617 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/03 00:02 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-1a(S.1)

●4月×日 晴れ
 今日から高校一年生。クラスは三組。家から近い学校なので通学は楽だけど、中学の同級生がひとりもいないのでちょっぴりさみしい
 …中学の時もほとんど友達はいなかったから関係ないか。
 高校生になったら、私にも友達ができるかもしれないと思ったけど、やっぱり他の人の話の輪に入るのは恥ずかしい。
 嫌われることはないだろうけど、変な目で見られたらいやだ。女の子でこんなに背が高いとか目つきがキツイとか、遠ざけられたらどうしよう。
 そういえば、入学最初の日からうちのクラスに新入生が入ってきた。美浜ちよちゃんだ。
 頭がいいので10歳だけどうちの高校に入ってきたという。可愛いなぁ…。友達になれるといいなぁ。

●4月○日 晴れ
 ちよちゃんは天才だけあって、何でもできるみたい。千尋さんに勉強を教えていたし、水原さんとのあや取りもとても上手に出来ていた。
 窓の外を見ているふりをして、横目で眺めていただけだけど…。

●4月△日 曇りのち晴れ
 進路志望の紙をちよちゃんが集めに来た。お話するチャンス、と思ったけれど、ついつい邪険にしてしまった。
 これじゃいけないのに、ついついクセで…これじゃ中学の時と同じ。
 私の紙を受け取ったあと、ちよちゃんはこちらをじっと眺めていた。私は外の雲を見ていたけど、視界の端からうかがえるちよちゃんの視線が痛い。
 「似合わない職業を選んだ」と思っているのかな。本当のことを書かなきゃよかった。
 放課後、かおりさんが天文部はどうですか、と誘ってくれた。星のことにはあんまり興味がないけど、誘ってくれたにびっくりしてしまって、ついきつめの表情で「私を…?」と答えてしまった。
 かおりさんは私が怒ったと誤解しちゃったようだ。私ってこれだから…。こんな自分がいやになる。

618 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/03 00:04 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-1b(S.1)

●4月□日 晴れ
 登校の時、灰色のネコさんに手を噛まれてしまった。寝ているところをなでようとしただけなのに…。
 保険の先生がオーバーに包帯をまいたので、ちよちゃんが心配してくれた。ちょっと嬉しい。
 帰りにまたあの灰色のネコさんに出会った。機嫌がいいかな、と思って手を出したら、またかまれてしまった。
 何か私、悪いことしたのかなぁ?

●4月×日 晴れ
 いつも元気一杯で友達とよく話している滝野さんが「挑戦シリーズ」と言って百メートル走をしようと声をかけてきた。
 私のことを「運動が出来る人」としてしか見てくれてなさそうなのはちょっぴり悲しかったけど。
 少し手を抜いたつもりだったけど、勝負(?)には勝った。
 けど、滝野さんにはちよちゃんと水原さんが声をかけていた。いいなぁ…。
 
●4月△日 曇り
 大阪から春日さんという転校生が入ってきた。滝野さんが彼女のことを「大阪さん」と呼ぶと言っていた。
 大阪さんかぁ。仲良くできるかな?


625 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/03 21:24 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-2a(S.2)

●5月○日 晴れ
 今日、英語の授業中、教室の床にゴキブリが這いまわっているのを見つけ、つい私自身もびっくりするくらいの悲鳴をあげてしまった。
 動物は好きだけどあれは嫌いなんだもん。
 私の悲鳴でクラスは大騒ぎ。結局、滝野さんが退治してくれたみたいだけど…。
 私の悲鳴だってことは誰も気がつかなかったみたい。よかった、と思ったけど、少しだけ寂しい気もした。
 もし滝野さんとか水原さんが悲鳴をあげてたらどうだったんだろう。

●5月□日 晴れ
 体育の授業でバレーの試合をした。私はちよちゃんや滝野さん、水原さんたちと一緒のチームになった。
 中学の時も授業でバレーは何度かやっていたので得意な方だ。スパイクを相手コートに決めた時、ちよちゃんがとっても喜んでくれた。
 私はいつものクセで冷静な顔で応えたけど、やっぱり格好つけずにありがとう、といいながら微笑めばよかったのかな…。
 こういうのってやっぱり練習しないとダメなのかしら。
 でも、自分が微笑みながらありがとう、とか言ったり、ジャンプしながら喜んだりする姿って想像出来ないな…。やっぱり、私には無理。


626 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/03 21:24 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-2b(S.2)

●5月×日 曇り
 いつものように放課後ちょっと残って外の景色を見ながら、ちよちゃんたちの話を横耳で聞いていた。(※春日さ、とまで書いて消しゴムで消した跡アリ)大阪さんがしゃっくりが止まらなくて困っているようだ。そこで、色々としゃっくりの止め方を教えてあげた。
 彼女たちの輪に入って話すきっかけなんて滅多に無かったので、ちょっぴり嬉しかった。
 水原さんが「渋い治し方知ってるな」と言ってたけど、「おばあちゃんっぽい」と思われたのかな。私ってそう見えるのかな…。
 でも私の知ってる方法ではダメで、結局、つい私が口にしてしまった「脳が病気かも知れない」という言葉にびっくりして治ったようだ。
 私は単純にしゃっくりは脳と関係があると思っただけだけど、大阪さんたちは別の意味に受け取ったようだ。
 怒ってないかな。嫌われないといいな…。


629 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/03 23:47 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-3(S.4)

●6月×日 晴れ
 高校はじめてのプールの授業。
 水泳は得意な方だけど、中学の時は背が高いとか胸が大きいとかで男子だけじゃなくて女子からもからかわれて、あまり良い思い出がない。高校ではそういうことはないみたい。ちょっと安心。
 大阪さんと滝野さんが私の胸を見て「アメリカ人や〜」と言ってきた時、中学の時を思い出して恥ずかしさがぶりかえってきた。つい顔を真っ赤にしてしまった。

 水原さんが色々区分けしてたけど、胸の大きさとかわいさは関係ない。水原さんは大人っぽさの雰囲気が漂ってて魅力的だし、千尋さんやかおりさんの方が女の子らしくてかわいいと思う。
 …男子はどう思ってるんだろう?私みたいに背が大きいだけの女なんて…かわいくない、んだろうな。

 かわいいといえば、ちよちゃんが泳げないのはちょっと意外だった。本当なら小学生だから、仕方ないのかな。
 今日の授業で何度もおぼれてしまって、水を嫌いにならなければいいけど。これからはイヤな思いをしないよう、見ててあげよう。あとで、あのねここねこのタオルがどこで売っているか聞いてみたいし。
 それより、大阪さんの言っていた「猫かき」、見てみたいなあ…。どんな泳ぎ方するんだろう? でも猫さん、お水嫌いだから泳がないのかも。

634 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/04 13:04 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-4a(S.5)

●7月×日 晴れ
 ここ数日、夏休みの宿題の調べ物をするために図書館に通っている。今日も道すがら、いつもの場所でいつもの猫さんに会ったけど、いつものようにかまれてしまった。
 何か嫌われるようなこと、したわけじゃないのに。猫さん、なでたいなぁ。
 図書館ではちよちゃんに会った。ちよちゃんは自由研究の調べ物をしている、という。何か難しそうな学術書を何冊も借りていたようだけど…。司書の人もびっくりしてた。どんな本なんだろう?
 ちよちゃんと図書館の休憩室でちょっとお話。来週の週末、ちよちゃんの家の別荘に、滝野さんや水原さん、大阪さん達と遊びにいくから一緒に来ませんか、という。
 私は「うん」とだけ答えたけど、本当は飛びはねたいくらい嬉しかった。中学の時は友達に旅行に誘われるなんてこと、一度も無かったもの。
 家に戻って旅行のことをお母さんに話したらお母さんもびっくりしてた。けど、驚いているというよりは嬉しそうだった。それこそ、私よりも。
 学校の行事での修学旅行や林間学校はあったけど、やっぱり自分自身が班の中で浮いた存在だってことが分かって…やめよう。今はちよちゃんのお誘いを素直に喜ぼう。
 あと一週間。友達だけでの旅行なんてはじめてだな…。小学校の時の遠足の前の時みたいにどきどきしてる。


635 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/04 13:04 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-4b(S.5)

●8月×日 晴れ
 ちよちゃんの別荘からようやく帰宅。色々あって疲れちゃったけど、忘れないうちに日記に書きとめておこう。

 集まったのはちよちゃんと私の他に、滝野さん、水原さん、大阪さん、そして担任の谷崎先生と体育の黒沢先生。二人の先生の車に分乗してちよちゃんちの別荘まで行く事に。
 黒沢先生の言う通り、谷崎先生の運転はものすごい乱雑で、別荘についた時にはちよちゃんと大阪さんが固まっていた。ちよちゃん、大丈夫かな。トラウマにならなければいいけど。
 谷崎先生は大雑把な性格がよいところ…だと思うけど、車の運転は別。事故になる前にちゃんと教習を受けなおした方がいいと思う。

 ちよちゃんたちが海で遊んでいるのに加わりたかったけど、ちょっぴり恥ずかしいのと気が引けた…というより「私も入れて」という勇気が無かった。ダメだな、こんな私って。せっかく誘ってくれたのに。
 そんなことを考えながら海を見ていると、いつのまにか隣に座っていた大阪さんが、あざらしのこととかふぐの漢字のことを色々辞書で調べた時のことを話してくれた。
 「イルカに乗りたい」という夢のことは私も同感。イルカさんに乗って、海を冒険…いいなぁ。
 いつもぼーっとしているけど、実は結構物知りなのかもしれない。大阪さんのことをちょっとだけ見なおした。

 夜、食事の後、滝野さんが谷崎先生と黒沢先生にえっちな話のことを聞こうとたきつけていた。怖い話は苦手だけど、こういう話は、、、正直、ちょっと興味がある。
 けど、二人ともさり気なく滝野さんの質問をかわしていた。さすが先生達は大人だなぁ。でも谷崎先生の「去年は独りじゃなかったのに」ってどういう意味だろう?黒沢先生、去年は彼氏がいたのかなぁ? いつか話を聞けるかな? 
 
 こんなに楽しい旅行は生まれてはじめて。ちよちゃん来年も呼んでくれるかな、呼んでくれるといいな。

636 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/04 13:05 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-4c(S.5)+α

●9月□日 晴れ
 ちよちゃんの別荘に行った時の写真を滝野さんが持って来てくれた。はじめて友達だけ…といっても谷崎先生とかもいたけど、友達みたいに接してくれたし…での旅行の写真。大切にしよう。お母さんにも見せてあげよう。
 写真のうちの一枚が心霊写真みたいに顔が映っていた。ちよちゃんはうらやましがっていたけど、私は…あんまり嬉しくない。どうしよう、この写真。おはらいしてもらった方がいいのかな?

640 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/04 22:09 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-5a(S.6)

●10月△日 晴れ
 もうすぐ体育祭。中学では運動会という名前だったけど、中身はほとんど同じみたい。中学の時は一位になっても「あんなに背が高ければ当然だよな」と半ば白い目で見られたこともあったので、あまり好きじゃなかった。
 走ること自体は楽しいし、短距離走で一位でテープを切るのも好きだけど、「あなたはみんなとは違うのね」と見られるのがイヤだった。高校ではそんなことはないといいな…。
 今日の昼休み、滝野さんとかおりさんが「体育祭で誰が活躍するか、格好いいか」という話題で盛りあがっていた。滝野さんは自分がかわいさで私に勝つといい、かおりさんは私が格好よくて上だと言い争いになった。
 自分が格好いいとは思わない。けど、もしそう見えても、格好いいよりかわいい方が強い。
 私は、滝野さんの十分の一でいいから、みんなとの話に入れるといいな、うらやましいな、と思っている。だからやっぱり滝野さんの方が強いと思う。
 それより、誰も私の方がかわいい、といってくれなかったのはちょっと残念だったな…。


641 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/04 22:09 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-5b(S.6)

●10月□日 快晴
 今日は絶好の体育祭びよりだった。開会式でみんなが集まっている時、中学の思い出がぶり返してきてちょっとうつになったけど、そんなことは忘れて競技に望むことにした。

 クラス委員のちよちゃんは、「自分のせいで負けたらどうしよう」と、すごいプレッシャーを受けていたようだ。谷崎先生も励ますつもりだったんだろうけど、ちよちゃんは涙目。
 あんなに頭が良くても、ちよちゃんは本当はまだ小学生。高校生に混じって一緒に運動をして、まともに勝てるわけない。
 中学の時のように、他の人に白い目で見られたっていい。ちよちゃんのために、自分の力を精一杯出してがんばろうと思った。ちよちゃんの涙顔は見たくない。短距離、中距離、私が個人競技として参加した競技は力いっぱいがんばった。

 最後の競技のリレーでは、私はアンカー。ここで勝てば五組を抜いて逆転優勝。五組のアンカーは確か前の短距離走でも一緒に走った人。この人、結構足が速い。ちょっとでも気を抜いたら負けだと思い、一生懸命走った。
 最後に追い抜かれそうになったけど、一位でテープを切った。…中学の時には半ばしらけたようなムードになることが多かったけど、今日はみんなで大声援と共に私を迎えてくれた。
 ちよちゃんも泣きながら喜んでくれた。よかった、がんばって。よかった、みんなが喜んでくれて。でもなんで古文の木村先生まで喜んでいたんだろう?

 最後のフォークダンスで中学の時と同じ男子側に回されてしまったのがちょっと残念だったけど、それでも中学の時よりずっとずっと楽しい体育祭だった。

 家に帰ってから、夕食を取りながら体育祭のことをお母さんに話した。お母さんは「あなたが運動会のことをそんなに楽しく話すのははじめてよ」とびっくりしていた。来年からは体育祭を見に来てくれるとも言ってくれた。少しずつ、私も変わって来てるのかな。

 今日の体育祭で、学校側が撮った写真はあとで焼き増しの注文が出来るって話だから、そこで何枚か注文しよう。ちよちゃんのチアガール姿の写真があるといいなぁ。
 来年に備えて、操作が簡単なデジタルカメラを貯金で買って、お母さんにも操作方法を教えておこうかな。


652 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/05 22:48 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-6a(S.7)

●10月×日 曇り
 今日のホームルームでは文化祭についてのお話。中学生の時にも文化祭はあったけど、高校の文化祭は校外からもお客さんがくる。
 喫茶店とかの模擬店も開いていいそうだ。喫茶店とお化け屋敷の案が出たけど、谷崎先生から注文がついて、目安箱でアイディアを募集することになった。

 用意された目安箱の周りで水原さんや大阪さん、滝野さんが色々話しあっていた。伝説がどうとか言ってたけど、どんな伝説なんだろう。
 私も本を読みながら色々考えて、縫いぐるみ展覧会のアイディアを思いついた。私のお部屋みたいにたくさんの縫いぐるみを集めて教室に展示したら、きっと素敵だ…。猫さんに犬さんに熊さん…お客さんも喜ぶに違いない。
 早速紙にしたため、目安箱に入れることにした。でも恥ずかしいから、みんなが帰ったあと、下校する時にさり気なく入れた。名前もとく名希望にしておいた。

 入れた後で気がついた。文字のクセで私だって分かっちゃうかも。どうしよう……私みたいなのが「縫いぐるみ展示会」を提案したのがみんなに知られたら…。

653 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/05 22:49 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-6b(S.7)

●10月△日 晴れ
 昨日目安箱に入れた投書のことが心配で、昨日はあんまりよく眠れなかった。朝一番で教室に来て、目安箱の紙をとり出そうかと思ったけど、教室に来てみたらすでに何人かの男子とちよちゃん、水原さんが来ていた。ああ、どうしよう…。

 ホームルームで目安箱が開かれたけど、入っていた投書は一通だけだった…(お金が落ちた音もしたけど、なんだったんだろう?)。私しか出してなかったんだ。
 ちよちゃんが私の投書を読み上げる。ちよちゃんには前に進路希望の紙も渡したことがあるし、きっと分かっちゃう…。かおりさんが「それ、誰が考えた案?」とちよちゃんに聞いた。もうだめだ…
 私は目の焦点をちよちゃんからずらし、何かを考えているふりをした。

 ちよちゃんが私の方を一瞬だけ見たのが、視界の端から見えた。でもちよちゃんはすぐにかおりさんの方を(多分)向き「えーと、とく名希望さんです」と答えた。
 ちよちゃんが本当に分からなかったのか、それとも書いてある通りに読んだだけなのか、分かっていてそう答えたのかは分からない。私は内心で胸をなでおろした。

 そのあと、土曜日にちよちゃんの家でクラスのマスコットを作る係が決められた。ちよちゃんはもちろんだけど、サイズの基準にするために大阪さん、縫い物が得意ということで立候補した千尋さんとかおりさん、そして滝野さんの推薦で水原さんに決まった。
 そしてちよちゃんは「それと…榊さんもお願いしますね」と、目配せをしながら私を呼んだ。やっぱりちよちゃんは分かっていたのかな…。

 それにしても…体育祭の時といい、木村先生ってうちのクラスの副担任だったかな…?

