り物 投稿日:2002/10/22(火) 03:40
よみ(ゆかり先生から贈り物……かな?)
賞品じゃないと解って少し冷めてしまったが、あのゆかり先生から物が届いたなんてにわかには信じ難い。
ともかく、よみは包みを開けてみる事にした。
自室のベッドの上にあぐらをかき、丁寧に包装紙を留めるテープを剥がして、中の箱を露出させる。
包みに比べて随分と質素なデザインの箱だ。
……目がくらむほどのショッキングピンクである事を除けば。
よみ(伝票にも書いてなかったし、何が入ってるんだろ…)
よみ(……まともなモノなら良いんだけど)
恐る恐る、開いた包みから箱を持ち上げた。

  パサリ

よみ「?」
あぐらの足元に落ちたものがある。これは……?
よみ「あ、メッセージカード」
はがき大の厚紙が二つ折りになったような、洒落た模様の入ったメッセージカードが、転がり出たのだ。
箱を傍らに置き、カードを広げる。
ふわりと、大人っぽい香水の香り。

『水原さんへ
 あんたってともちゃんととても仲が良さそうなので
 先達として一つアドバイスをするわ
 あんたがしっかりしてアホな野郎どもを蹴散らさなきゃ
 ともちゃんどうなっても知らないわよ〜〜〜?
 あたしら応援してるからね(^ー)bグッ!

 p.s 箱はともちゃんと二人きりの時に開けること』

よみ(????)
メッセージの趣旨がよく読み取れないが、要はともと仲良くってことらしい。
えらく散文的だが、担任の誠意は伝わってきたように感じた。
よみ「……ともにも電話するか」
そう口の中で呟くと、部屋にあった電話の子機を手に取り、迷わず短縮の1番を押した。

114 名前:素敵過ぎる贈り物 投稿日:2002/10/22(火) 04:32
トゥルルルルル……、トゥルルルルル……。

7コール目でようやく電話が繋がった。
電話口『あ〜、もしもし、よみ? どったのこんなに早く…』
よみ「早くなんかねーよ、もう昼前だ。……その調子だと今まで寝てたな?
   なら丁度良いや、今から私の部屋に来てみろ。私達宛てにプレゼントが届いてるぞ」
電話口『え、プレゼント? マジ? 誰から? 何で?』
よみ「ゆかり先生かららしいけど、よく判らないな。お前と一緒に開けろってカードが付いてたんだ」
電話口『えっ!?ゆかりちゃんが? ……それさ、間違い無く誕生日プレゼントねだられるよ』
よみ「やっぱり、そう考えるよな普通は。まぁ、とにかく早く来いって。私も早く中身が知りたいし」
電話口『おー、わかったー。それじゃあともちゃんは急いでゆっくり準備してそっちに行きますわよヲホホw』
ブツッツーツーツー
よみ「……あの馬鹿、まだ完全に起きちゃないなw」


≪それからしばらくして≫

  コンコン、ヨミーキタヨー?
よみ「お、来たか」
よみは読んでいた雑誌から顔を上げ、窓にへばりついてる友人を見た。
  マド、アケテー
よみ「窓から入ろうとするな、玄関が開いてるからそっちから」と手振りで説明する。
  オッケーワカッター!
途端に視界から消えるとも。程なくして、廊下をトタトタと走る足音が近づいてきた。
とも「ジャーーン!! お待たせ〜〜っ♪」
扉を勢い良く開けてともが部屋に入ってきた。
相変わらずのあのテンションで。

130 名前:素敵過ぎる贈り物 投稿日:2002/10/23(水) 00:29
とも「ねぇー! プレゼントって何なのぉー?」
よみ「少しは落ち着けよ。ほら、そこに置いてあるヤツだよ」
ベッドの上に置いたままの箱を指差すよみ。
とも「おお!? この箱か、ゆかりちゃんからの土産は! なーんかエロティックな箱だなー」
思わずニヤつくとも。彼女はこの箱に並々ならぬ興味を抱いた。
よみ「馬鹿、ピンク色なら何でもエロティックなのかよ!」
とりあえず、よみもお約束のツッコミを返す。
とも「(カードを見つつ)これ中身は?」
よみ「まだ見てない」
とも「じゃ〜さぁー。あたしが開けていい?」
よみ「ああ、開けてみよう」
とも「よっし、そりゃぁ〜〜っ!」
言うが早いか、ともははまっていた蓋を豪快に引っぺがした。

