823 名前:メロン名無しさん 投稿日:02/12/23 05:19 ID:???
ある夏の日の午後 1

今日の体育授業はバレーボールだった――

トスが出て、ボールが空中に舞い上がる。
敵味方を区分けするネットの間近に構えていた長身の少女が、流れるような漆黒の
長髪を翻しながら高く跳躍し、豹のようなしなやかな動作でスパイクを打ち込む。
鋭い打撃音と共に白球は全てのプレーヤーの視界から消え、一瞬後には地面に
叩きつけられていた。

「はぁ」
10mほど離れているコート脇から、華麗な動作にみとれていたセミロングの少女は、
小さな溜息を漏らした。
「あの人 榊さんやったっけ? かっこええなぁー 」
そして、同一の対象を真剣な表情で見つめているショートヘアの少女に正直な感想を
投げかける。

「あ! そうでしょ!? かっこいいでしょ!? 」
その少女は、わが意を得たとばかりに、激しく同意の声をあげる。
どうやら彼女は榊という名のクラスメートに、単純な好意以上のものをもっている
らしい。
彼女の言葉を聞き流しながら、大阪と呼ばれる少女の大きな瞳は、活躍を続ける
コート上の少女を無意識に追いかけ続けている。

(そやっ )
その時、一つの決意が大阪の脳裏に閃いた。
「よし! 私もあの人を狙お――!」
右の拳を固く握り締め、隣の少女に向かって高らかに宣言した。


824 名前:メロン名無しさん 投稿日:02/12/23 05:23 ID:???
「え!? 」
かおりんと呼ばれる少女にとって、大阪の言葉は衝撃的であった。
「狙うってちょっとあんたねえ! 」
動揺で声を裏返しながら、反発の声をあげる。

(あっしもた…… )
大阪には、思ったことをそのまま口に出してしまう癖があったが、今回もそれが
顔を出してしまったようだ。彼女は慌てて否定の言葉を口にする。
「私もあんなかっこええ女になるんをめざすんやー 」

「あ あ―― 狙うって そ そう」
多少不自然な言い訳だったが、どうやら納得してくれたようだ。

(あかんやん、こんなとこで警戒されてもうたら、何もできへんくなるでー )
大阪は安堵の溜息をつきながら、自分の軽率な発言を反省した。
「でもあんたには無理だわ 」
隣の少女が発した容赦のない言葉は、既に大阪の耳には届いていなかった。


825 名前:メロン名無しさん 投稿日:02/12/23 05:25 ID:???
「はあ―― 」
学校が終わり、帰路をゆっくりと歩いている榊は、深い溜息をついた。

(今日も猫さんに逃げられた…… )
無類の猫好きであるこの少女は、自分が猫に嫌われていることを再確認して、
深い溜息をついた。
(私が近づいても逃げたり、噛んだりしない猫さんはいないのかな…… )
7月の眩しすぎる太陽とは対照的に、ひどく憂鬱な気分に覆われ、
再び溜息をつく。

「にゃあ、にゃあ」
その時、道路脇の小路に可愛らしい猫の鳴き声が聞こえてきた。
榊は吸いこまれるように、声がする方に向かって歩いていく。

そこには、猫耳と尻尾をつけた大阪が、ダンボール箱に座っていた。

829 名前:メロン名無しさん 投稿日:02/12/24 00:18 ID:???
初回は、>>823-825
ある夏の日の午後2

「何をしている…… 」
榊は、平凡な住宅街に展開されている、非日常的な情景に驚きの声をあげた。
目の前にいる少女が自分と同じクラスメートであることは知っていた。しかし、
名前は――

(あっ)
榊は、クラスの皆から大阪と呼ばれていることを思い出した。しかし、彼女の
本名はどうしても脳裏に浮かんでこない。
「榊さんやろ 」
「う、うん」
自分の名前を呼ばれた少女は、動揺の声を抑えながら返事をした。