663 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/09 21:23 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-7a(S.7)

●10月◎日 晴れ
 今日は午後からちよちゃんの家で文化祭のマスコットになる着ぐるみを作ることになっていた。その事を昨晩の夕食の時に話していたら、行きがけにお母さんが「みんなにジュースでも買って持って行きなさい」とお金を渡してくれた。
 おこづかいはちゃんともらっているし、そんなに気を使ってくれなくてもいいのに。でもお母さんの嬉しそうな顔を見て、私も嬉しくなって「うん」といって受け取った。
 近くのコンビニで色々考えながらジュースを買っていたら、集合の時間にちょっと遅れてしまった。ちよちゃんの家に向けて早歩きで歩いていると、正面に大きな白い犬が立ちはだかっていた。

 毛がふさふさしていて目がくりくりしている、とってもかわいい犬だ。でもどうして道の真ん中にいるのかな、飼い犬なのかな、と思ってじーっと見ていると、その後ろからちよちゃんが「さーかきさーん」といいながら顔を出した。
 ちよちゃんの話では、この犬は「忠吉さん」といい、ちよちゃんの飼い犬なのだという。人(?)が出来ているから、なでても大丈夫だというので、なでさせてもらった。
 いつもあの灰色の猫にかまれているから、忠吉さんもあるいは…と心配したけれど、ちよちゃんの言う通り忠吉さんは人の出来た犬だった。
 私が手でなでても、あのかわいい笑顔でじーっと私を見ていてくれている。もちろんかまれたりしなかった。
 とっても嬉しくて、何度も何度も、夢中になってなでていたら、いつの間にか時間が経ってしまっていたようで、ちよちゃんにせかされてしまった。ごめんね、ちよちゃん。


664 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/09 21:24 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-7b(S.7)

(続き)
 ちよちゃんの家には水原さんと大阪さん、そしてかおりさんがいた。千尋さんは身体の具合が悪くなってこれなくなったのだという。ちょっと心配。
 すでに大阪さんの身体をかたどった型紙が出来上がっていたので、それを元に用意した材料で、みんなで手分けして大きな猫さんの裁縫をした。今日一日では終わらなかったけど、残りはかおりさんが大阪さんと片付けるという。

 家に戻ってから、動物図鑑で忠吉さんのことを調べた。グレート・ピレニーズという種類の犬だそうで、とっても性格はおとなしいのそうな。
 ちよちゃんは忠吉さんに乗せてもらっていたけど、私も乗ることが出来るかな…無理だろうな。私が乗るくらいの大きさの犬なんていないだろうな。
 その前に、家ではペットが飼えないからだめだ。でも仕方ない。お母さんがアレルギーで苦しむくらいなら、私ががまんしなきゃ。


665 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/09 21:25 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-7c(S.7)

●10月△日 晴れ
 文化祭。校庭にも校内にもたくさんの模擬店が開かれ、校外からいろんな人がやってくる。いつもの学校とは違った雰囲気だ。何か変わったことが起きそうで、ちょっぴりウキウキした気分。かばんに入れた猫さん・犬さんのぬいぐるみと一緒に登校。

 昨日遅くまで残ってがんばったかいもあり、教室ではもう「おとぎの国」の準備がほとんど出来ていた。動物さんがいっぱい。ちょっと熊さんががっくりしているように見えたので直してあげた。熊さん、今日はがんばってね。
 千尋さんが係の人に猫耳のつけ耳とバッチを配っていたので、私も自分の分を受けとってつけた。かおりさんやちよちゃんは私を見て「素敵です」とほめてくれた。
 嬉しさを表情に出すのが苦手なのと、私自身「こういうことをするイメージじゃない」と思っているので「そうか」とだけ答えたけど…えへ。やっぱり嬉しい。
 でも…ちよちゃんなら「わーい、うれしぃー」とジャンプしながら喜ぶだろうし、滝野さんなら照れ隠しで「なーに馬鹿いってるのー」とか言うんだろうなあ。私ももう少し、素直に感情を出せるといいんだけど、と今ごろになって思っている。少しずつ努力しなきゃ。
 その滝野さんは、完成した猫の着ぐるみを大阪さんからバトンタッチして着て、歩き回っていた。かわいいなぁ…。私も着てみたい、と一瞬だけ思ったけど、私の背の高さじゃ絶対入らない。自分の背の高さが少しだけイヤになった。


666 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/09 21:26 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-7d(S.7)

(続き)
 ちよちゃんに、恥ずかしさをごまかすために「ついでだからと」といって撮ってもらった着ぐるみの猫さんとの写真。来週にはプリントアウトして持って来てくれるという。
 ねこさんと一緒なのはいいけど、中身が木村先生…どうしよう。ねこさんはいいけど、木村先生は、なあ…。

 打ち上げが終わった後、今日は解散となった。ちよちゃんと滝野さんはクラス委員・副委員ということで、アンケートや売上の集計をするためにもう少し残っていくという。
 水原さんや大阪さんも付き合うようだ。私も、と言おうと思ったけど、話すきっかけというかタイミングを逃してしまった。間の悪いときはあるものだ、と自分に言い聞かせて納得することにした……がんばれ、私。

 私が作った猫と犬のぬいぐるみは、犬が売れて猫だけが売れ残ってしまった(売れたのは猫だったかな?)。かわいそうなのでうちに持って帰って、今ソファーの上の、ねここねこさんの横においてある。
 クラスのおとぎの国は一日で終わっちゃったけど、私の部屋の小さなおとぎの国はこれからもずっとずっと続く。猫さん、私のおとぎの国で元気出してネ。


667 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/09 21:27 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-7e(S.8)

●1月1日 快晴
 明けましておめでとう。今年は去年以上にがんばろう。いろいろと。そんなことを考えたくなるような、初夢を見た。

 初夢。詳しくは覚えていないけど、なんかのっぺりとした黄色い猫みたいな熊みたいな変な動物がいた。
 今から考えてみると猫、とはちょっと違っていたけど、夢の中の私はそれを猫さんだと思い込んでいた。ちよちゃんがそれを「捨て猫だ」といって私にあずけて、その猫と楽しくお散歩してたのに…
 その猫さんはいきなり自分が本当の猫ではなく、ちよちゃんのお父さんだといって、空に飛んで行ってしまった。
 でも私にとっては、その黄色い猫さんがちよちゃんのお父さんってことよりも、その猫さんがいった「本当の猫を探せ、でも今の君には無理だ」という言葉が気になった。

 「今の君には」ってどういうことだろう?
 引っ込み思案、人の輪に入ることを避けている、そしてそれを何と無く「それでもいいや」と思っている、それを自分自身の性格として認めてしまっている、ぬるま湯状態の私の「今」のことを指すんだろうか?
 だとしたら、今のままじゃずっと私は猫さんとは仲良くなれないのかな…。
 夢のことでこんなに悩んだのは初めて。単なる夢だ、と片付けるにはちょっと心に引っかかる内容だったから…。

 でも夢のことを信じるのなら、ちよちゃんの家でのお食事会の最後で富士山とナスと鷹が出てきたから、今年はきっと良い年になるんだろうな。
 私もがんばれば、変わることが出来るかもしれない。そうしたら、本当の猫さんに出会えるかもしれない。そうすればきっとよい年になる。今年はそんな年にしたいと思う。

 去年までは一人で行っていたけど、今年はちよちゃんに誘われて、みんなで初詣に行くことになった。早めに来たつもりだったけど神社にはすでにかおりさんが来ていた。
 すぐにちよちゃんと滝野さんと大阪さんが到着。話をしているうちに、皆の見た初夢にちよちゃんが出てきたことが分かってびっくり。
 他の人のみた初夢の中のちよちゃんって、どんなふうだったんだろう…あの黄色い、ちよちゃんのお父さんもいたのかな?

682 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/15 22:49 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-8a(S.9)

●2月◎日 曇り
窓の外を眺めながら「どうして私は猫さんにさけられるんだろう」とため息をついていると、ちよちゃんやかおりさんが「かわいい」と歓声をあげていた。
ちょっと気になったのでのぞこうとしたら、かおりさんが私に気がついて、みんなが見ているものを差し出してくれた。
猫さんの写真だった。
つい夢中になって、「焼き増しの注文は後ろに書くの?」と聞いてしまった。
かおりさんの「榊さんも猫好きなんですか?」の問いに、照れ隠しで「少し」とだけこたえてしまう。
やっぱり猫さん、かわいいなぁ。

うちで飼うのは無理だけど…そうだ、写真なら!
今度の土曜日に、お年玉をためて先週買ったデジタルカメラで猫さんの写真を撮ろう。

●2月×日 晴れ
デジタルカメラを持って近所の公園を散歩する。
もちろん、猫さんたちの写真を撮るため。
こんなに天気がいいのに、カメラを持っている時に限って猫さんたちになかなか出会えない。
夕方になってようやく、いつもの灰色猫さんに出会った。
一応撮れるだけ撮ってみたけど、うまく写っているかな…?
カメラの後ろの部分にある液晶で、撮ったデータを見る事が出来るみたいなんだけど、まだ説明書を全部読んでないのでそこまで操作が分からない。

とりあえず、デジタルカメラのデータを現像してもらえる写真屋さんに現像をお願いした。
次に撮る時は、説明書をちゃんと読んでおこう…。


683 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/15 22:50 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-8b(S.9)

●2月□日 晴れ
先日撮った猫さんのデジタルカメラの写真を撮りにいった。
撮れてはいたんだけど…しっぽとか足の一部分とかしか写ってなくて、まともなのは一枚もない。
かおりさんの写真みたいにきれいなのを撮るのには、やっぱり腕がないとだめなのかな。

がっくりしながら写真屋さんを出ると、通りの向こうから大きな猫さんがふらふらしながら歩いて来た。
大きな…といっても人くらいの大きさ。しかも立っている。
「かわいい…」と思って見つめていると、目の前でその猫さんは倒れ、中からちよちゃんが出てきた。
ちよちゃんが大変そうなので、家まで持っていってあげた。
おっきな猫さん、抱いちゃった。えへへ。

ちよちゃんの家まで猫さんを運んだあと、ちょっとお茶をした。
私が撮った猫さんの写真を見せたけど、ちよちゃんは苦笑いしていた。
そして、説明書を読んで液晶画面で撮った映像を見れば無駄にしなくて済む、パソコンがあればデータを取り込んで確認できることを教えてくれた。
ちよちゃん、物知りだなあ。
でも、パソコンかぁ…ちょっと無理かな。
大学生になってアルバイトをしたら買えるかもしれないけど。


684 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/15 22:51 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-8c(S.9)

●3月○日 晴れ
朝学校に来て見ると、ちよちゃんとみんなが何か楽しそうに話をしていた。
昨日の今日ということでお礼をいうつもりでちよちゃんに声をかけたら、
滝野さんや水原さん、大阪さんも自然に「おはよう」といってくれた…。
なんか嬉しかった。そうか、こんな簡単なことでいいんだ。

みんなの話だと、ちよちゃんがもうすぐ誕生日で、今度の日曜日に11歳になるという。
色々なお話の中で、日曜日にちよちゃんの家でお誕生会をすることになった。私ももちろん行く。
でもちよちゃん、やっぱり格好いいよりかわいい方が、強いと思うな…私は。
去年もらったリボンをつけたちよちゃん、かわいいだろうなぁ…。

●3月△日 晴れ
明日のちよちゃんの誕生日会のプレゼントを探すため、商店街へ足を運んでみた。
アクセサリーやマグカップ、色々探してみたけど、いいものは見つからなかった。
本屋で見つけた本は…仕方無いか。
あの女の子も喜んでたみたいだし。

かわいいうさぎさんのリュックサックを背負っている女の子につい見とれていると、
猫さんたちのぬいぐるみがたくさん入っているUFOキャッチャーを見つけた。
これ、いいな…。
何回か失敗したけど、最後に猫さんがニ匹いっぺんにとれた。
ちよちゃんもきっと喜ぶだろうなぁ。

685 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/15 22:52 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-8d(S.9)

●3月□日 曇り
今日はちよちゃんの誕生日会。
びっくりすることとか素敵なことがたくさんあった。

誕生日会では昨日取った猫さんのぬいぐるみをプレゼントした。
名前をつけたことにちよちゃんはびっくりしてたけど、そんなに私のイメージと似合わないのかなぁ。
でも私は私。これが本当の私。恥ずかしい、と今は思うけど…

私がびっくりしたのは、大阪さんがプレゼントしたぬいぐるみ。
私が初夢で見た、あの黄色い猫さん(?)そっくりのぬいぐるみだった。
あんまりにも驚いたので、つい
「これはちよちゃんのお父さんだ…」
とつぶやいてしまった。
ちよちゃんは「?」という感じの顔をしてたけど、当然かも。
でも、もう私の頭の中には、あの黄色い猫さんイコールちよちゃんのお父さんという考えが固まってしまった気がする。
単なる偶然以上の、何かがあるのかもしれない。まさか、ね。
でもどうしてちよちゃんのお父さんがぬいぐるみで大阪さんのプレゼントで
初夢に出て来て赤いモノが…ああ、もうわけわかんないっ。
(続く)

686 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/15 22:53 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-8e(S.9)

(続き)
色々お話したりケーキを食べたりで楽しい時間はあっという間に過ぎて、
帰る時間になってしまった。
ちよちゃんも忠吉さんのお散歩をするので途中までついてくるという。
「近道ですよ」と、井の頭公園を横切って駅方面に向かうことにしたんだけど、
丘の上から見渡した空が幻想的な景色をつくりだしていた。
空一面にふんわりと広がり、風にのって流れ行く雲。
その雲に夕焼けの色が映し出されて、色々な色合いの赤色を作り出していく。
思わず吸い込まれそうになった。
ふと目をつむると、その雲の上でみんなとかけっこしたり
ふかふかの雲の感触を楽しんだり、心の底から笑ったり…
…言葉通り空に登るような気分になれた。

ちよちゃんとは公園で、水原さんや滝野さん、大阪さんとは井の頭公園駅前で別れた。
「明日また学校で」「さいならー」「じゃーねー」
みんなはいつものように何気なく、さり気なく挨拶を交わしてくれた。
でも私にはそれがとても嬉しかった。
ちよちゃんの誕生日会だったけど、私も何か大切なものをもらえた気がした。

727 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/23 18:38 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-9a(S.10)

●4月□日 晴れ
今日から新学期、2年生。教室も2階に移って、外の眺めもちょっぴり変わって新鮮。
2年生でも1年生の時と同じく3組で、担任は谷崎ゆかり先生
(※「ゆかり先生」の前に付け加えるような形で「谷崎」と入っている)。
ちよちゃんや水原さん、滝野さん、大阪さんたちも同じクラス。
よかった…。

新学期早々に、新しい友達…、というのかな?知り合いが出来た。
名前は神楽さん。新しいクラスで色々考えていたら、いきなりあちらから親しげに声をかけてきた。
声をかけてくれたのはとっても嬉しかったけど…正直、私は知らなかった。
でも神楽さんは私を知っていたようだ。
「(もしかしてまた、モノ珍しげに私を見ているだけなのかな)」との思いがちょっとだけ浮かんだけど、
それは私の勘違いだった。
「私と似たところがある」とか色々言ってたので、それなりに私と同じようにスポーツが得意みたい。
けど、正直、私は彼女のことを覚えていなかった。
球技大会とか体育祭とかで争った、と言われた時、そういや、そんな人もいたような気がしたけど、
やっぱり覚えて無かったので「覚えて無い」と答えてしまった。
怒るかな、と思ったけど、神楽さんは「とにかくライバルなんだ、よろしくな!」と言って、
力強く握手してくれた。
ライバルと友達はちょっと違うかもしれないけど、気軽に声をかけてくれる友達が増えたのは素直に喜ぼう。


728 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/23 18:39 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-9b(S.10)

(続き)
下校の時、後ろから私を呼ぶ声が聞こえたので振りかえってみると、
そこには私のことを「ライバルだ」と神楽さんがいた。
私がびっくりしたのは、呼ばれたことより、私のことを「榊」と呼んでくれたことだ。

私は、他人のことを呼ぶことはあまりない。
呼ぶ機会が滅多にないし、その機会をつくるのがあまり上手でないからだ。
それでも呼ぶ時には、大阪さん…というか春日さんには、滝野さんがこう呼ぼう、
といっていたので「大阪さん」と呼び名だけど、
水原さんとか滝野さんにはいまだに名字に「さん」をつけて呼んでいる。
ちよちゃんは愛称ということで「ちよちゃん」と呼んでいるし、ちよちゃん自身もそれを喜んでいるみたい。