とも「おお〜っ、こ、これ…は……?」
よみ「…………」
箱の中身を見て沈黙するよみ。ともも、梱包材に詰められた"それ"を凝視している。
ふと我に返ったよみは、慌てて開けっぱなしの窓のカーテンを閉め、その場に立ち尽くしてしまった。
よみ「……………」
とも「よみ〜、これ………」
よみ「……………」
とも「ホントにゆかりちゃんが?」
よみ「喋るな!! 今、考えてる!!」
よみ(何でこんな……、前々から普通じゃないと思ってたけど、コレは……!? これが教師のする行為か!?)
とも「どーしよっか?」
よみ「ど、どうするも何もこんなの……Σ(゚д゚ )ハッ そ、そうだ! にゃもちゃんだ!」
とも「?」
よみ「黒沢先生ならゆかり先生と仲が良いし、相談にも乗ってくれるはずだ!」

147 名前:素敵過ぎる贈り物 投稿日:2002/10/24(木) 01:37
にゃも(これはまた………厳重に封じてあるわね(^^;)…)
指の爪で蓋と箱の境目を千切る。蝶つがいのように片側の封印を全て解き、恐る恐る蓋を持ち上げた。
その隙間から中を覗きこむと……、
にゃも「………!? ちょっ、あなた達、コレ!?」
よみ「だから困ってるんです!」
とも「よみったらコレ見た途端に顔真っ赤にしちゃってさ〜〜♪ もう可愛いったらありゃしな…」
よみ「馬鹿! 普通は恥ずかしいんだよ! お前こそ少しは恥らえ!」
箱の中に入っていたのは、発泡スチロールの衝撃緩和材と、それにピッタリとはまり込んだ黒い棒。それと、
その倍ほどの長さのピンク色の棒が一本。
妙に見覚えのあるこの物体は――
にゃも「ゆかりの奴、あなた達にアダルトグッズを送りつけたのね!?」
それは『女性向け大人のおもちゃセット』だった。
発泡スチロールをどかすと、その下にもビデオやローションが用意されている。
とも「う、うぷっ……あはっ、わはっはっはははははは!! いひーーっひーっひゃぁっははっはぁ!!」
にゃもの驚きようを見て、ついにともが火の点いたように笑い始める。しかし、おなかを抱えて身悶える
ともを構ってやれる者はいなかった。
にゃも「はぁ……さすがに呆れたわ。教え子にこんなもの与えるなんてど−いうつもりなの?」
よみ「それと一緒に、こんなカードも届いてたんです」
差し出されたメッセージカードを受け取り、読んでみようと開く。染み込んでいる香水がほのかに………。
にゃも(あら? この匂い、何処かで……?)
普段つかっている香水とは違う。ゆかりの香水でもない。でも、嗅ぎ覚えがあるのは確かだ。
にゃも(えと、あれ? …………あ、あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!)
匂いは人の記憶を呼び覚ます効果が極めて高い。それが今まさに、にゃもの記憶を呼び覚まさんとしていた。
トイレに行く振りをして、二人に気づかれないように財布の中身を確認する。しかし、それは
最悪のシナリオである事を再確認するハメにしかならなかった。
にゃも(たしか、三日ぐらい前にゆかりと呑みに行った時にはもっとあった筈………!?)
しかし、現実には二人で飲んだだけでは説明のつかない出費があるようだった。
そして彼女は、その出費に心当たりがあった。