「私をひろってくれるん? 」
猫耳をつけた少女は、上目遣いにして長身の少女の鋭い瞳を覗き込んだ。


830 名前:メロン名無しさん 投稿日:02/12/24 00:21 ID:???
(かわいい…… )
猫に限らず、世間が『かわいい』と思うようなものは、榊にとっては全てが好意を
抱く対象であった。
彼女は自分が大柄で、かつ喜怒哀楽の表情が乏しいことを知っていた。つまり、
自分がかわいらしくない存在だと思いこんでおり、それが、全てのかわいらしい
ものに対する憧れを一層強くしていた。
今、榊の眼下に座りこんで自分を見上げている少女も、彼女にとって『かわいい』
ものには違いがなかった。

「いいよ」
数十秒の沈黙の後、長髪の少女は小さく呟いた。

「えっ本当? 」
肯定の返事を耳にした大阪は、幼さを残した顔に満面の笑みを浮かべる。
「ほんならや〜 家に招待するで〜 」
明るい声をあげながら、大阪は腰を上げる。
「う……うん 」
榊は少し顔をあからめながらも、視線を彼女の姿からは外さなかった。

腰まで届く流れるような黒髪を持つ少女と、それより頭一つ半くらい低い、猫耳と
尻尾をつけたセミロングの少女は、通学路を並んで歩いていく。
ときおりすれ違っていく通行人は、驚愕の表情を浮かべながら、彼女達の後姿を
見送っていた。

837 名前:メロン名無しさん 投稿日:02/12/28 04:25 ID:???
ある夏の日の午後 3

「ここやー 」
大阪は、自分の家を指し示した。
クリーム色の壁はまだ新しく、建築されてからさほど年月が経ってはいないことが
うかがえる。

「よいしょ」
軽く呟いた大阪が、やや大きめの門扉を開けると、微かな金属音が二人の少女の
耳朶をゆらした。

「遠慮せんと、入ってや〜 」
ドアの鍵を開けて中に入った大阪は、可愛らしい声を投げかけた。
「おじゃまします…… 」
榊は小さく頭を下げながら、玄関先で靴を脱いだ。
高校のクラスメートの部屋に入ることは今日が初めてであり、少しばかりの緊張が
彼女の胸をよぎる。
しかし、どうやら大阪の両親は共働きのようで、彼女に挨拶に対しての返答はなかった。

「こっちや〜 」
榊は大阪に促されるままに二階へあがると、「あゆむのへや」と書かれた、小さな
マスコットがぶら下げてある扉が視界に入る。

「ここが私の部屋やねん 」
「ああ…… 」
「ちょっと待っててや〜、お茶もってくるねんで 」
「ありがとう」
大阪は榊に声を掛けると、階段をゆっくりとおりていった。


838 名前:メロン名無しさん 投稿日:02/12/28 04:28 ID:???
六畳ほどの部屋には、薄い桃色のカーペットが敷き詰められており、中央には
毛布を取られたコタツ用の机が置かれている。
窓際には勉強用の机があり、その横にはやや大きめのベッドが備え付けられている。
何気なくあたりを見渡していた榊の視線が、ふいに一点に固定された。
そこには可愛らしい仔猫のぬいぐるみが、つぶらな瞳を彼女に向けていた。

「ん、榊さんって、ぬいぐるみが好きなんか? 」
再び二階に上がってきた大阪は、榊の視線の先にあるものに気がついて問い掛けた。
そして緑茶の入ったグラスを載せたまま、危なっかしい足取りで、彼女に近づいてくる。

「う、うん、少し…… 」
榊は少し顔を赤らめながら頷く。
「このぬいぐるみは、えっと、カツラノハイセイコってゆーんや。
どや? かわいい名前やろ 」
「…… 」
大阪の命名センスに同意できなかった榊は、小さく首を横に振った。


839 名前:メロン名無しさん 投稿日:02/12/28 04:30 ID:???
「あっ! 」
その直後、彼女の反応に気をとられていた大阪は、カーペットの床に置かれていた
漫画本を、まともに踏んでしまう。
足を滑らせた大阪は、榊に向かってゆっくりと倒れこんでいく。
緑の液体が入った二つのグラスも床に落ち、鈍い音があたりに響いた。