神楽さんは正直、ちょっとぶっきらぼうなところがあるのかもしれない。
いつもの灰色猫さんを見つけたのに、いきなり追い払ってしまったりもしたし…。
けど、私のことを身近な友達のような人として、私と同じ目線、高さで私を見て、
「さん」なしで呼んでくれるのかもしれない。
そう思うと、ちょっと嬉しくなった。
「神楽…さん」と呼んでみたらやっぱりというか、
「なーに他人行儀なこといってんだよ、『神楽』でいいよ、『神楽』で」
と笑いながら背中をバンバン叩いて答えてくれた。
いいなぁ…。

749 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/29 22:09 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-10a(S.10)

●4月×日 晴れ
ちよちゃんが一年生に囲まれてかわいいって言われたり珍しがられたらしい。
本当なら小学生だし有名人なのだから当然といえば当然なのだけど、
ちよちゃんとしては「先輩なのだから先輩らしく扱ってほしい」と私に同意を求めてきた。
話だと、そのことを水原さんや滝野さんに話したらからかわれたという。
「榊さんなら私の気持ち分かってくれますよね?」
とちよちゃんは言ったけど…

私も実は近頃、知らない一年生の人たちに
「格好いい」とか「あれが二年生の榊先輩よね」とか言われる。
…中学生の時と同じだ。背が高いのも髪の毛が長いのも確かに私だけど、
そういうことじゃなくて、私の内面を、本当の私を見てほしい。
別のところにいるような人としてじゃなく、ごく普通の人としてみてほしい。
なんか、「記号」として私が見られているみたいで…嫌。

色々言われるのは私もちよちゃんも同じ。
けど、ちよちゃんは親しみをもって一年生に近寄られたのに、私の場合は一歩引いたところから。
「自分たちとは違う、あのひと」として。
そんな考えが一瞬のうちに頭の中を駆け巡り、つい
「ごめん、残念だけど」
と答えてしまった。

今、日記を書きながら、あの時あんな答え方をしてしまったのをとっても後悔している。
分かっていたはずなのに、私はうらやましくて、分からないと答えてしまったのかもしれない。
明日、ちよちゃんに謝ろう。


750 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/29 22:10 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-10b(S.10)

●4月○日 曇りのち晴れ
谷崎先生が放課後、拾った子猫を教室に持ってきた。
段ボール箱に入れられた、白と薄茶色の小さな子猫。
ふかふかした毛におおわれた、毛玉のかたまりのような、かわいい子猫。
先生は「誰か飼いなさいよ」といったけど、誰も飼うことは出来なかった。
水原さんが私にも聞いてくれたけども、うちも…ダメ。

ちよちゃんがクラスで飼うのはどうかと提案して、私は思わず飼育係に立候補。
でも「金魚を飼うのとは違う」と先生にいわれ、これもダメ。

私たちが色々話していると、寝ていた猫さんが起きて背伸びをした。
かわいい…。思わずくらくらしちゃった。
みんなで順番に猫さんを抱いて、私の番になったのだけど…
水原さんが私に手渡そうとした時に、猫さんは逃げ出してしまった。
なんで?どうして?
やっぱり私って、猫さんと仲良くなれない運命なのかな…。


751 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/11/29 22:11 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-10c(S.10)

●4月△日 曇り

最近水原さんが私のことを、これまでの「榊さん」から「榊」と呼んでくれるようになった。
私も、あまりにも自然だったので、つい最近になってそのことに気がついた。
神楽さんが何度も私のことを「榊、榊」と呼ぶので、それにあわせてくれているのかもしれない。

ちよちゃんは私のことをお姉さんのように見ていてくれるようで「榊さん」と呼んでくれる。
それはそれで私も、かわいい妹が出来たみたいなので嬉しい。
でも、たとえば滝野さんが水原さんのことを「よみ」と呼んだり、逆に「とも」と呼んだりするのを見て、
正直うらやましかったりもしていた。
呼び名とかあだ名で呼ばれるのは、それだけお互いが親しい、友達だと見てくれているしるし。
尊敬やあこがれの対象とか、記号化したモノじゃなくて、人格をひっくるめた一人のひととして
同じ高さの目線であつかってくれるってこと。
それがどんなにうらやましくて、でも手の届かないところにあるものか、
私は中学までで何度も経験し、知っていた。
それがいつのまにかすぐ目の前の扉の向こうにあって、その扉をノックして来た。
あまりにも自然なので、私はそれすら気がつかないでいた。
でも本当はそれでいいのかもしれない。
わざわざ気がつかなくても、ごく自然に…それが当たり前なのかもしれない。

機会はないかもしれないけど、私も明日から水原さんのことを「暦さん」と呼んでみようかな。
慣れてないし恥ずかしいし、すぐには無理かもしれないけど…がんばってみよう。

775 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/06 21:46 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-11a(S.11)

●5月◇日 晴れ
いつものように神楽さんが私に色々話していると、滝野さんと神楽さんとの間で英語の話になった。
「どちらが英語が出来るのか」
という話題で「IT」が何の略なのかと言葉の意味について、二人の間で激しいことばのやりとりになり、
私はいつのまにかかやの外。
「IT」の意味も何のことばの略なのかも知っていたけど、とてもじゃないけどわりこむことは出来なかった。
どうもああいう、言葉のキャッチボールの中に入るのは苦手。

●5月■日 晴れ
神楽さんは学校からの家の方向が同じせいか、よく登校の時に出会う。
今日も登校途中で元気に声をかけてきた。
私は「うん」とだけ答えて、「あ、おはよう、と答えるべきだったかな…」と思ったけど、
何にも気にして無いようだった。よかった。

神楽さんは私に、色々な話を投げかけて来てくれる。
今朝の挨拶のようについぶっきらぼうな答えをしてしまっても、全然気にしてないようだ。
私の反応のつたなさに気をつかって、変にていねいな言いまわしをされたり、
逆に避けられたりするより、ずっと気が楽だし、私も安心して話を聞いていられる。
自分に無理をせずにいられるので、気が休まる。
神楽さんのいうライバルってのはこういう関係をいうのかな…。

神楽さんは今、マウンテンバイクが欲しいそうだ。
私はあんまり興味はないけれど、嬉しそうにほしい種類や色のことを話している様子を聞いていると、
私も聞き入ってしまうし、ちょっとだけ心が引かれてしまうような気もする。


776 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/06 21:48 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-11b(S.11)

●5月△日 曇り
今日は体育でソフトボール。
私が打ったフライをちよちゃんが取ろうとして、顔面に直撃。
ちよちゃんはそのまま倒れてしまった。
一塁に走るのも忘れて、ちよちゃんのもとに走ったけれど、白目をむいて倒れている。
どうやら気絶してしまったらしい。
黒沢先生や神楽さんと三人で保険室まで運んだりで、体育の時間はおしまいになった。

「私のせいだ…ちよちゃんに何かあったらどうしよう…」
と思いながら心配のあまりちよちゃんの顔をずっと見ていたら、黒沢先生が
「大丈夫だから…顔を洗って教室に戻りなさい」
と声をかけてくれた。どうやらちょっと涙が出てたらしい。

ちよちゃんは放課後には元気な姿で教室に戻ってきたけど、
正直、体育の後の授業は気が気でなくて、全然頭に入らなかった。
でもよかった。本当に。


777 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/06 21:48 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-11c(S.11)

●5月◇日 晴れ
天気が良いので散歩をしたのだが、なかなか猫さんにはあえなかった。
こういうよい天気の時には、猫さんって日向ぼっこしているんだけどな…
どうしていないのかな…と思っていたら、あの灰色猫さんがいた。
今度こそなでてあげよう、と思って近づいたら、私のお腹に向かって突進してきた。
あまりにも突然だったのと、油断していたのとでよろめいた私にあの猫さんは、
いつものごとくかみついてきた。
しかも回転しながら。痛かった、いつもより。

かまれてあたふたしていると、神楽さんが助けてくれた。
神楽さんは「かんじゃだめだろ!」といいながらあの猫さんを叩いて、追い払った。
ああ、猫さん…。

助けてくれたのはうれしかった。けど、でも、叩くのはちょっと…いやだったな。
話せば分かってくれる、と思う。あの猫さんでも。きっと。
神楽さんは「そんなわけないだろ」といってたけど。


778 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/06 21:48 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-11d(S.11)

●5月×日 晴れ時々曇り
どうして私は猫さんたちに避けられるのだろう。
普通の猫さんだけならともかく、おもちゃとか猫の本ともめぐりあわせが悪いみたい。
初夢で見た黄色い猫さん(…?)が言っていたように、私が変われば、猫さんとも仲良くなれるのかな。
でも私が「変わる」ってことがどういうことなのだろう。良く分からない。
なんとなく「こういうことかな…」というのは頭に浮かぶけど。

神楽さんは前に、「猫には叩いて教えなきゃだめだ」と言っていた。
でも私は、心の底から信じて話せば、言葉は通じなくてもきっと分かってくれると思う。
そう信じている。
いつかきっと、たくさんの猫さんたちと仲良くなれる。きっと。
でも今は…だめみたい。

そんなことを考えながら定期購読している「猫生活」を読んでいたら、
「猫の集まる路」のページが目にとまった。
たくさんの猫さんが集まる場所を紹介するコーナーで、私のお気に入り。
今月の場所は、うちの近所だった。
ちょっと遠いけど、自転車で行けば数十分で行ける。
ここなら猫さんたちともあえるし、仲良く出来るかもしれない。
そう思って自転車で行ったのだけど…。

たくさんの猫さんがいた。でもいっせいにかまれてしまった。
なんで…? 
痛さ、よりも猫さんにかまれたこと自体に悲しくなった。


779 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/06 21:49 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-11e(S.11)

●5月◎日 晴れ
登校の途中、神楽さんと会った。
…というより、いつもの灰色猫さんにかまれているところに会って、助けてもらった。
神楽さんが「何でいつも猫とケンカしてんだ?」と聞いてきたので、
ケンカをしているのではなくて一方的にかまれているって説明した。
神楽さんは何を勘違いしたのか、…いや、勘違いしてるんじゃなくて、好意でと思うのだけど。
私に近寄る猫は全部追っ払うって言って、本当に猫さんたちを次々に追い払った。
こんな時に限ってたくさんの猫さんがやってくるものだから、
次々に神楽さんが追い払うのを見て、なんだか悲しくなって、がっくりしてしまった。
と共に、ちょっとだけ怒ってしまって…。
つい、神楽さんをにらみつけてしまった。

大好きな猫さんのこととはいえ、「あ、しまった」とにらんだ一瞬後に思った。
それと「なんでこんな強気に出れたんだろう」ともちょっとだけ思った。
ともかくその場では「立ち向かって克服しないと」と自分の思いを神楽さんに話し、
神楽さんも納得してくれた。
その直後に、いつもの灰色猫さんが現われて、いつものようにかまれたけど、
それでもなんとか、なでることが出来た。よかった…
痛かったけど。

今思い直しても、あの時なんであんな態度を取ったのか、取れたのか、自分でもびっくりしている。
大好きな猫さんを追い払ってるからというのもあるけど。
こんなこと、今までなかった。
どうしてかな…。
神楽さん、怒ってないといいな。気にしてないといいな。

783 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/08 15:50 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-12a(S.12)

●7月◎日 晴れ
登校の途中で、小学校時代の同級生とお話しているちよちゃんに会った。
同級生たちを見送るちよちゃんの顔がちょっぴり寂しそうに見えたので、
声をかけるのを一瞬ためらってしまった。
仕方ないよね。
あんなに頭が良くててきぱきしててしっかりしているちよちゃんでも、
十一歳なのに違いはないもの。
みんなで気を使ったり仲良くしたり、そういうことを気にしないように付き合ってはいるけど、
それでも時々、さみしくなることがあるのかもしれない。

ちよちゃんが本当に飛び級を望んでいたのかどうか、私には分からない。
もし望んでいなかったとしたなら、心の一部にでもそういう思いがあるのなら、
「自分が他人とは違う、特別扱いされている、自分と同じ目の高さの人がいない」
という「ひとりぼっち」の気持ちをどこかで感じているかも。
中学校の時の私の思いと似たところがあるのかも。

ちよちゃんのいた小学校では、なわとびが流行っているという話だ。
なつかしいな。今度機会があったら、ちよちゃんとやろうかな……。


784 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/08 15:50 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-12b(S.12)

(続き)

……と思っていたのだけど、機会はすぐにやってきた。
いつものようにいつもの時間に家のそばでちよちゃんと忠吉さんを待って、
一緒に散歩をしていたのだけど、今日は井の頭公園を通っていくことになった。
公園の広場で、小学生たちがなわとびをしているのを、じーっと、
うらやましそうに見ているちよちゃん。
朝のこともあって、なんだか可愛そう……というか、気の毒になって
声をかけることができなかった。

五時半を知らせる鐘が、私とちよちゃんの止まっていた時を再び動かした。
なわとびのなわはその場においてけぼりにされ、小学生たちはみんな帰ってしまった。
ちよちゃんはなわと、小学生たちの後ろ姿を、やっぱりさみしそうに見ている。
私はもう、どうしようも無くなって、ちよちゃんに
「ちょっとだけ遊んでいこうか」と声をかけた。


785 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/08 15:50 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-12c(S.12)

(続き)

忠吉さんに片方を口で持ってもらって、ちよちゃんとなわとび。
しばらくやっていたら、水原さんや滝野さん、大阪さんもやってきた。
偶然……だとは思うけど、びっくり。
日が暮れるまでのほんの少しの時間だったけど、ひさびさのなわとびは面白かったし、
あんなに無邪気にはしゃぐちよちゃんを見たのははじめてだった。

ちよちゃんは私のことを本当のお姉さんのように慕ってくれている。
私もそれにできるだけこたえるようにしたい。
ちよちゃんの気持ちになって考え、想うのはむずかしい。
自分と同じ目線、というより同級生として接しながら、
もう一つ別の、十一歳の、小学校六年生のちよちゃんのことも考えなくちゃいけない。
今日のなわとびのことでは、そう考えさせられてしまった。

798 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/14 16:17 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-13a(S.13)

●7月◇日 晴れ
期末テスト期間前日。
神楽さんが英語のノートを貸してほしいと頼んで来た。
友達からノートのお願いをされたのははじめて。ちょっとびっくり。
他人に見せるつもりなんて全然無かったから、自己流のまとめかたをしていたので、不安だったけど……
しばらくして「いまさらノートを見ても分からない」と返されてしまった。
ちょっと安心、ちょっと残念。
でもノートを見てみたら、猫さんの絵に矢が何本も刺さっていた。
どうして……?

●7月△日 晴れ
期末テストも終わって、夏休みまでは半日授業。
帰りが早いと猫さんに会える時間も多くとれるのでうれしい。

滝野さんが「ぼんくらーず」から抜けるために、ちよちゃんの天才能力と私の運動能力を手に入れる、といっていた。
私は自分の席で話を聞いていたけど、私の能力で滝野さんは教壇から自分の席まで、
空中回転をして着席することになるらしい。
私っていったい……。

わざわざ席を立って、みんなの話の中に割って入るというほどでもなかったので、
というより、何かそれは不自然かなとも思い、本を読みながら話を聞いていた。
話は滝野さんと神楽さんの英語でのやり取りに移っていった。
水原さんの心配ももっともだと思う。
でも、冗談半分の会話の中のお話だけれど、水原さんも本当は少なからず滝野さんを
心配しているんじゃないかな。

(続く)

799 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/14 16:17 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-13b(S.13)

(続き)

下校する時の話もそう。
滝野さんは中学三年になって、水原さんと同じ高校、つまり私達の高校に入るために
必至になって勉強して、見事合格したのだという。
その時滝野さんは、水原さんをびっくりさせるために勉強した、というけれど。
滝野さんのいつもの姿を見ているとそんな気もする。
だけれど、本当は少なからずの部分で、水原さんと一緒の学校に通いたくて、その一心で
勉強して、そして受かったんじゃないかなぁ……。
「びっくりさせるため」というのは、滝野さんなりの照れ隠しだと思う。

……あるいは逆なのかも。
滝野さんの行動パターンを知っている水原さんが、滝野さんをたきつけて、
自分と同じ高校を受けさせるため?

本当のところは分からないし、どちらかが本当だったとしても、
それは水原さんと滝野さんの二人の秘密であって、私のように他人には絶対に話さないだろうと思う。
もしかして、二人とも分かっていて、それで分からないふりをしているのかも?