148 名前:素敵過ぎる贈り物 投稿日:2002/10/24(木) 02:09

≪とある居酒屋にて≫

ゆかり「それにしてもアレよねー、最近のこーこーせーってのは友達を大事にしないわよねーっ」
にゃも「そうかしら? あたし達も付き合い長いけど、昔も今もそう変わらないわよ」
ゆかり「あんたは高校の実情を知らんからそんなことが言えるんだーーーっ!」
にゃも「あたしも教師だって……。あ、ホラさ、あんたのクラスの、滝野さんと水原さん? 小学校から一緒
   だって言ってたじゃない。いつも一緒にいて、仲良いなーって」
ゆかり「あーアイツら? チガウチガウ、アレは別モン、別次元よ」
にゃも「別物?」
ゆかり「ありゃ仲良いんじゃなくてデキてんのよ。友情なんてとっくの昔にぶっ千切っちゃってるわよ」
にゃも「そ、そうなの!? ……へーぇ、知らなかったわ。でもそういえば、私達の頃にもいたわねーそんなの」
ゆかり「あ、そだ。ここは一つ担任らしく、アイツらに気の利いたプレゼントでもしてやるかにゃーw
   にゃもも選ぶの手伝ってよー」

にゃも(あの時はもうかなり呑んでて、次の日は二日酔いがひどくて……。でもあの後、
   ゆかりに手伝ってって言われて……)
トイレの中で独り青ざめるにゃも。夢うつつだった記憶が俄然あざやかに浮かび上がってきた。
にゃも(手伝ってって言われて、店を出た後ゆかりについてったら変わったお店があって………、
   そこで、あたしが、あたしがあのセットを選んだんだ!!)
自分の顔が真っ赤になるのが判る。
ちよちゃんの別荘でのあの体たらく。二度と酒には飲まれない、と誓ったその舌の根も乾かぬうちに、
泥酔して教育者にあるまじき行為をしてしまったのだ。思わず便器にしなだれかかってしまう。
にゃも(Σ(゚д゚ )ハッ こ、こんな事が滝野さん達に知れたら………!? 駄、駄目よそんなの! ここは
   何としても悟られないようにしなきゃ、教師として、大人としての沽券にかかわるわ!)


とも「あ、にゃもちゃん戻ってきたー」
にゃも「えと、それで、ゆかりには私からしっかり言っとくとして、その、あなた達はいったい
   どうしたいの? ………ソレ」
努めて平静を装うにゃも。しかし、その口調はどこか動揺を隠せないでいる。

173 名前:素敵過ぎる贈り物 投稿日:2002/10/27(日) 02:47
よみ「ど、どうって、その………」
とも「にゃもちゃんさー、あたしらの事叱らないの?」
にゃも「え?」
とも「だってさー。あたしら大人のおもちゃ持ってにゃもちゃん家きたんだよ?
  ソレって良く考えると凄くない? なんかこう、怪しげな雰囲気がミチミチてるよーな」
言われてみれば確かにスゴイ図式である。夏休みのとある一日、箱いっぱいにアダルトグッズを持って、独り暮しの若い女教師の家に二人の女子高生が訪れる。この状況説明の意味するところは、やはりともの言う様に淫靡で刺激的なもののように思える。

にゃも「た、確かにそうだけど、ねぇ? 道具を送りつけたのはゆかりなワケだし、あなた達も困っ
   てた訳でしょう」
とも「あたしは困ってないよ〜!?」
にゃも「え? 何が?」
このともの発言に、それまで黙っていたよみが不意に語意を荒げる。
よみ「先生!! このバカ、箱開けた時からずっとあのグッズに興味津々なんです!!」
とも「何だよ〜さっきから人のことをバカバカって! よみだってアレ、ちょっとは
  使ってみたいんじゃないのぉ?(w」
よみ「んな事思うか! ホントにワイてるのか今日は!?」
とも「だって珍しいじゃんか! しかも二万って買うと高けーし!」
よみ「買いたくなんかねーよ!!」
とも「あたしは欲しい!」
よみ「だから−ー!! …………何だと?」