「あいた〜 」
悲鳴をあげた大阪は顔をしかめる。
「だ、だいじょうぶか 」
慌てた榊は、転倒した少女に駆け寄って、声をかけた。
二人の距離は指呼の間にまで迫っている。

「……? 」
数瞬の沈黙の後、大阪はむしゃぶりつくように長身の少女に抱きついた。
そして、呆然としている榊の反応に構わずに、彼女の唇と自分のそれを重ね合わせた。


862 名前:メロン名無しさん 投稿日:03/01/01 14:07 ID:???
前回>>837-839
ある夏の日の午後 4

「んんっ…… 」
榊は、大阪の信じられない行為に驚愕して、慌てて首を大きく振って彼女の唇を
引き離す。二人の視線は10cm程の至近距離で交錯している。
「どうして…… 」
榊は呆然として、大阪の瞳を見つめ続けたまま小さく呟いた。

「榊さんがすきなんや…… あかん? 」
大阪は、切なさを醸し出した表情を浮かべて、長身の少女の瞳を見つめている。
榊は、彼女のあどけない表情と、瞳の端に溜まり始めた涙、そして、頭につけたままの
猫耳に気がついたとき、自分を懸命に好きになってくれる彼女が、堪らなく愛しい
存在に思えてきた。

「いいよ…… 」
榊は優しげな微笑を浮かべると、両手を大阪の肩にそっとのせた。
大阪は、羞恥で顔を赤らめながら大きな瞳をゆっくりと閉じた。鼓動が速まり、緊張で
体全体が細かく震えている。
置時計が無機質な音を刻んでいる中、二人の少女の影が再び重なり合った。

「ん……んんっ―― 」
まず大阪は、柔らかく、弾力のある、榊の唇の感触を十分に確かめる。
それから、短い舌を唇の隙間に割りこませて、口腔内への侵入を開始した。
「んぐぅ!! 」
口内の奥深くまで、舌を挿入されてしまった榊は、悲鳴まじりのくぐもった声を
あげた。
しかし、大阪は彼女の悲鳴に全く構うことなく、短い舌を、榊のそれに絡み付かせて、
ざらざらとした感触を堪能する。
さらに大阪は、絶え間のない刺激によって、榊の口内に溢れ出してくる唾液を、音を
たてながら吸いとっていく。


863 名前:メロン名無しさん 投稿日:03/01/01 14:10 ID:???
数分後――
榊の中を存分に味わい尽くした大阪は、奥深くまで侵入させた舌を、彼女の口内から
引き離した。一本の細い唾液の糸が二人の間に生まれて伸び、そして途切れた。
「はぁっ……はぁ…… 」
榊は、執拗な愛撫から一時的に開放されて、荒い溜息をつく。

(なんで? )
彼女は一見、とても大人しそうな少女が見せる激しい行為に愕然としている。
「榊さん、いくで」
しかし、大阪は、頬を桜色に染めながら容赦のない声をあげると、榊に抱きついたまま
ベッドの上に倒れこんでいく。スカートの裾を乱しながら、二人の少女の身体は
交錯した。
そして、上から覆い被さるような形になった大阪は、深い青色をした榊の夏服を
両手で掴み、たくしあげた。

「うわ〜 ええな〜 」
大阪の視界には、純白の下着と、それで覆いつくすこと不可能である、巨大で、かつ
張りのある二つのふくらみが、飛びこんでいる。
「これは犯罪やで…… 」
溜息まじりの声をあげた大阪は、うつむきながら自分の胸元を覗き込む。
しかし、そのような行為は、長身の少女との落差に自分自身を絶望に追いこむだけで
あった。
大阪は、強烈な負の感情に襲われた。そして、彼女の心に、『持てる者』である榊に
対する、嫉妬心と虐逆心を産み出してしまった。


864 名前:メロン名無しさん 投稿日:03/01/01 14:11 ID:???
「見ないで…… 」
自分のふくらみを凝視された榊は、羞恥のあまり、顔を真っ赤にして拒絶の声をあげる。
「なにゆ〜てんの。こんな大きいもん、ひとに見せな損やで」
他のクラスメートや担任の教師が聞いたら、唖然とするような言葉を吐き出しながら、
大阪は、榊の下着の中に掌をもぐりこませた。滑らかな肌の感触が、彼女の指先の神経に
伝わってくる。
それから、大阪の指先は、ゆっくりと双丘の全体を慈しむように撫で回していく。