一つだけ私にも分かること。
それは水原さんと滝野さんがとっても深い友達……というより親友だってこと。
言葉のやりとりももちろんだけど、話さなくても相手のことが分かるような、
相手の思いを知り合える、そういう深い仲だってこと。
二人はよく互いのことを「腐れ縁」といってるけど、本当はそんなんじゃないと思うな。

私にも、そんな友達が、将来できるのかな……。

814 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/20 22:31 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-14a(S.14)

●8月◇日
今年もちよちゃんの別荘で皆と一緒に夏のひとときを過ごすことになった。
帰って来たばかりで疲れて疲れて、もうベットに横たわりたいけど、忘れないうちに
別荘での出来事をまとめておこうと思う。

今回は去年のメンバーに加えて神楽さんが一緒にくることになった。
人数は増えたけど、ちよちゃんがお父さんに頼んで大きな車を借りて来てくれたので、
みんなで一緒に一台の車で行くことができた。
やっぱり去年の、谷崎先生の大暴走でちよちゃんがトラウマ負っちゃったのが原因なんだろうなぁ。
頭は良くても本当は小学生だもの。仕方無いよね。

今年は去年とちょっと時期がずれたせいもあり、別荘のそばの神社でお祭りがあり、
それに行こうとちよちゃんがすすめてくれた。
皆浴衣を持って来たけど、着付けができるのは私とちよちゃんだけ。
谷崎先生はともかく、黒沢先生も着付けができないのはちょっと意外だった。
でも他人のネクタイは結べるのだという。
やっぱり黒沢先生は大人だなあ。
(続く)


815 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/20 22:32 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-14b(S.14)

(続き)
浴衣を着るのは久しぶり。
私は浴衣が好きだし、お母さんも喜んでくれるけど。
中学の時にお祭りに浴衣を着ていったら、みんなにじろじろ見られて嫌な気持ちになったことがあって、
それから着ていなかった。
押し入れの奥にしまっておいてもらった浴衣を出してほしいと言ったら、お母さんは最初にびっくりして、
その後、泣いてしまった。
お母さんは、私が浴衣を着なくなった理由を知っているからだ。
今度は私がびっくりした。
お母さんは
「あなたは本当に中学の時から変わってきた。良いお友達に会えて、本当によかった」
と言ってたけど……そうなのか、私には分からない。
良いお友達、というところだけは確かだと思うけど。

神楽さんも、浴衣を着るのは久しぶりで、その事を話したらお父さんが喜んで
新しい浴衣を買ってくれたのだという。
ちょっと恥ずかしそうな顔をしていたけど、やっぱり嬉しいんだろうね。
いつもボーイッシュな格好をしている神楽さんも、ああいう女の子らしい服を着れば
結構男子にも人気が出ると思うのだけど。
私? 私はとても……。
(続く)


816 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/20 22:33 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-14c(S.14)

(続き)
夜は無礼講、ということで皆で食べたり飲んだりして夜更かしをすることになった。
滝野さんはこっそりお酒を持って来たみたいだけど、もちろん谷崎先生に没収。
その谷崎先生も黒沢先生にお酒を全部没収されてしまった。
黒沢先生の話だと、谷崎先生は酔うと凄いらしい。
何がどう凄いのか、結局今回は分からなかったけど……。

でも私は、黒沢先生も黒沢先生で凄いと思った。
去年の夏休みの時にはごまかされてしまった「おとなのはなし」を、
酔った勢いでみんなに話してしまったからだ。
先生は自分の経験を交えて、事細かに「おとなのはなし」を
二時間ぐらいかけてじっくりと、丁寧に教えてくれた。
たとえば
(中略)
男子の話とか、テレビとかでもちょくちょく耳にするし、中学の時に女の子だけ
別の教室に集められて受けた保険の授業でも教わったけど、そんな話よりももっと
(中略)
なんというか、あまりにも現実感がありすぎて、とても黒沢先生の顔を直視しながら
聞くことができなかった。
だって
(中略)

(続く)

817 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/20 22:33 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-14d(S.14)

(続き)
そういうば話を聞いている間、ちよちゃんは目を丸くしているばかりだった。
単語とかは分かるかもしれないけど、それがどういうことを意味しているのか、
恐らく分からないだろうと思う。
いくら頭がよくても、小学生にはちょっと早いかもしれない……。
大阪さんが「大人になれば分かる」とさとしてくれたけど、
後で「ああいうことは人の前で話したり聞いたらダメだよ」と
注意しておいた方がいいのかもしれない。
私も、とてもじゃないけどこんな話、お母さんに話せないな。

でも、勉強にはなった、そう思う。
やっぱり黒沢先生は大人だなぁ。


842 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/28 21:23 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-15a(S.15)

●10月◇日
高校になってから二回目の運動会。
神楽さんは
「去年は違うクラスで争ったけど、今年は一緒のクラスだ! 
 でもライバルには違いないからな! 負けないぞ」
と言っていた。同じクラスなんだから、勝ちも負けもないと思うのだけど。

借り物競争ではちよちゃんがクラス代表のうちの一人として参加。
「足の速さがあんまり関係無いから」とちよちゃん自身が言っていた。
やっぱりクラスの足を引っ張っていると思っているのかな……。
ちよちゃんは借り物のカードを見て、滝野さんを引っ張っていった。
結果は見事に一位。
水原さんや大阪さんは、カードに書かれていた借り物が何なのか分かったようだけど
私には分からなかった。
いったいなんだったんだろう?
「一番おしゃべりな女の子」かな? それとも「活発な女の子」?
「明るい女の子」かも。
どちらにしても、私とは無縁の話……だね。
(続く)


843 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/28 21:23 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-15b(S.15)

(続き)
出る予定の無かった二人三脚に参加できたのは嬉しかった。
背の高さのこともあるし、私一人で出られる競技数には限りがある。
中学校の時から、短距離走のような、一人で得点しやすい競技に回されるのがほとんど。
だけど本当は、玉ころがしとかちよちゃんが出ていた借り物競争とか、
もっと色んな競技に出てみたかった。
その夢が、(怪我をした千尋さんの代わりなんだけど)一部でもかなったんだ。
背丈のバランスがあわなくてちょっと苦労したけど、
はじめはびっくりしていたかおりさんも「死ぬ気で」(と言ってた)一生懸命走ってくれたので、
一等賞をとることができた。
……でも千尋さんがもどって来た時、「シャー」とか言っていたのはどうしてだろう?
何かの流行りなのかな?
それはともかく、来年の運動会ではもっと他の競技にも挑戦してみたいな。
(続く)


844 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:02/12/28 21:23 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-15c(S.15)

(続き)
今年の運動会は、最後の競技が全員参加の十キロマラソンだった。
長距離走はちょっと苦手。
神楽さんと途中まで一緒に走ったけど、最後の一キロくらいのところでちょっと追いつけなくなって、
結局六位になってしまった。
自分では頑張った方だけど、ね。
神楽さんは結局最後まで私の少し前を走りつづけ、五位に。
うちのクラスで最上位ということもあって、神楽さんはとても嬉しそうだった。
六位までが入賞ということで、私も賞状と賞品のジュースをもらった。

賞状を預けて皆のところに行くと、ちよちゃんや大阪さんが疲れで倒れていた。
特に二人は辛そうだった。
本当は小学生のちよちゃんに、十キロマラソンは無茶な話だったと思う。
順位は最下位だったようだけど、それでも途中であきらめず、最後まで走ったのはやっぱりえらいな。

マラソンの結果も良かったので、うちのクラスが去年に引き続き優勝。
中学の時も優勝したことはあるけど、高校の時の方がとてもうれしく感じる。
なぜだろう? 
……やっぱり、みんなと一緒に競技をしているって感じだからかな。

特に滝野さんは嬉しそうだったけど、谷崎先生が黒沢先生の所で自慢している様子を見て、
「ジュースおごって」と先頭立って言っていた滝野さんも、みんなもちょっと興ざめ。
うれしいのはわかるけど、ね。

871 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/04 13:13 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-16a(S.16)

●10月◇日

文化祭でのテーマがホームルームで決まらなかったので、今年も目安箱を設置することに。
去年みたいに私一人だけ意見を入れてあわてちゃう、ってことがないように、
でも去年みたいなかわいいのをやりたいなと色々考えたけど、いいアイディアが思いつかなかった。

運動会の事務的な後始末とかマラソンの賞状の受け取りとかで黒沢先生に職員室によばれ、
教室に戻ってくると、大阪さんたちが「喫茶店はどうか」とたずねてきた。
喫茶店……アルバイトをしたことがないので、接客業はちょっとあこがれ。
一年生の時のお店より、もっと本物のお店みたいなことが体験できるかも。

でも神楽さんや大阪さんいわく、喫茶店やお化け屋敷は人気が高いとのこと。
他のところとの違いを出すために、色々とアイディアを練らなきゃいけない。
そんな話をしていたところ、神楽さんが去年の私達のクラスの出し物の話をしてきた。
私はちょっとだけドキっとしてしまった。
もし神楽さんが「それ、誰が出したアイディアなんだ?」とか聞いてきたら、もしかすると
ちよちゃんがつい口をすべらしてしまうかもしれなかったから……。

でもそんな心配は要らなかった。
神楽さんは、私の心配をよそに、ぬいぐるみの展示と喫茶店を合体させた「ぬいぐるみ喫茶」という、
とってもすてきな案を出してくれたのだ。
ちよちゃんは去年のことを知っているからか私の方を見て、
「去年の反省を活かしていいのが出来るかもしれないです」と賛成してくれた。
もちろん私も大賛成。


872 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/04 13:13 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-16b(S.16)

●10月△日
ホームルームで、先日皆の話し合いの中で出てきた「ぬいぐるみ喫茶」のアイディアが提案された。
提案者は一応ちよちゃんということになっている。
私にとっては提案者は誰でもよく、可愛い喫茶店が楽しめればそれだけで嬉しい。
他に案もなかったので、うちのクラスの出し物は「ぬいぐるみ喫茶」に決定。

ウェイターとウェイトレスは交代制。
その他に私は帽子か何か、頭につける飾り物のデザインを任されることになった。
うさぎさんの耳もいいし、猫さんもかわいいかも。
でも……なんかもっと、どこのクラスにもない、私達のクラスだけのモノってないかなぁ。

かわいいものといえば、一年生の時に猫の着ぐるみをつくって大活躍した千尋さんとかおりさんが、
ちよちゃん向けの宣伝用の着ぐるみを作るという。
どんなのだろう? 楽しみだな……。


873 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/04 13:14 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-16c(S.16)

●10月◇日
明日は文化祭。早く寝て明日にそなえたいけど、日記だけはちゃんと書いておこう。
頭のかぶり物のデザインをいろいろ考えたけど、結局猫さんの耳が一番分かりやすいので
それに決めた。
家からいくつか持ってきたぬいぐるみのうち、ねここねこさんのを出してスケッチブックに描いていたら、
滝野さんがもっていってしまった。
仕方がないので、代わりに猫さんに一番近い――というか本人は猫だといっていたけど――
変な猫みたいな動物みたいなちよちゃんのお父さんのぬいぐるみを使うことにした。
描いてみると、意外にかわいくて、それでいてちょっぴり変わってなかなかいいものが出来たかも。
あとは裁縫の係の人の腕に任せるだけ。いいのが出来るといいな。


874 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/04 13:14 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-16d(S.16)

●10月×日
ふぅ……。去年よりずーっと疲れた文化祭。
ちょっと気を抜くと、鉛筆を持ったまま寝ちゃいそう。
でも、まだ日記書いてないし……。

喫茶店の準備は当日朝早くきて仕上げをして、なんとか間に合った。
ちよちゃんの着ぐるみは……。
なんとペンギン! とーってもかわいかった。
普段のちよちゃんもかわいいけど、ぺんぎんさんちよちゃんは百倍はかわいい。
どこかの電力会社のマスコットのペンギンを見たときも「かわいい」と思ったけど、
本物(?)はずーっとかわいい。
皆もそう思ったようで、谷崎先生もクラスのみんなもちよちゃんの魅力のとりこになっていた。
当然だよね。これならお客さんも喜んでもらえそう。
ちよちゃんといえば、ちよちゃんのお父さんの耳帽子も、いいのが出来た。
数が間に合わなかったので、私とかはねここねこぬいぐるみをかぶることになったけど、
これはこれでかわいいから、まる。

開店からしばらくたってお客さんの入りも一息ついてきた。
スタッフのローテーションもなんとかなりそうということで、
まずはちよちゃんと大阪さんが休憩を取ることに。
大阪さんは「買い食いするんや」とか言ってたけど。

(続く)


875 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/04 13:14 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-16e(S.16)

(続き)

ところが、二人が休みをとってしばらくすると、段々とお客が増えて来た。
どこかで通り道の規制をしているわけではないし、団体さんで来たわけでもない……。
考えられるのはちよちゃんの宣伝効果。
でもこんなにお客が増えるなんて。まるでラッシュアワーみたい。
さすがちよちゃん、といいたいところだけど、これはちょっとすごすぎ。
喫茶店で立ち席なんて見たこと無い。

もちろん飲み物や食べ物もどんどん注文が来る。
そのオーダーを受けたり、受けたオーダーに従ってコーヒーとかを運んだり、
私もウェイトレスとして大はりきりでがんばった。
色んな人とお話して、接客をして……毎日じゃ疲れるかもしれないけど、
とても楽しかった。こういう機会も時々はあってもいいなぁ。

大繁盛のまま幕を閉じることが出来た今回の文化祭。
私自身も、疲れたけれど、いやな疲れじゃなくて気持ちよい疲れだったなぁ。
今年の冬とか、来年の春、近くの喫茶店かどこかで思い切ってアルバイトでもしてみようかな。
ちよちゃんと大阪さんは、マグネで夏休みだけアルバイトをしているという話。
今度、紹介してもらおうかな。

それじゃ、おやすみなさい……。


896 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/11 19:18 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-17a(S.17)

●12月×日
帰り支度をしながらちよちゃんと大阪さんの話をそれとなく聞いていたら、
今日はかわいいパンダさんの写真集の発売日だという話が耳に入ってきた。
しかも前評判が高いので売りきれているかもしれないとのこと。
お財布の中を確認して、本屋まで早歩きで向かった。
新刊コーナーを見てみたら、恐らくこれだ、という写真集が。
たくさんおいてあったから売りきれるってことはないと思うけど。
とりあえず自分の分を買って、家まで走って帰った。
かわいいパンダさんの写真がいっぱい。いいなぁ、パンダさん。
でも私は一度も実物を見たことがない。
機会があれば上野動物園に行ってみよう。
でも一人だとちょっとさみしいかな。ちよちゃんたちと一緒に行こうかな。

897 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/11 19:19 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-17b(S.17)

●12月◇日
ちよちゃんを囲んで、クリスマスとサンタさんのお話。
ちよちゃんはまだ小さいけど、サンタさんが本当にはいないことをちゃんと知っていた。
神楽さんと滝野さんがもめていたけど……。

ちよちゃんは、サンタさんはお父さんだと言っていた。
お父さんがサンタさん。
あの黄色い猫みたいなちよちゃんのお父さんがサンタさん。
メリー……お金は国が出してくれて、マッハ100で飛んで……。
想像しただけで……いや、ちよちゃんのお父さんが本当はちゃんとした人間だというのは
分かっているんだけど、でも……。

クリスマスの話が出たということもあり、プレゼントやトナカイが話題に登った。
その時はもう私は自分の席に戻っていたけど、滝野さんは
「トナカイ=空を飛ぶ鹿」
だと思っていたようだ。
ちよちゃんと私で黒板に絵を描いて説明。
滝野さんは泣きながら間違いを恥ずかしく思っていたみたいだけど、
誰にでも間違いはあるんだから、そんなに泣かなくてもいいと思うな。
話しが終わった後、水原さんがこっそりと滝野さんをなぐさめていたから、
大丈夫だとは思うのだけど。


898 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/11 19:20 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-17c(S.17)

●12月24日
今年はクラスの仲良しさんたちとクリスマスパーティーをすることに。
とはいえ、かおりさんは家の事情で、神楽さんはアルバイトで不参加。
神楽さんは
「夏は合宿とかでアルバイトが出来ないから冬に稼がないと! 」
と言ってたけど、ちょっと残念だな。
でもイブにしか出来ないケーキ売りのアルバイトと言ってたので、仕方無い。
後でどんな内容だったのか聞いてみよう。
トナカイさんとかサンタさんの格好するっていってたけど。

いつもの待ち合わせ場所、三鷹駅の北口で待ちあわせして、まずはカラオケボックスへ。
得点が出る機械だったので、ちよちゃんが真剣になって歌っていた。
私は私で、久々に歌ったのでつい夢中になって振り付きで歌ってしまった……。
みんなにはほめられたけど、かなり恥ずかしかった。
でもやっぱり嬉しいな。こんなこと、今までなかったもの。
意外だったのは水原さん。うーん、なんというか。個性的。

899 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/11 19:20 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-17d(S.17)

(続き)
カラオケボックスで何曲ずつか歌い、時間も結構たったので、ちよちゃんちに移動。
途中で雪が降りはじめて、大感激。
東京でホワイトクリスマスなんてめったに無いモノ。
なんかみんなでじーんと感動してたら、たまたま通りを歩いていた木村先生に遭遇して
ちょっとしたパニックに。
先生いわく、ケーキやシャンパンなどの買物をしているとのこと。
でも何にも持っているようには見えなかったけど?