一瞬の沈黙。
ともの発言にしばし硬直するよみ。
発言の意味を理解して独り赤面するにゃも。
何故か自信たっぷりで悠然と構えるとも。

よみ「………とも、今、なんつった?」
再び動き出したのはよみだった。先程と同じ質問を繰り返す。
とも「二万は高い」
よみ「ベタなボケすんな! その後だ!」

191 名前:素敵過ぎる贈り物 投稿日:2002/11/04(月) 04:00
よみ「お前が興味津々だったのは、珍しかったからじゃなかったのか!?」
とも「んーん、それもあるけど。前からそーゆーのに憧れててさぁ、でもそこらじゃ
  売ってないし。ホンモノがもらえるなんてラッキーじゃん?」
よみ「ラッキーってなんだよ! ……コレが届いたと知ったとき、私がどれだけ対処に
悩んだと思ってるんだ!」
どこから見ても痴話喧嘩にしかみえない二人の言い争いを目の当たりにして、にゃも
はゆかりがこのプレゼントを贈る気になったのも少し判った気がした。
にゃも(これは、ゆかりの方が見る眼はあったかもね……。やっぱり担任なだけあるわね)
そう考えると、自己保身に走っていた自分が少しだけ恥ずかしくなった。気持ちは
前向きに持つべきだと、悩める教え子達に教えられたのだ。
にゃもはわざとらしく咳払いをすると、
「それで、どうしたいの? 滝野さん」
と言った。滝野さん、とは言いながらも、その言葉は決して個人を相手にしたものではなかった。

よみ「ちょっと先生! こんなバカの相手なん……」
とも「だから何度もバカってゆーなー!! バカよみー!」
よみ「なっ……なんだとー!!」
しかし二人の言い争いは止まらず、一層白熱してきたようなので、やむなくにゃもは
その場を仕切ることにした。
にゃも「( ゚-゚)人パンパン ハイハイ二人ともそ・こ・ま・で。教師の目の前で喧嘩する
   もんじゃないわ」
よみ・とも「うっ……」
にゃもにこう言われては、抜いた剣も納めないわけにはいかない。ずっと立っていたともも、よみの隣の席にあぐらをかき直した。


192 名前:素敵過ぎる贈り物 投稿日:2002/11/04(月) 04:01
にゃも「いい? 初めに言っておくけど、私にはあなた達に何も強制する事は出来ない
   の。その、お酒とかタバコは別だけど、アダルトグッズ云々までは何とも言えないわ」
よみ「……え」
とも「?? よくワカンナイ。どゆこと?」
にゃも「だから、その、ね? 滝野さんも高校生なわけだし、そういうのはもう自己責
   任でいいと思うのよ」
よみ「ちょ、ちょっとにゃもちゃん!!」
慌ててよみは先生に異議を申し立てた。にゃもは眉間にしわを寄せながら答える。
にゃも「だってぇ、年頃の女の子に止めろなんて言えないわよ(^-^;) 私だって女   なのよ。正直、滝野さんの気持ちも少しだけ解るもの」
よみ「ああぁもぉ……。頼みの綱だった黒沢先生まで何を言い出すんだ……」
にゃも「こういうのはとめたってする人はするんだし、別に悪い事ってわけじゃな   いでしょ? ……だからって人前で公言するものでもないけど」
とも「おぉ!! さすがはにゃもちゃん! やっぱり話の分かる大人は言う事が違い   ますなー! 何処かの石頭ちゃんとは違って〜w」
ようやく事態を飲み込んだともがこれでもかとよみを煽る。しかし、よみはこれを相手にせず、ぬるくなった紅茶を飲み干してこう言った。
よみ「……もう勝手にしろよ。私は知らないぞ」