ちよちゃんの家では、ちよちゃん特製のブッシュ・ド・ノエルをみんなで食べた。
ちよちゃん、料理を作るのも得意なんだね。
忠吉さんも欲しがっていたけど、ケーキは食べさせたら駄目なんだそうな。
それからずっと、夜遅くまで……とはいってもちよちゃん自身が夜更かし出来ないから
十一時くらいまで色々とおしゃべり。
勉強のこと、友達のこと、趣味のこと、憧れちゃうタイプの男のひとのこと。
中学の修学旅行や林間学校では、夜もあんまり他の人とお話する機会がなかったので、
こういうお泊まりをしてのお話はあんまり経験がない。
去年と今年の、ちよちゃんの別荘で、くらいかな。
やっぱりこういう時間を過ごすのって、いいな、と思う。

909 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/13 21:12 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-18a(S.18)

●1月×日 くもり
三学期最初の登校日。冬休み中も初詣とかでちよちゃん達と会ったけど、
やっぱり学校の方がたくさんの友達と会えていい。
中学校の時までは静かなお正月休みの方が好きだったんだけど、
高校になってからは、友達との時間の方が楽しく感じられる。
積極的に話の輪に自分から入っていけばそれが一番だけど、
そうでなくともさりげなく話の輪の後の方に何と無くいるだけで、それだけで
みんなと一緒という感じがする。

水原さんは冬休みを利用して北海道旅行に行ってきたようだ。
滝野さんがヤキモチをやいていたみたいだけど、ちょっと無茶な理由の気がしないでもないけど、
気持ち、分からないでもないな。
水原さんは私にも北海道旅行のお土産をくれた。
友達から旅行のお土産をもらうのははじめてだったので、はじめはびっくりした。
やっぱりこういう時って、ちよちゃんたちみたいに正直に「わーい」と喜べばよかったのかな。

私ヘのお土産は熊シチュー。
熊のマスコットキャラの缶詰かなと思ったら、本当に熊のお肉が入っているとのこと。
一年生の時に『ポストペット』に興味があると話していたせいか、「熊とか好きだから」と誤解されたようだ。
熊さんは本当に好き。でも「食べ物」として好きなんじゃなくて……。
熊さんのお肉……。嬉しいけど、どうしよう……なんかかわいそう。
けど、やっぱり嬉しい。うん。

滝野さんのヤキモチはその後も続き、谷崎先生を巻きこんで水原さんと一悶着おこしていた。
こういう時って、滝野さんと谷崎先生は本当に仲がいい。まるで本当の姉妹みたい。
滝野さんが学校の先生になったら、多分谷崎先生みたいになるんだろうな。


910 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/13 21:14 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-18b(S.18)

●1月×日 晴れときどきくもり
今日はちよちゃんたちと一緒に、マジカルランドに行って来た。
ちよちゃんの別荘以外でどこかへ遊びに行く機会は滅多になかったので、
一昨日ちよちゃんからお誘いの電話がかかってきた時にはびっくりした。
思わず「私もいいの?」と聞いてしまったけど、お友達から誘われた時に
こんな答え方はちょっと変かな、と後で思った。
ちよちゃんは「もちろんOKですよ」と答えてくれたのでよかったけど。

集合場所はいつもの三鷹駅北口前。
今回は部活も無いとのことで神楽さんも参加。
でも水原さんが熱を出して、これないと滝野さんが教えてくれた。
ちよちゃんが「お見舞に行こうか」と言ったけど、滝野さんが説き伏せて結局行くことに。
水原さんが気を使うから、と言っていたけど、あれが滝野さんなりの「心配」なんだろうな。

マジカルランドでは楽しくて楽しくて、あっという間に時間が過ぎてしまった。
人が多くて並んでいる時間が長かったのがちょっと疲れたけど、その間、ちよちゃんや
神楽さんたちと色々お話出来て、それはそれでよかった。
色んな乗り物があって、どれも迫力満点。
特にジェットコースターは正直ちょっと苦手だったけど、みんなと一緒なら、と思い、無理して乗った。
やっぱり怖かった。とても。
今、思い出しても、ちょっとぶるぶるしちゃう。
あとで乗っている所を写真に撮ってプリントしたマグカップを買ったんだけど、
私はひたすら伏せていた……。あの時は怖くて、正直いっちゃうと、何も覚えていない。
(続く)


911 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/13 21:14 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-18c(S.18)

(続き)
お土産売り場でちよちゃんは、水原さんのために、マジカルランドのマスコットの飾り物を買っていた。
私は自分の分にマスコットのぬいぐるみ。お母さんの分はお皿とキーホルダー。
大阪さんも家族の分と言って色々買いこんでいた。
神楽さんは……自分の分と友達の分、といっていくつか買っていたけど、男ものもあったような。
神楽さんに弟さんとかお兄さんっていたっけ? お父さんの分かな。

滝野さんは自分の分と家族の分を色々探していた。犬向けのお土産がないと頭を抱えていたので、私が
「水原さんの分はどうするの? ちよちゃんはもう飾り物を買っていたみたいだけど」
と聞くと、
「あー、あいつ自分で熱出したのが悪いんだから、別に何も買わなくていいんだよ」
と笑いながら答えて、売り場の別のコーナーに行ってしまった。

でも私、知ってるんだ。
滝野さんがこっそりと、ペアのハンカチとマグカップを手に持っていたのを。
私が聞いた時に慌てて後手に隠したけどね。

帰って来て、お母さんにお土産をプレゼント。
夕食はマジカルランドとお土産の話で、ついついおしゃべりをしてしまって、
おみそ汁が冷めてしまった。
ちょっぴり怒られた。けどお母さんの顔は笑ってた。

明日は学校の帰りに、マジカルランドで撮った写真をカメラ屋さんに出してこないと。
やっぱりパソコンがあった方が便利かなぁ。でもプリンターも必要になるし……。
まずは学校のパソコンの授業を一生懸命やっておこう。


912 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/13 21:15 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-18d(S.18)

●1月△日 くもり一時雪

職員室に直接行って学級日誌とか日直の道具などを受けとり、教室に来てみると、
いつも朝は一緒にいる水原さんと滝野さんが別々、というよりそれぞれの席に座っていた。
しかも両方ともふくれ顔をしている。
水原さんはもう熱が引いているみたいで安心したけど、なんか様子が変。
ちよちゃんに聞いてみたら、朝方に、昨日のマジカルランドの件で一悶着あったらしい。
言われて見ると、確かに机やいすの場所がところどころばらばらに。
ちよちゃんは「私が間違ったお土産を渡したからいけないんです」といっていたけど、
いったい何があったんだろう?

でも放課後までにはいつもの二人に戻っていた。
ちよちゃんも「正しい」お土産を渡したようだ。
やっぱりあの二人って、本当に仲がいいんだな。

朝の天気予報で言っていた通り、今日はお昼前から雪が降りはじめ、夕方までには
校庭が一面に雪化粧をしているみたいになった。
神楽さんの提案でみんなで雪合戦をすることに。
女の子だけでの雪合戦というのも変な感じがしたし、スカートなのでちょっと寒かったけど、
皆の輪に入って遊ぶのはとても楽しかった。
でも神楽さん、ちよちゃんに本気で投げちゃ駄目だよ……。

寒かったといえば水原さん、雪合戦の時、くしゃみしてたな。
熱が引いたばかりだというのに大丈夫かな。


942 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/19 12:38 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-19a(S.20)

●4月○日 はれ
今日から三年生。クラスも3階の教室に移って、新しい気分。
いつもよりちょっとだけ早く来て、クラス替えの一覧をチェック。
よかった。
今年も谷崎先生のクラスで、ちよちゃんや神楽さん、水原さん、滝野さん、大阪さん、
千尋さんたちと同じ。
唯一、かおりさんだけが別の、四組の木村先生のクラスになってしまった。
二年連続パーフェクトというのも難しいから、ここまで一緒になっただけでも
ありがたいと思うべきなのかしら。

先に来ていた神楽さんや水原さんと一緒にクラス替えについて色々話していたら、
ちよちゃんと大阪さん、そして滝野さんもようやく登校。
滝野さんは……髪を一年生の時みたいに短くしてきた。
女の子が髪型をまるっきり変えるなんて、よっぽどのことがないと。
ちよちゃんは「失恋でもしたのかな?」と水原さんに聞いたけど、
水原さんは即座に「そりゃないない」と返事。
滝野さんと水原さんの仲だからいえる、ことなんだろうけど、ね。
むしろ、その話を神楽さんが何も言わずに真面目な顔でじっと聞いていたのがちょっと気になった。

谷崎先生はホームルーム、私たちが受験生で大変なことをとくとくと語ってくれた。
なんか疲れていたようで、途中から脱線してしまったので、私は外の景色を
ながめていたけど。
みんな大変なんだな。私もがんばらなきゃ。


943 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/19 12:38 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-19b(S.20)

●4月◇日 くもり
ホームルームの時間、谷崎先生が来るのを待っていると、なぜか隣の二組の教室から谷崎先生の声が。

全部の会話を聞きとることは出来なかったけど、どうやら二組の黒沢先生が誕生日のプレゼントを受けとって
それに気づいた谷崎先生がヤキモチをやいているみたいだ。
大阪さんが言っていたけど、黒沢先生は去年も誕生日プレゼントをもらっていたそうな。
わざわざ隣のクラスに乗り込んでいく谷崎先生も大人気ないけど、
気がつかなかった、というか忘れていた私たちもひどかったかもしれない。
誕生日が春休み中だったとしても。

●4月◎日 はれ
委員長のちよちゃんの提案で、あわてて、という言葉にするとちょっと悪いかもしれないけど、
谷崎先生への誕生日プレゼントをクラスで用意することにした。
先日、隣から聞こえて来た黒沢先生と谷崎先生の話だと、黒沢先生はバッグをもらったようだ。
ちよちゃんや滝野さんたちと一緒に、谷崎先生にばれないよう、
体育の授業の後でこっそり黒沢先生に詳しく話を聞き、中身がだぶらないようにした。

プレゼント贈呈の係はやっぱりクラス委員のちよちゃんが。
谷崎先生は最初、黒沢先生宛てへのプレゼントと勘違いして怒ったけど、
自分宛てのと分かると歌まで歌って喜んでくれた。
大阪さんも言ってたけど、喜んでくれてなにより。
だけど、嬉しいのは分かるけど、わざわざ黒沢先生のクラスにまで見せびらかしにいかなくても……。
でもなぜか廊下で聞こえてきたのは、黒沢先生じゃなくて木村先生の声。
しかも木村先生も誕生日の歌を歌っていた。はやりなのかな?


944 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/19 12:38 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-19c(S.20)

●4月◇日 はれ
体育の時間、準備運動の時に、ちよちゃんの留学話で盛りあがった。
ちよちゃんは高校を卒業したらアメリカに留学にいくという。
初めて聞いたけど、びっくり。やっぱりちよちゃんはすごいや。
神楽さんが例えていた野球選手とはちょっと違うかもしれないけど。
滝野さんや大阪さんが、アメリカの治安の悪さを心配してたけど、私も心配。
でもちよちゃんならきっと大丈夫。忠吉さんがいるし。
万が一、忠吉さんが鉄砲で撃たれても、お父さんが飛んで来てくれる。
鉄砲の弾なんて弾き返してくれる。きっと。たぶん。

でも、でも。
アメリカに留学ということになったら、ちよちゃんとお話することも難しくなるな。
遊べなくなっちゃうな。いなくなるってわけじゃないけど、やっぱりさみしい。
手紙でやり取り出来るし、今は電子メールもあるけど、でも、やっぱり……。

79 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/25 23:09 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-20a(S.21)

●6月◇日 はれ
ホームルームで来月の修学旅行の話があった。
はじめ谷崎先生は「修学旅行は中止になった」とウソを言って、ちよちゃんをおどかしていた。
友達と同じ視点で生徒とつき合うという先生の気持ちは分かるけど、ちよちゃんちょっと涙目だったなぁ。
いつもの冗談、と同じ感じだったから心配はそれほどしていないけど。
谷崎先生はさらに「限られた時間で要領良く遊ぶのは難しいぞ」と力説していた。
黒沢先生から時々、ちらほらと聞くけども、谷崎先生は相当「遊び上手」だったらしい。
だからこその力説なんだろうか。

昼休みも修学旅行の話でもちきりだった。
神楽さんが「沖縄では沖縄でしか出来ない勝負をしようぜ」と色々話をしていたら
水原さんが班編成のことで、私と神楽を班に入れるという話になった。
私とちよちゃん、神楽さん、水原さん、大阪さん、滝野さんと、いつもの六人で一つの班。
ちよちゃんちの別荘とかマジカルランドとかで何度か遊びに行ったりはしてるけど、
学校の行事でみんなと班をきちんと作って旅行にいくのは今回が初めて。
中学の時も林間学校や修学旅行はあったけど、いい思い出はなかった。……もういいけど。
でも今度の旅行は、とっても楽しいだろうし、一生の思い出になるような旅行にしたいと思う。
何かきっと、素晴らしいことがありそうな気がする。

そういやちよちゃんは、小学校を途中で飛び級したから、今度の修学旅行がはじめてと言っていた。
ちよちゃんのことだから大丈夫だとは思うけど。
私がちよちゃんの分までしっかりして、ちよちゃんを守ってあげなきゃ。


80 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/25 23:10 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-20b(S.21)

●7月◇日 はれ

明日から修学旅行。
着替えとかガイドブックとか日記を書いておく手帳とか、その他色々必要なものをバッグに詰め込んだ。
滝野さんが「沖縄は暑いから普段着は水着なんだぜ」とか教えてくれたけど、
水原さんが「そんなわけないだろ」と突っ込みを入れていたので、冗談だろうと思う。
けど、念のために水着を一着多めに持って行くことにした。
目覚ましもかけたしお母さんに明日のスケジュールも確認して起こしてもらうようにしたし
これで万事おっけー。

夕ごはんの時にお母さんと、あらためて明日からの旅行のことを色々とお話した。
お母さんは生水を飲まないようにとか危険な場所に足を踏みいれないようにとか
変な人につきまとわれたら大声を出して逃げなさいとか心配してくれたけど、
行き先は沖縄なんだし、そんな心配はいらないんだけどな。
おみやげは何がいいかと聞いても「あなたが無事で帰ってくれば何でもいい」というばかり。

何か他にもお母さんは心配事があるらしい。
私はしばらく考えた後、あっ、と思うことがあった。
どうしようか少し悩んで、その後、やっぱり答えた。
思い出すこと自体、あんまりうれしくないけど、お母さんを心配させたままにするわけにはいかないもの。
中学の時のようなイヤな思いをすることはないから安心して。
一緒のグループの友達もいい人ばかりだから、と。
それだけ話すと、お母さんは少しだけ目に涙を浮かべ、そして何もいわずにただ
うなづくばかりだった。
もう……私だってもう高校三年生なんだから、大丈夫だよ。
とは思ったけれど、私までちょっぴり泣けてしまった。


81 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/25 23:10 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-20c(S.21)

●7月◇日 はれ
修学旅行一日目。
みんな自分のベッドで本を読んだり、滝野さんは水原さんのベッドに入り込んで
プロレス技をかけてはしゃいでいる。
空港から大騒ぎだった滝野さんだけど、いまだにテンションは高いまま。
なんかものすごいパワーの持主だな、とあらためて実感。
相手をしている水原さんがちょっとかわいそう、かも。
水原さんは水原さんで、夕食のバイキングを食べ過ぎたみたいで、
滝野さんを適当にあしらいながら「うー食べすぎたー」とうなっている。
私はといえば、ベッドに寝そべりながら、こうして手帳に日記代わりのメモを書いていたりする。

沖縄で一番最初に印象深かったのは、周りの環境すべて。
空の色は吸い込まれるくらいにとても青く、空気はきれい。
もっとじめっとした暑さかなと思ったけど、そうでもなかった。
むしろ東京の方が暑かったかも? と感じたくらい。

最初に行った首里城は、空の青さでますます紅さが映えていた。
ちよちゃんが二千円札を見せて「これが守礼門ですよ」と教えてくれたけど、
入り口にあった守礼門と、もちろんウリ二つ。
首里城を出た後もあちこち回ったり、街中を散歩がてらにみんなで歩いたけど、
東京にはないなつかしさ、というか落ちついた雰囲気。
実際にその時代にいたわけじゃないけど、数十年前に戻ったような感じ。
空気がおいしいのと、色々な街のけん騒が聞こえて来ないから、かもしれない。

あ、もう十時だから消灯しなさいって放送だ。
みんなまだまだ起きているだろうけど、とりあえず電気は消さなきゃならない。
明日は万座毛見物と体験ダイビング。
どんなお魚がみれるのかな。


82 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/25 23:11 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-20d(S.21)

●7月△日 はれ
修学旅行二日目。
今日のダイビングでみんな疲れたせいか、みんなベッドに横たわっている。
あの滝野さんですら、もう寝息が聞こえるくらい。

今日はまず、沖縄の観光名所で有名な万座毛へ。
昔、沖縄の王様が「万人を座するに足るくらいにきれい」と言ったことから
つけられた名前だそうだ。
すきとおる海の色、増さんみたいな神秘的な岩の形、ずーっとながめていて時間がたつのを忘れてしまうくらい、
本当にきれいだった。
神楽は「やっほー」と言っていた。
けど、山じゃないからやまびこは返ってこないと思うな。
滝野さんは滝野さんでふざけてちよちゃんを危ない目にあわせていた。
あわてて助けてあげたけど、ちよちゃんは泣いていた。
あれだけ前に心に決めていたのに、事前に気がつかなくてちょっと後悔。

万座毛のあとは体験ダイビング。谷崎先生も一緒。
水族館とか本でしか見たことのない、色々なお魚や海の中の植物が、手に取れるような距離で
見ることができた。
水の流れも静かだし、水もきれいで、まるでおとぎの国でふわふわ浮かんでいるみたい。
いるかさんになった気分。
気持ちはみんな同じだったみたいで、ダイビングが終わった後の帰りの船では
みんな大騒ぎ。谷崎先生まで騒いでいた。
機会があったらまた潜ってみたいな。
(続く)


83 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/25 23:11 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-20e(S.21)

(続き)
ダイビングから戻ってきて、後は自由時間。
街中を二人一組でおみやげ探しも兼ねて散歩することに。
私はちよちゃんと、水原さんは滝野さんと、そして神楽さんは大阪さんと。
大阪さんはちよちゃんと一緒に行きたかったみたいだけど、
迷子になるかもしれないことなどを考えての組み合わせになった。
ちょっと心配だけど、神楽なら大丈夫かな。
ちよちゃんとはおみやげやさんをいくつか回って、シーサーのちいさな人形などをチェック。
自由行動の範囲が狭かったせいもあって、途中で大阪さんたちと合流。
さらに水原さんたちと合流して、最後はみんなで歩きまわることに。
帰りがけにお母さんへのおみやげも買った。喜んでもらえるかな。

おみやげやさんでも思ったけど、沖縄って面白いな。
食べ物も色々、不思議な名前がついている。
大阪さんが連呼したがるのも分かる気がする。
水原さんたちは渋い顔をしていたけど、私、実は今でも頭の奥底で大阪さんの
「さーたーあんだぎー」がうずまいていたりする。
飛行機に乗る前に、おみやげに買って行こうかな。
出来立てが一番おいしいって話だけど。


84 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/25 23:17 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-20f(S.21)

●7月○日 はれ
修学旅行三日目。今日はグループ単位での場所を決めた、観光自由行動。
沖縄にいくのならイリオモテヤマネコのことを色々見てみたいと思っていたので、
みんなにお願いして私達の行き先を西表島にしてもらった。
谷崎先生は「資料とか博物館はあるけど、本物には会えないよ」といっていたけど、
まさか今日みたいなことになるなんて……今でも心が痛い、というのかな。
胸のあたりが傷む気がする。
ホテルに戻ってからも、特にちよちゃんが心配してくれたけど、
こればっかりはどうしようもないものね。

大原港で記念撮影をしてから徒歩で西表野生生物保護センターへ。
「ヤマネコがいるかも」という看板を見て、ちょっとだけ期待。
けどイリオモテヤマネコに遭遇してかまれたら、私の手など大変なことになるかも。
ちょっと残念な気持ちで歩いていると、私と猫さんたちの関係を知っている神楽が
「手を出していればかみに出てくるかもしれないぞ」
というので、冗談半分、期待ちょっぴりで手を森にかざしてみた。
出るわけ無いな、時間の無駄だからそろそろいこうか、と思っていたら……

あの子が出てきた。
(続く)

85 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/01/25 23:18 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-20g(S.21)

(続き)
ちよちゃんが色々説明してたけど、前に勉強していた私は一目で分かった。
イリオモテヤマネコの子供だ。
「かまれるかも!」と思ったけど、あの子はゆっくりと近寄ってきて、私の足をほおずりする。
もしも、ひょっとしたら、と思って、ちょっと心配しながら手をかざしたら……なでられた!
今まで猫さんにさわることすらむずかしかった。
かまれたり、逃げられたり、なんでか分からなかったけど、さけられていた。
でもこの子は私になついてくれる。
抱き上げても逃げたりしない。思わず叫んでしまった。
猫さんを抱き上げられたのは……生まれてはじめて。

野生動物保護センターやマリウドの滝も、この子と一緒に。
あとで水原さんから聞いたのだけど、滝野さんもこの子に興味を持っていたようだけど、
神楽さんがそれとなく滝野さんを引っ張る形で注意を引き離してくれたみたい。
なんか、うれしいな、みんな。

でも、うちでは猫は飼えないし、ましてやこの子は特別天然記念物。
飼うなんてとてもむり。
上原港でおわかれをしていると、この子のお母さんがやってきた。
やっぱりお母さんと一緒がいいよね。
はじめて仲良くできた猫さんだけど、仕方無いことだよね……。

ほんの少しの間だけど、猫さんと仲良くなれた。
今日一日だけでも、沖縄に来たかいがあったと思う。
帰りの船では思わず泣いちゃったけど……。
また会えるよね、きっと。


121 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/01 16:11 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-21a(S.22)

●8月○日 くもり
先月の修学旅行が終わってすぐに夏休み。
そして明日からいつもの夏休みのように、ちよちゃんの別荘でお泊まり会。
でも、今回は滝野さんの提案で受験にそなえての「勉強会」ということになった。
谷崎先生と黒沢先生もいることだし、すずしいし、みんなと一緒に涼しいところで勉強できるから、
きっとよく勉強できるとおもう。
バッグにいつものお泊まり道具、ノートや筆記用具、進めたい参考書や辞典を入れて、
準備はおっけー。
あ、そうだ。日記代わりの手帳ももっていかなくちゃ。バッグに入るかな?

●8月△日 晴れ
今年はかおりさんも加えて、全員で9人となったので、車が二台必要になった。
一台は黒沢先生、そしてもう一台は……谷崎先生の車……。
去年はちよちゃんのお父さんがバンを借りて来てくれたけど、さすがに9人ともなると
小型バスくらいでないと無理だから、仕方無いのだけど。
谷崎先生、おととしより車の傷が増えてますけど、どうして?

ちよちゃんは一昨年のこともあるので、黒沢先生の車に。
結局、谷崎先生の車には滝野さんが立候補して、あとは私とかおりさんが乗り込むことに。
かおりさん、車には弱いって言ってたんだから、無理しなくてもいいのに。
谷崎先生の運転する車に乗るのは初めてだったけど……
ちよちゃんの気持ちがとってもよく分かった。
かおりさんが「ジェットコースターは事故らないところがよいですよね」と言っていたけど
ほんと、そう思う。
でもあれだけの運転で事故にならなかったのだから、もしかするとすごく腕がよいのかも?

今回の旅行は本当は勉強会のはずなんだけど、滝野さんのすすめで、まずはいつも通り泳ぐことに。
黒沢先生も言ってた通り、けじめはつけないと、ね。
(続く)


122 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/01 16:11 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-21b(S.22)

(続き)
夜はみんなで勉強会。
東京と比べて、エアコンをつけなくても涼しいし静かなので、勉強もはかどりそう。
分からないことがあったら、先生やみんなに聞けばいいので、安心して参考書も進められる。
かおりさんが何回も質問してきたけど、聞いてきたのは基本的なところばかり。
クラスが変わってからあまり話は聞かないけど、勉強、大丈夫なのかな?
古文は、担任が木村先生なのでずいぶんと鍛えられた、ということだけど。

神楽も数学で頭を抱えていて、黒沢先生に聞いたのだけど、先生は全然分からないとのこと。
それを谷崎先生が「体育教師は頭がよくないから許してあげてね」とつっこみを入れて
からかっていた。
黒沢先生はいじけて、部屋のスミでしょんぼり。
谷崎先生に言いくるめられて負けた、黒沢先生のこんな姿を見たのははじめて。
いろんな意味でびっくりした。
けど、自分の担当の教科以外のことは、分からなくても仕方ないと思うのだけど。
昔、谷崎先生も「英語を教えるのは飽きた」とか言って、数学を教えようとして
数分で挫折したんだし……。

でも、黒沢先生がそのまま部屋のスミで寝ちゃったあと、谷崎先生がちよちゃんから毛布を借りて
黒沢先生にかけてあげたのを私はちゃんと見てた。
なんだかんだ言っても、やっぱりとても仲がいいんだな、二人とも。


123 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/01 16:11 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-21c(S.22)

●8月◇日 晴れ
朝食の時間になったのでリビングに降りてきたら、ちよちゃんとかおりさんが何か話していた。
話を聞いてみると、ちよちゃんが朝早く起きてやっているラジオ体操のスタンプ帖を、
黒沢先生に作ってもらったという。
うさぎさんのスタンプは消しゴムを削って作ったとのこと。
結構黒沢先生も器用なんだなぁ。

ラジオ体操をするたびに一日一個ずつ、うさぎさんのスタンプ。
いいなぁ。私も黒沢先生に話して、明日からちよちゃんと一緒に早起きして体操しよう。
そしてうさぎさんのスタンプをもらうんだ。

そんな話をしていたら、かおりさんが私にカメラを向けて、スナップ写真を撮るという。
ちょっとばかり緊張しちゃって顔が引きつってしまった。
一枚目の写真は滝野さんが前に出て来て、おそらく失敗。
だけどその直後、かおりさんは横にジャンプして連写していた。
なんか本物のカメラマンみたい。
でも、私の写真なんか撮ってどうするんだろう?

●8月×日 晴れ
今日は朝から大阪さんが寝ぼけて包丁を振りまわし、大騒ぎになった。
後で話を聞くと、フライパンを叩いて谷崎先生を起こすつもりだったのが
間違えて包丁を出してしまったという。
みんなにケガがなくてよかったけど、なんかホラー映画の1シーンみたいで
どうしてよいか分からなくなって、ちょっとだけパニックになってしまった。
自然にちよちゃんを守るような位置についていたのには、自分でもびっくりしたけど。
大阪さん、よっぽどのおねぼうさんなんだろうな。
低血圧なのかもしれない。
ともかく、みんなが無事でよかった。
もちろんみんな、後で谷崎先生と黒沢先生にお目玉受けたけど。


124 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/01 16:12 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-21d(S.22)

●9月1日 晴れ
今日から二学期。でもまだまだ外はじりじりと暑いし、夏はまだ終わってないって感じ。
ちょっと汗ばんだ顔をハンカチでふきながら教室に入ってみると、
ちよちゃんと滝野さんと大阪さんが倒れていて、その横で神楽さんが「どうしよう」と繰り返しながら、
慌てふためいている。
あわててそばにかけよってどうしたのか聞いてみたら、
夏休みボケしている大阪さんと滝野さんに気合を注入したら、勢いあまってちよちゃんまで
倒してしまったらしい。
神楽が気孔を使えたのかどうかはしらないけど、ともあれ神楽と二人でちよちゃんたちを
起こしてあげた。
みんなケガもなく無事。

それにしても、涙目をしながらあんな顔であわててる神楽を見たのははじめて。
いつもはボーイシックで行動的なイメージがあるけど、こういう時は女の子っぽくふるまっちゃうのかな。
私は……どうなるんだろう?
ちよちゃんの別荘での時も、ちよちゃんを守るような位置に自然にいたけど、
かわいい女の子だったらきゃーきゃーいいながら逃げまわるのが普通なのかな。

滝野さんといえば。
夏休みの前後から水原さんの雰囲気がちょっと変。
変というと言葉が悪いかもしれないけど、なんかちょっとピリピリしてる。
特に、滝野さんへの接し方がちょっと変わってきたように思える。
別荘の時も滝野さんのぼけ(というのかな?)にただ無感情で返答しただけだったし……。
水原さん、何かあったのかな?


154 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/07 23:00 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-22a(S.23)

●10月◇日 はれ
ちよちゃんが体育祭のパンフレットを配っていた。
今年は競技が一新されるみたい。
大阪さんがさっきパン食い競争がどうとか言っていたのはそれだったのかな。
神楽に聞いてみたら、大阪さんとちよちゃんで、パン食い競争のパンの釣り下げかたを
いろいろと考えていたらしい。
神楽は「つりバリみたいなやつでぶら下げるんじゃないか」と言って、
二人を驚かせたようだ。
神楽自身はけらけら笑ってたけど、もし本当なら怖い……。
たぶん、糸に洗濯バサミか何かをしばりつけて、その洗濯バサミでパンの袋をはさむのだと思うけど。

……つりバリにひっかかった大阪さんやちよちゃんを想像しちゃった……
今日は眠れないかもしれない……。

155 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/07 23:01 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-22b(S.23)

●10月□日 はれときどきくもり
明日は体育祭。私は大阪さんと一緒に、ゲートの飾り付けの紙のお花を作ることになった。
何枚か重ねた薄い専用の紙をきれいに折って中央部分を輪ゴムでくくり、
きれいに開くとお花のできあがり。
でもいびつになってしまったり途中で破れたりして、必要な数を作るのにずいぶんと時間が
かかってしまった。
作っている途中、ずーっと黙っているのもどうかなと思っていたら、
大阪さんが色々と話かけてきた。
背の高さのこととか胸のこととか、神楽のこととかイリオモテヤマネコのこととか……
時々質問がぽんっ、と全然関係ないところにとんだり、こちらの質問とまったく別の
話をすることもあったけど、聞いていると結構面白い、かも。
前のちよちゃんの別荘でのお話の時もそうだけど、大阪さんって本当は結構物知りで、
頭がいいのかもしれない。
ただそれをうまく整理したりまとめたり出来ないだけで……そう、ちらかっているけど、
ぎっしりと本が詰まっている本棚みたいな感じ。
独特な雰囲気も、好き嫌いが分かれるかもしれないけど、私は好き。
男の人からも、ああいうタイプの女の子って素朴な感じで好かれるんだろうな。
それと、「榊ちゃんってけっこう、こういうお花つくるのも上手なんやねー」
といってくれたのもうれしかったな。

出来あがったお花をゲート前にダンボール箱ごともっていってお仕事は終わりだけど、
これは私一人でも出来るので、大阪さんには先に帰ってもらった。
私はお弁当持ってきているけど、大阪さんは持ってきていないから、
早く食堂にいかないと席取れないものね。
私もみんなと一緒に食事すればよかったかな、とも思ったけど、私が遅れて
みんなに迷惑かけるわけにもいかないし。


156 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/07 23:02 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-22c(S.23)

●10月◎日 はれ
今日は高校最後の体育祭。
一年生の時のような不安も、二年生の時のような緊張感もなく、落ちついた気持ちで
楽しめた体育祭だった。

準備体操の時に水原さんが気にしていた話だけど、うちはいまだに女生徒はブルマー着用。
滝野さんや水原さんの話だと、今の高校や中学では女生徒がブルマーなのは珍しいらしい。
言われてみれば確かに足の付け根のところとか、肌にぴっちりするところがちょっぴり恥ずかしい。
古文の木村先生は「万歳」といいながら英語で喜んでいたけど、文法が間違っていた。
神楽もびっくりしていた。
だって「私はそれが大好きです」の英訳として「I like you」って言ったんだもん。
本当の意味でも、間違った英文の意味でも、どっちにしても、ちょっと。

今年は競技の種類が変わったので、色々と新鮮な競技があって見ているだけでも楽しかった。
特にちよちゃんと滝野さんが参加した仮装競争。
出来なかったけど、一番参加したかったのはこれ。
一年生の時の文化祭の猫さんに私が入って、二年生の時のぺんぎんさんにちよちゃんが入って、
二人でかわいいモノコンビとか……いいなぁ、猫さんとぺんぎんさん。
(続く)

157 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/07 23:03 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-22d(S.23)