にゃも「まぁ相談しに来た相手が私で良かったと思うわ。他の人だったら何て    言ってたか分からないけど、私ならそのテの相談にも乗ってあげら     れるし」
とも「さっすがにゃもちゃん! えろえろなのだぁー♪」
にゃも「ちッ、違うわよぉ! そうじゃなくて……」
とも「ふっふ〜〜ん? 説得力がないぞぅにゃもちゃん、別荘での一夜を忘れ  たとは言わせませんぞ?」
にゃも「忘れたもなにも始めっから覚えてないわよ!」
どうも話の雲行きがおかしくなってきた。
とも「どうだかな〜」
よみ「あの時の事は私も覚えているぞ。正直、にゃもちゃんにああいう過去が    あったなんて驚きだったよ」
にゃも「ちょっと、水原さんまで!?」


193 名前:素敵過ぎる贈り物 投稿日:2002/11/04(月) 04:04
結局、その後はともとよみが何も覚えてないにゃもをからかい尽くして、話が一切進展せぬままに終わってしまった。箱は本人の強い希望でともが持って帰る事になった。

にゃも「それじゃあ気をつけて帰りなさい。なんなら、駅まで車で送ってってあげ
   るわよ」
よみ「夕方だけどまだ明るいし、大丈夫ですよ。今日は急にお邪魔してすみませ
  んでした」
とも「んじゃねー♪」
にゃも「それじゃあ、また何かあったら電話してね。また新学期に会いましょう」

マンションの玄関口で別れを告げ、ともとよみは帰路についた。空はまだ曇ってはいるが、雨はとっくにあがっていた。

二人を見送った直後、にゃもはゆかりに電話をかけようとしたが、『あんたも共犯だろがーーー! 善人ぶるなーー!』と言われるのが目に見えたので、今は止めておく事にした。
にゃも(どうせ休み中は家でゴロゴロしてるだろうし、何も今すぐかける必要は無い    わね。……次に呑みに行った時にでも話せばいいわ)
落ち着いたら緊張の糸が切れたのか、どっと疲労が出てきたようだった。生徒の悩みを聞くなどという、馴れない事をした所為だろうか。
残っていたティーカップを片付けるた後、ベッドに力無くうつ伏せる。

にゃも(あの二人、本当にただの親友なのかしら……。それとも……?)

にゃも(………………)

にゃも(………………)




にゃも(……夕飯、どうしようかなぁ)


194 名前:素敵過ぎる贈り物 投稿日:2002/11/04(月) 04:06
帰り道、よみは始めのうちこそ無言だったが、楽しそうにはしゃぐともを横目で見て少しはにかみながら、いつのまにかとりとめもない雑談に参加していた。

よみ「結局、なんの解決にもならなかったなぁ。ゆかり先生にはにゃもちゃんか
  ら注意してくれるけど、私たちの事は誤解されたままかもしれないからな」
とも「そーかなー? あたしはコレで良いと思ったけどなー。プレゼントは貰えた
  し、にゃもちゃんとも遊べたし」
よみ「そうだな、遊びに行ってたようなもんかもなw」
二人で含み笑いをする。うろたえるにゃもの顔が思い出されたのだ。
とも「さて、遊びも済んだことですし、何処かで腹ごしらえといきませぬか?」
よみ「良い考えだ、と言いたいが、どうせならウチで作ろう。今日は家族が誰もい
  ないんだ。よく考えれば朝も昼も食べてないから、腹ペコなんだよな」
とも「そーいやあたしも食ってなかったわ、朝食」
よみ「お前は夏休みボケを直せ。夕飯はウチで食べて行くか?」
とも「おー? それってもしかしてアタシを誘ってる?」
よみ「………かもなw」
二人はその足で買い物をしにスーパーに寄りあれこれと意見を出し合った挙句、二人分のオムレツの材料を手に家に帰った。

ともはその日はかなり遅くまでよみの家にいたが、担任のプレゼントに出番があったかどうかは定かではない。
ただしその日以降、ともはよみの家族が居ない時には必ず来るようになる。
傍目からの変化はただそれだけ。それに気付く人間もいなかった。


担任の観察眼は確かだった、と言えるのかもしれない。

≪   終幕   ≫