(続き)
最後の競技は今年から行われることになったクラス対抗全員リレー。
始まる前からちよちゃんは泣きべそをかいていた。
ルールは原則全員参加。本当は小学生のちよちゃんもみんなと同じ距離を走らなくちゃいけない。
幸い、私はアンカーの先生の一つ前で、ちよちゃんの次に走ることになっていた。
生徒最後のランナーなので、他の人の4倍は走ることになる。
4倍といってもたったの400メートルだけど、距離が長ければそれだけ遅れを取り戻すチャンスもある。
ちよちゃんの遅れくらい十分私が盛り返してあげるつもりだけど、それでもちよちゃんは気にしてた。
ちよちゃんがこっそり毎晩近所を忠吉さんと走って練習していたのを私は知っている。
夜中勉強をしていて窓からふと外をのぞいた時、ジャージ姿のちよちゃんを見つけたからだ。
忠吉さんが一緒だったとはいうものの、あんな夜中に。こわかっただろうと思う。
それくらいがんばっても、やっぱり気にしちゃうのは仕方ない。

ちよちゃんはやっぱり他の生徒と比べて遅かった。
直前の神楽ががんばって二位まで順位を上げていたのに、ちよちゃん一人でずいぶんと
順位を下げてしまって、私にバトンを渡す時には泣きながらだった。
隣のクラスのランナーがちよちゃんをばかにしていたので、よけいにやる気が出た。
絶対、絶対この人だけは抜いてやるって。
自分が運動が得意だったりすることはあんまり気にしていなかったけど、
今日ほど自分が足が速くてよかったと思ったことはなかったし、
一生懸命走りたい、走らなきゃと思ったこともなかった。
走っている時にどうしても心の奥底でよみがえっちゃう、中学の時のみんなの冷たい、
というより仲間はずれにされたような視線とかその時のいやな記憶も、かけらもなかった。
ただ、ちよちゃんのためだけ。それだけのため。
(続く)

158 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/07 23:04 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-22e(S.23)

(続き)
距離が他の人の4倍あったせいもあって、ちよちゃんをばかにした男の人も抜かして、
一位でアンカーの谷崎先生にバトンタッチ。
つかれたけど、走った後にこんなに満足した気持ちになったのははじめて。
ちよちゃんももう泣くのをやめて、一生懸命先生を応援していた。
よかった。本当によかった。

マラソンは谷崎先生の黒沢先生ヘの体あたりで反則負けになっちゃったけど。


帰りはみんなで一緒に、駅まで帰ることにした。
みんなつかれてたけど、総合順位がマラソンの得点が一点も入らなくてビリになったこととか
滝野さんが「一等じゃないのでジュースが飲めなかった」とか言ってたけど、
私は楽しかったと思う。
クラスの順位はビリになっちゃったけど、あれだけ気持ちよく走れたのは、
恐らく高校時代でもはじめて。
ちよちゃんも楽しかったって言ってたし。よかった。

中学の時は自分の運動能力とか背の高さで色々いやな思いもしたけど、
そういうことがなければ、私は今、この学校にいなかったことになるし、ちよちゃんたちとも
出会えなかったことになる。
そう考えれば、いい思い出があんまりなかった中学校時代も、まったく無駄じゃなかったのかな。
なんか変な考えかもしれないけど、明日お母さんに話してみよう。

185 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/15 00:02 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-23a(S.24)

●11月□日 晴れ
谷崎先生が急病で休んで、今日の英語の時間は自習に。
私はちよちゃんたちと図書館へ。
パソコンの検索コーナーで色々調べモノをして、ちょっと時間があまったので
イリオモテヤマネコについて調べていたら、交通事故での死亡記事があった。
日付は修学旅行の翌日。

新聞は毎日読んでいるけど、気がつかなかった。
うちの新聞には載っていなかったのかもしれない。
しかも、ちよちゃんや大阪さんはよく分からないといったけど、
載っていた写真は、あのお母さんネコのような気がしてならない。
模様が違う、とか何かしるしがあるわけじゃない。
でも、でも。何となく、そんな気がする。
西表島で会ったあの子、大丈夫かな……。心配。

186 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/15 00:02 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-23b(S.24)

●11月△日 晴れ
もうすぐ十二月にもなるということもあって、進路の最終決定の用紙が配られた。
クラスでもすでに推薦入学で大学を決めた人もいるし、中には就職を決めた人もいる。
あと半年も経たないうちに高校生活は終わって、
みんなそれぞれ自分で決めた道を進むことになる。
なんかうそみたいな、でもうそじゃない、本当の話。
一年生の時には動物のお医者さんになりたい、と考えていたけど、その考えは今でも変わらない。

医学部を持つ大学はいろいろあるけど、獣医学部を持っている大学はそれほど多くない。
昔、北海道の大学の獣医学部のまんがが流行った時にあこがれて、
色々調べたことがあったけど、その時とあんまり変わっていなかった。
設備が整っていてちゃんと勉強できそうな、獣医学部を持つ大学はあったけど、
うちから通うのはちょっと無理。
家から出て、一人暮ししなきゃ、と思って気がついた。
一人暮ししたら、ペットが飼える。
お母さんのことは心配だけど、でもペットが飼えるようになる。

進路の話とあわせて、このことをお母さんに話してみた。
動物のお医者さんになりたいとは前々から言っていたけど、具体的に大学のパフンレットを持って
お話したのは今日が初めて。
お母さんはちょっとびっくりした様子だったけど、
自分自身のことなのだからじっくりと考えて、それで私が決めたことなら反対はしない、
お金のことなら心配しなくていいと言ってくれた。
ペットのことは言わなかったけど、お母さんも何となく分かっていたようだ。


187 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/15 00:03 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-23c(S.24)

●11月○日 晴れ

進路の紙を提出した後、神楽と進路の話が話題にのぼった。
神楽はもう少し水泳を続けたいので体育系の大学に進みたいという。
結局インターハイに出ることはかなわなくて、体育推薦の話も無しになっちゃったけど、
神楽の水泳の腕はなかなかだと私も思う。
タイムは速いし、それになりより泳いでいる時、とても気持ちよさそうだ。
将来は体育の先生になるかもしれない、とも言っていた。
神楽が体育の先生になったら、やっぱり黒沢先生みたいに、うちの高校の先生になるのかな。

神楽と進路の話をしていたら、ちよちゃんが前に約束してくれた猫の本を持って来てくれた。
その本のことや、私が大学に入ったら一人暮らしをして、ペットを飼いたいと思っていることを
神楽やちよちゃんに話したりもした。
昔はあんまり人前で猫が好きとかいうのは、からかわれるのが怖くてちょっとイヤだったけど、
今はそれほど気にしなくなった。
何よりちよちゃんや神楽の前なら、全然気にしない。
隠す必要なんてない。みんななら私のことをちゃんと分かってくれるから。

帰り道でのこと。
大阪さんと別れてちよちゃんと二人でお話しながら歩いていると、
猫さんがたくさん。でもなぜかみんな怒っている。
なぜ、と思っていると、あのかみ猫が。
どうやら先日引っ越した人の家の猫の代わりに、かみ猫が近所のボス猫になったみたい。
かみ猫が指示するかのように私達を襲おうとしていたので、
私はどうなってもいい、ちよちゃんだけでも助けようとしたら……。
目の前に、私達を助けるような位置に、もう一匹の猫が。


188 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/15 00:04 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-23d(S.24)

(続き)
私にはすぐに分かった。その猫は普通の猫じゃない、ヤママヤーだ。
それも恐らく……信じられないけど、多分、きっと、修学旅行で会った、あのヤママヤー。
ヤママヤーは私達に襲いかかってこようとしている猫たちを一喝し、追い払ってしまった。
でもヤママヤーは、私達が安全なことを見届けて安心したかのように、その場に倒れてしまった。
病気? ケガ? 私には分からない。
自分が獣医でない、猫の病気やケガの知識がないことを今日ほどくやしかったことはなかった。
ちよちゃんが、忠吉さんがいつもお世話になっている獣医さん、石原先生を教えてくれたので、
二人でそこに。

石原先生の診察では、病気もケガもなく、単にお腹が減って衰弱していただけとのことだった。
石原先生はヤママヤーのことを「イリオモテヤマネコか?」と聞いてきたけど、
私もちよちゃんも、ただの雑種だと答えた。そう答えるしかなかったんだもの。
石原先生はそうか、とだけ答えて帰してくれたけど。

このままうちにつれて帰りたい。けどうちはお母さんがアレルギーでペットはダメ。
どうしようかと思っていたら、今日、私が「大学に受かったら一人暮しを始めてペットを飼う」という
話を覚えていたのか、ちよちゃんが、春まで預かってくれると提案してくれた。
迷惑をかけちゃうかもしれないけど、私にとってはとてもうれしい話。
もちろん喜んでお願いした。
名前も決めた。ヤママヤーだから「マヤー」。
呼んでみたら、ちゃんと返事してくれた。
(続く)

189 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/15 00:04 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-23e(S.24)

(続き)
ここまで書いていたら、ちよちゃんから電話がかかってきた。
石原先生から電話がきて、「必要ないとは思うが」と前置きした上で、
イリオモテヤマネコについての生態系の話とか飼育方法とか役立つ本や資料を
色々教えてくれたそうだ。
明日、その一覧を私にも教えてくれるという。
また、一ヶ月に一度は、定期検診を受けにくることもすすめてくれた。
ちよちゃんが出た後、ちよちゃんのお父さんと石原先生がしばらくお話してたみたいで、
ちよちゃんは詳しくは分からないと言っていたけど、石原先生はマヤーが
イリオモテヤマネコだと半ば分かっているみたいだ。
石原先生からの伝言も
「その猫に何かおかしなことがあったり調子が悪くなったら、すぐに私のところに連絡しなさい」
とのことだったので、おそらく間違いないと思う。
ちよちゃんのお父さん、もしかしたら、やっぱりすごい人なのかもしれない……。


190 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/15 00:05 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-23f(S.24)

●12月○日 晴れ
昨日はちよちゃんの家にお泊まりしたので、昨日の分の日記。
マヤーのことを皆に話したら、早速今日、放課後にちよちゃんの家に見にいこうということになった。
いつものみんななら話しても大丈夫だし、クラスの他の人に聞かれても何のことだか
分からないだろうから問題はないと思う。

ちよちゃんの家では滝野さんがマヤーをからかっていたんだけど、
マヤーのカンにさわったみたいで、マヤーが滝野さんの手をひっかいてしまった。
前に読んだ本だと、猫は何か悪いことをしたらその場でしからないと、
それを悪いことだと思わない、しつけをするならその時にしないとダメだという。
昔は話せば分かると思っていたこともあったけど、どんなに信じている相手でも
しつけは必要だし、それが将来マヤーのためにもなると思わなくちゃいけない。
滝野さんの手のケガはたいしたものじゃなかったけど、私みたいに猫にひっかかれた経験が
ないからか、とても痛がっていた。
大丈夫かな、あとが残らないといいけど。
水原さんと神楽は「調子にのり過ぎだ」としかっていたけれど、
それでも水原さんの顔がちょっと不安そうだったのが気になった。
やっぱり、心配してるんだね。

神楽と滝野さん、水原さん、大阪さんは時間になったので帰ることになったけど、
名残惜しい表情がちよちゃんにも分かったのか、お泊まりしていいと言ってくれた。
お母さんに連絡を入れて、今日はお泊まり決定。
うれしくて、つい、ちよちゃんのお部屋でマヤーをかかえてごろごろしてたら、
その姿をちよちゃんに見られてしまった。
ちよちゃんだったら別にいいんだけど、でも、やっぱり恥ずかしかった……。
すぐに何もないかのようにふるまったけど、あんなにひきつった顔のちよちゃんを見たのは初めて。
(続く)

191 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/15 00:06 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-23g(S.24)

(続き)
ちよちゃんのお父さんたちと一緒に夕食をごちそうになって、マヤーをお風呂で洗って、
そのあとにちよちゃんとお風呂に入って、マヤーと一緒に、ちよちゃんのお部屋でお休み。
寝床に入った時に、ちよちゃんが、マヤーは私のことをお母さんだと思っていると言ってくれた。
なんだかうれしくなって、クラスの他の人にもまだ言ったことがなかったことだけど、
私が小さいころから他の人と比べて背が高くてかわいくなかったから、
かわいいものが大好きなんだってことを話してしまった。
いままでこんなことなかったけど、ちよちゃんになら話してもいい、
ちよちゃんならきっと分かってくれるし、笑われることもない、と思ったから。
ちよちゃんはにっこりしながら、かわいくないなんてことはない、
私が部屋でマヤーとごろごろした時の姿がとてもかわいかったと言ってくれた。
物心ついてから、お母さん以外の人に「かわいい」と言われたのははじめて。
なんかはずかしかったけど、でもそれと同じくらいうれしかった。
自分が自分じゃないみたい。

お母さんが心配しちゃうし、ちよちゃんも迷惑だろうかお泊まりは無理だけど、
これから一人暮らしをはじめるまで、マヤーには時間があれば会いにいこう。
私だってお母さんと離れ離れになったままだと、やっぱりさみしいものね。


220 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/22 08:32 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-24a(S.25)

●12月△日 晴れ
受験期間も間近、というより、推薦入学試験の人や一部の大学では受験が始まっているので
もう受験戦争に突入、という感じがする。
昼休みになってもみんな食事もそこそこに参考書やノートを広げて勉強中。
教室の中は昔のほんわかとしたざわつきと違って、ちょっと緊張感のあるさわがしさ。
あの神楽ですら、参考書を読んで頭をかかえている。
でも神楽にはがんばって欲しい。
受ける大学は違うけど、あれだけうれしそうに体育系の大学のことを話してくれたんだもの。
試験に落ちて、泣いている顔なんてみたくない。
前にノートを貸して以来、神楽は時々勉強を教わりにもくるけど、
「榊の勉強邪魔しちゃ悪いからな」とか言って、あまり聞きにこない。
心配してくれるのはうれしいけど、そんなに気にしなくてもいいのにな。

そんな中、滝野さんは相変わらず、ちよちゃんや水原さんと騒がしそうに笑っている。
ナゾナゾを出してちよちゃんを驚かしたり、大阪さんにすらすら答えられて逆にびっくりしたり……。
勉強をするしないは別にして、あれだけいつも元気でいて、みんなと楽しくお話できるのは
滝野さんの長所だし、私も実はちょっとうらやましい。
ちよちゃんは大阪さんに「先生が似合う」と言ってたけど、
滝野さんも案外先生が似合うんじゃないかな。
谷崎先生みたいに、生徒と同じ目線で付き合えて、しかも尊敬される先生になるかな?
尊敬、といってもちょっと違う尊敬だけど。

221 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/22 08:33 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-24b(S.25)

●1月1日 晴れ
今年はいよいよ受験の年。
試験に受かるように、今年はみんなで初詣にいくことに。
みんなそれぞれの服装だけど、ちよちゃんはお正月らしく振袖。
ちよちゃんは元々中学生だし、背が小さい方だから、七五三みたいでとてもかわいい……。
私にもちよちゃんみたいなかわいい妹がいたらいいのになぁ。
デジタルカメラ、持ってくればよかった。

みんなで行った神社は近所でも結構有名なところだったので、初詣にくる人で大混雑。
六人みんなで行動するのはむずかしい。
ちよちゃんとか他人に押されて迷子になっちゃうかも、と思っていたら滝野さんが
迷ったら私のところに集合するように、とみんなに。
確かに私、背が高くて目立つから、集合場所の目印になるかもしれないけど。
ちょっと複雑。でも昔みたいにいやな気持ちにはならなかった。

みんなで神様にお祈りしたあと、おみくじをひくことにした。運試し、ってところかな。
私は中吉。神楽と同じ。「願い事、努力すれば叶う」と書いてあった。
受験、合格できるよう、もっともっとがんばろう。
滝野さんは……「凶」が出てしまった。
水原さんが「はじめて見た」といってたけど、私もはじめて。
滝野さんはものすごくおろおろしていて、なんかちょっと意外なところを見たような気がした。
あんな表情した滝野さんを見るのははじめて。
いつも元気いっぱいな滝野さんでも、やっぱり受験のことだから、気にしちゃうんだろうな。
水原さんがいつものようにつっこみをしてたけど、きっと後でフォローする、と思う。
二人ってそういう仲だもの。最近ちょっと水原さんの態度が冷たいような気もするけど。
(続く)

222 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/22 08:34 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-24c(S.25)

(続き)
帰りがけに谷崎先生、黒沢先生と会った。先生たちも初詣に行くつもりらしかった。
私たちが「受験がうまくいきますように祈ってきた」と説明したら、
谷崎先生がショックなことを教えてくれた。あの神社の神主のお子さんが受験に落ちたそうだ。
ということは……あんまり効果がない?
その話しを聞いたとたん、それまで「凶」のショックで落ち込んでいた滝野さんが、
絶叫しながらおみくじをびりびりに破いてしまった。
気持ち、分かるような気もする。

223 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/22 08:35 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-24d(S.25)

●1月△日 晴れときどき曇り
今日はセンター試験一日目。
センター試験の結果が悪いと、公立大学や私立大学の一部で、受験そのものができなくなる。
基礎知識を調べるためということで、昔は共通一次試験ともいわれていたみたいだけど、
勉強する範囲が広くなるのでちょっと大変。

会場の前で時間前にみんなで集まっていたら、大阪さんが考えた割りばしのおまじないの
代わりにと、ちよちゃんが自作のおまもりを渡してくれた。
初詣にいった神社のおまもりじゃ心配だ、ということなのだろう。
おまもりをもらうときにちよちゃんの指が目にとまる。何か所もバンソウコウが。
ちよちゃんにも苦手なものがあるんだ、とちょっとびっくりしたけど、
それよりも指にケガしてまで私たちのためにおまもりを作ってくれたちよちゃんの気持ちが
とってもうれしくなった。
ちよちゃんはあんな小さいのに、こんなにも私たちに気をつかってくれる。
がんばらなくちゃ。

おまもりのおかげで、試験一日目は無事終了。
ケアレスミスもなかったし、分からなかったところもいくつかあったけど、
とりあえず埋められるところは全部埋めた。
大丈夫、きっと。


224 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/22 08:35 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-24e(S.25)

●1月△日 曇り
今日もちよちゃんの家で勉強会。
大阪さんが時々いねむりしてるけど、みんな学校での授業以上に勉強してる。
あと一ヶ月もがんばれば、きっとみんな素敵な大学生になれる。
私はそう思ってるし、みんなもそうだと思う。
みんなががんばっているから、だからこそ、つらいけど、がんばれるんだ。
マヤーがそばで猫じゃらしをつついていたりして、時々誘惑に負けちゃうけど。

ちよちゃんの家での勉強会の楽しみのひとつは三時のおやつ。今日のおやつはミルフィーユ。
忠吉さんがほしがっていたけど、甘いものはあげたらいけない、という。
うちに帰ってから調べてみたら、本当にそうだった。
獣医を目指しているのに、勉強不足だな、私。
大学生になったら、一生懸命動物のことを勉強しよう。
かわいいとかだけじゃなくて、動物たちのことを考えなくちゃいけないんだ。

勉強といえば、初詣の時も今日も、水原さんは糖分が頭の活性化に役立つと言っていた。
滝野さんが色々からかっていたけど、そういえば昔から食べ物のことにはとても詳しい。
栄養士を目指しているのかな? 水原さんならきっと良い栄養士さんになれると思うな。
でもおいしいものにかこまれて、大変かも。

ちよちゃんが言ってたけど、受験勉強で頭のスミにおいやられていた感じもあったけど、
もうすぐ私たちも卒業。
高校時代の三年間は、中学時代や小学校時代の何倍も楽しくて、いろんな思い出が
心に残っている気がする。
おそらく、一生ずっとの友達もたくさんできた。
でも。卒業したらみんな別々の大学にいって、別々の道を歩むことになる。
ちよちゃんはアメリカに留学にいってしまって、日本にすらいなくなる。
みんなずっと友達だし、電話や電子メールでお話もできるし、会おうとすれば
いつでもあえるけど、それでもちょっとさみしいな。

225 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/22 08:36 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-24f(S.25)

●1月◎日 晴れ
受験勉強も終盤。
クラスでもそろそろ本命校の試験結果が発表されて、ほっとしている人があちこちに見られる。
でもまだ試験の人もいるので、クラスの中は何かちょっと複雑な空気が流れてる気がする。
もっとも滝野さんは相変わらずだけど。

私も今日、保険として受けていた大学に合格した。
終わってみたらなんかあっけなかったけど、合格しちゃうとこんなものなのかな、とも思った。
でも本命の大学の発表はまだ。こちらが受からないと、一人暮しは難しい。
もう試験は終わっているのでどうにもできないけど、受かるといいな。

学校はもう午前中でおしまいという日が続いているので、
最近はみんな午後はちよちゃんの家に集まるのが日課になっている。
ちよちゃんも忠吉さんもうれしそうだし、マヤーもよろこんでくれている。
神楽も本命の体育系の大学に合格。
「本当に体育の先生になるかなー」と、てれ隠しに言っていた。
私の合格のことを話したら、神楽は私に抱きついて、大声で何度もおめでとう、といって喜んでくれた。
女の子同士でだきつくのはちょっと変な気もしたけど、
だけどこれだけ私の試験のことを心配してくれてたなんて、うれしくなった。
(続く)

226 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/22 08:45 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-24g(S.25)

(続き)
大阪さんと滝野さんは、本命もすべり止めも同じ大学を受けていた。
将来何になるのかはっきりとした考えが決まらないので、まずは大学に入って、
それから二人で考えてみる、という。そういう考えもありかな。
二人とも教育学部を受けているので、もしかしたら将来は、うちの高校に
ぼんくらーずのメンバーが全員先生になって帰ってくる、ということもあるかもしれない、
と滝野さんは冗談っぽく言っていた。
案外、冗談じゃないかもしれない。
でも二人とも、すべり止めの方の大学は落ちていた。
ちよちゃんは「本命の大学には絶対受かる、命かける」と力説してた。
ちよちゃんらしいし気持ちは分かるけど、……うーん。


227 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/02/22 08:47 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-24h(S.25)

●2月□日 晴れ
本命の大学の試験結果発表。心配だし、一人だともし落ちてたらどうしよう、と考えていたら、
私の不安な顔を見て神楽が
「試験結果一緒に見にいってやろうか? 私はもう受験終わったし」と手を差し伸べてくれた。
落ちてたら泣いちゃうかもしれないけど、神楽が一緒なら大丈夫。きっと。

貼り出された合格者一覧の中から自分の番号を探して……、三度確認したけど、
ちゃんと自分の番号があった。よかった!
自信はあったけど、それでもやっぱり不安だったもの。
神楽は大喜びしたあと、「早くちよちゃんたちに伝えなきゃ!」と自分の携帯を私に
差し出してくれた。
私も携帯は持っているんだけど、気持ちに甘えて受けとり、ちよちゃんの家にいた
ちよちゃんたちに報告。
電話の向こうでも万歳の声が繰り返し聞こえた。うれしいなぁ。
これでマヤーと暮らせる。

でも、今日は悲しいこともあった。
私が本命校に受かり、神楽、大阪さん、滝野さんもそれぞれ本命の大学に合格。
ちよちゃんはアメリカ留学が決まるなど、進路はほぼ決定。
だけど水原さんだけがまだ決まってない。
今日、すべり止めの大学の、二校目の結果通知が来て、落ちてしまったのだという。
本命の大学の試験はもうちょっと後だけど、試験結果を聞いた水原さんは、
ちょっとパニックになってしまったと、ついさっきちよちゃんからあった電話で聞いた。
水原さん、大丈夫かな。
ちよちゃんの話だと、滝野さんがあとでフォローを入れるとかいっていたけど、少し心配。

水原さんも本命の大学に受かって、みんなで仲良く卒業できたらいいのに。
今の私には何ができるのだろう。

250 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/03/01 16:37 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-25a(S.26)

●3月□日 快晴
今日は卒業式。楽しかった高校生活も今日でおしまい。
朝、登校の時にかみ猫に会ったけど、引っ越したら会えないことを考えると
かまれたこともいい思い出かな、と思ってしまった。
なでられるのが嫌いだったのかもしれないし、もしそうだとしたら、あの子からすれば
無理やりなでようとしていると思っていたのかもしれない。
自己満足かもしれないけど、あの子に謝ってみたら、なんとなく分かってくれたみたい。
最後にやっぱりかまれたけど、これもあの子にしてみたらあいさつなのかも。
でも引越ししたら、あの子とも会えなくなるんだな。

何度も練習はしたんだけど、卒業式はやっぱり緊張した。
中学の時は「卒業出来てよかった」という思いしかなかったけど、
今日の卒業式は「もう少し後ならいいのに」と思ったり。
卒業式が終わったら、もう高校生じゃなくなる。
分かってはいるけど、なんか残念。

今年一番優秀な成績の人にもらえる金蘭賞はちよちゃんに。
やっぱりすごいな。本当は立たなくてもいいのに、滝野さんが立って大拍手。
みんなもつられて、立って拍手かっさい。
滝野さんっていつもちよちゃんをからかったりしてたけど、いやがらせじゃなくて
やっぱり滝野さんなりの愛情表現、ということなんだろうな。
水原さんとのやりとりを見ていても、そんな感じがする。
ちよちゃんからすれば私たちはみんな「お姉さん」の年の人なわけで、
前に紹介してもらったみるちーさんやゆかさんたちみたいに付き合える人が
一人くらい高校にもいないと、ちよちゃんとしても息苦しかったに違いない。
滝野さんは一言もいっていないけど、そこまで考えていたのかな。
(続く)


251 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/03/01 16:37 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-25b(S.26)
(続き)
谷崎先生は最後まで谷崎先生らしくて、みんなの卒業でがっくりしていたと思ったら
財布を落して、だった。
黒沢先生が届けてくれたので、一安心というところだったけど。
でも……本当にそうだったのかな。
谷崎先生って何気にすごいところがあるから、本当は単なるてれ隠しだったのかもしれない。
夏の旅行も「気が向いたら」といってたけど約束したので、
今度の旅行の時に聞いてみようかな。でもきっと答えないと思うけど。

色々なことがあったけど、今日で高校生の私はおしまい。
本当にいろんなことがあって、楽しい三年間だった。
ありがとう、ほんとうにありがとう。


252 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/03/01 16:38 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-25c(S.26)

●3月△日 晴れ

水原さんの本命大学の結果発表とその後の卒業旅行(マジカルランド★)までまだ日があるので、
ここ数日は大学に入学してからの下宿先を探している。
学校の寮があれば一番なんだけど、うちの大学にはないみたい。
マヤーのことも考えるともちろんペット可なところじゃなくちゃいけないし、
防犯のこととか近所の環境とか、色々考えなくちゃならないことがいっぱい。
今日は神楽と、住宅情報誌とかで調べた物件や、大学周辺の不動産屋さんを探しまわった。

夕方に尋ねた不動産屋さんで見つけた物件はなかなかよいところだった。
3階の1DKのだけど8畳で押し入れもあるし、ダイニング部分も広めだし、お風呂とトイレは別。
内装もきれいだし、何より女性専用でオートロックと管理人常駐のところがいい。
もちろんペットも可。
周囲の環境も悪くない。大学はもちろん、コンビニも近くにある。
少々家賃が高めだけど、アルバイトをがんばれば何とかなると思う。
神楽も「へぇ、うちの部屋よりきれいじゃん」とか感心していた。
数日まわった中でここが一番条件が良くて、これ以上はないかな、という直感もあったので
不動産屋さんに手付金を払って仮契約。
もちろん後で保証人とかお母さんにお願いしなきゃならないけど。

帰りがけに神楽がちょっとだけ頬を赤らめて、しばらく下を向いてから、
「勉強で忙しくなるかもしれないけど……たまに遊びにいっていいか?」
と、恥ずかしげに尋ねてきたので、もちろんたまにじゃなくてもいいよと答えた。
距離的にもそんなに遠くもないし。
でも……神楽もやっぱりさみしいのかな。
うちの高校から神楽の大学に行くのは、うちのクラスでは神楽一人だもん。
だけど、ああいう仕草って、男の子にしてみれば「女の子らしい」という感じだから、
大学に入ったらきっと彼氏も出来るだろうし、心配もあんまりいらないと思うな。
(続く)

253 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/03/01 16:39 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-25d(S.26)

(続き)
家に戻ってみると、部屋に段ボール箱がいくつか積んであった。
お母さんに聞いてみたら、大学の合格祝いのパソコンだという。はじめて聞いた!
そういえばちょっと前に
「デジカメの画像をチェックしたりインターネットをしたいなぁ、アルバイトして買うんだ」
と言ったら、どんな機種がいいの、って聞いてたっけ。
引越しのことも考えて、ノートパソコンを選んでくれたのもお母さんらしい。

夕食の時にパソコンのお礼のこと、今日神楽と見てきた下宿先のこと、そして保証人のことを話した。
そしたらお母さんがタンスから一冊の郵便貯金通帳と判子を持って来てくれた。
名義人の名前は私になっていた。
そういえば私、郵便貯金は使ってなかったな。
前々からお母さんが銀行の口座を開いていてくれたし、必要もなかったんだけど。
お母さんは私が小さい時から、コツコツと私のためにお金を貯めてきてくれたのだという。
小学校の時に「お年玉で大きな額とかはお母さんが貯金しておいてあげますからね」
と言っていたお金はもちろん、その他にも少しずつお金を入れてきたらしい。

中には定額貯金の分もあって、利子も含めるとすごい金額になっていた。
お母さんは、これは私が一人立ちする時のために貯めておいたお金で、
全部私が使っていいけど、必要な時に必要なだけ使いなさい、と言ってくれた。
更新分も含めると数冊の郵便貯金通帳。
中の振りこみの履歴を見ていると、私が小さいときからのお母さんの思いが
通帳に詰まっているようで、思わずぼろぼろ涙を流しながら泣いてしまった。
だめだな、私。涙もろくって。

一人暮しをはじめても、毎週お母さんには電話をするし、月一で家には戻るようにしよう。
どちらにしても月一で、石原先生のところにマヤーの診断をしてもらわなくちゃいけないし。


254 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/03/01 16:40 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-25e(S.26)

●3月◎日 晴れ
今日は水原さんの本命大学の結果発表日、そして卒業旅行のマジカルランドへ行く日。
自分のことではないけれど、やっぱりとても心配だった。
滝野さんが冗談で「番号がなかった」と言って水原さんが半泣きしながら番号発表の掲示板に向かったあと、
滝野さんがちょっと慌てたような、しょんぼりしているような、困ったような表情を
一瞬だけ見せていたのが私には分かった。
あとから考えてみれば、水原さんの受験番号は知らないのだから、滝野さんが番号のあるなしを
知ってるわけがない。
滝野さんならではの、場を和ませる冗談だったんだろうけど、水原さんの対応に
あとでちょっと戸惑っていた、んだと思う。
これで本当に落ちていたのなら冗談にならなかったけど、水原さんは見事合格。
よかった……。本当に。

マジカルランドでは、みんな心から楽しむことができた。
高校三年間分をまとめて遊びまくった感じ。
やっぱりジェットコースターはちょっぴり怖かったけど。

マジカルランドを出たあと、まだ時間があったので、とりあえず三鷹駅まで戻ってから、夕食も兼ねて近くのレストランでみんなでお食事。
その後、井の頭公園でぶらぶらとお散歩。
色々今日のこととか、これからのこととか話しているうちに、長いすに座っていた神楽が
「これからも……みんな一緒だよな、別々の学校に行っても」
と言いながら半泣きになってしまった。
先日の下宿先でのこともあるけど、やっぱり神楽は大学に行ってからのことが不安みたい。
いつもはすぐにフォローをする役目のちよちゃんも、下を向いたまま。
よく見ると、ちよちゃんも肩をふるわせていた。
(続く)


255 名前:R.F. ◆uekdll3sCM 投稿日:03/03/01 16:41 ID:???
■Diary of Miss Sakaki(From TV Version)-25f(S.26)
(続き)
そうだ、ちよちゃんはもうすぐアメリカに留学しちゃう。
ちよちゃんには電子メールとかでお話出来るけど、私と神楽みたいに、
ふらりと遊びに行くってこともできない。
一番つらいのはちよちゃんなのかもしれない。
私はちよちゃんの代わりに、神楽に「そうだ、みんな一緒だよ」と肩を叩いたあと、
しゃがんでちよちゃんの顔を下からのぞきこむようにして、
「いなくなっちゃうってわけではないよ。ずっとずっと一緒だし、友達だよ」
と言い、ちよちゃんをだきしめてあげた。

ちよちゃんは私の胸の中で、私の名前を呼びつづけながら、わんわん泣き出した。
仕方ないよ、ね。本当ならまだ中学生なんだもん。
それに、悲しい気持ちは中学生とか高校生とか関係ないもの。
そしてちよちゃんの泣き声が合図になったかのように、神楽も大阪さんも泣き出した。
滝野さんは水原さんの胸にもたれかかるようにして泣いている。
水原さんは滝野さんの頭をなででいるけど、やっぱり泣いているようだった。

はたから見ればおかしな情景だったかもしれないけど、私たちはしばらく泣きつづけた。
三年分の、そしてこれからの分まで涙を流し切るかのように。

涙は今日でおしまい。
明日からは今日までの高校時代の思い出をしっかりと心にきざみ、
みんなに笑われないような大学生になるよう、がんばっていこうと思っている。

高校時代の日記も今日でおしまいにしよう。
明日からは気持ちを切りかえて、新しいノートに日記を書くことにしよう。
あ、でもパソコンの練習ということで、パソコンに書くのもいいかな。

〜「榊さんの日記」(テレビ版から)……終わり〜2003.3.1.