「あっ…… 」
榊は、小さな悲鳴をあげた。そして、自分の火照った表情を見られたくないのか、
両手で顔を覆い隠した。
しかし、大阪は情欲という衝動に身をまかせてしまっており、彼女の指先から
絶え間なく産み出される、甘く切ない刺激を無視することは不可能だった。
榊は、顔にかざした指の隙間から見える大阪の愛撫を、食い入るようにして
見つめている。

「あれっ? これはなんやろう♪ 」
榊の柔らかい胸の感触を楽しんでいた大阪は、下着の下に隠されていたふくらみの
頂上にある突起を外気に晒すと、指先で軽くつまんだ。
「ひゃん」
榊は裏返った声をあげて、大きな体をよじらせた。


865 名前:メロン名無しさん 投稿日:03/01/01 14:13 ID:???
「榊さん、ここ弱いんやな…… 」
大阪は、たくらむような微笑を浮かべると、愛らしい顔を豊かな胸のふくらみに近づけた。
そして、短い舌をのばして先端を刺激する。
「ん……んあっ!! 」
榊は大きな悲鳴をあげて、身体を反らした。
そして、自分の顔を覆っていた両手を、大阪の背中に回して制服の裾を鷲づかみにする。

「ちゅぷ……ちゅぷ…… 」
猫耳をつけた大阪は、何かに憑かれたような表情を浮かべながら、口にふくんだ、
榊の胸の先端を吸いつづけた。
「んっ……くふぅ…… 」
榊は、荒い呼吸を続けながら、押し寄せる快感の波に必死に耐えていた。
しかし、大阪の執拗な攻めは少しも緩むことがなく、彼女の抵抗も限界に近づいていた。
呼吸の間隔がだんだん短くなり……
「んんっ!! 」
榊は、ひときわ大きな悲鳴をあげ、体を細かく痙攣させた。
めくるめく強烈な刺激が、彼女の全ての神経を激しく掻き乱した。

「ふぅ―― 」
絶頂の頂きを越えた榊は、大きな溜息をつくと、全身から吹き出す汗でぐっしょりと
濡れてしまった白いシーツに、深く身体を沈みこませた。
そして、潮が引くように収まりつつある快感の余韻に体を浸していった。

949 名前:メロン名無しさん 投稿日:03/01/19 14:26 ID:???
前々回>>837-839、前回>>862-865
ある夏の日の午後 5

強烈な日差しも夕刻になると、随分と柔らかくなっており、室内に差しこむ陽光の
色素も、山吹色に変化している。
しかし、部屋に取り付けられてあるエアコンは依然としてフル回転を続け、規則的な
重低音を奏でながら、涼風を二人に送り出している。

「ふう〜 」
仰向けに寝転がっている長髪の少女は、天井にある蛍光灯を眺めながら
深い溜息をついた。高ぶっていた気持ちが、ゆるやかに落ち着きを取り戻していく。
この時、微かな吐息の音が、自分の鼓膜を揺さぶっていることに、榊は気がついた。
カーペットに寝転んだまま、ゆっくりと首を回すと、肩まで伸ばした黒髪を
乱している華奢な少女が、玉のような汗を額に浮かべて、荒い呼吸を繰り返している
様子が目に入った。
榊は、暫くは彼女の表情を眺めていたが、やがて、触れ合っていた小指の先を、
なぞるように動かし始めた。

「ん…… 」
ざらざらとした感触を覚えて、セミロングの少女は小さく呟く。
「ど〜したん、その手? 」
大阪は、バンドエイドが貼られ、噛み傷の跡でささくれ立った榊の指先に、不審と
驚きの声をあげた。


950 名前:メロン名無しさん 投稿日:03/01/19 14:28 ID:???
榊は、しばらく逡巡していたが、やがて、相手に辛うじて届くような小さな声を
絞り出した。
「猫にかまれたんだ…… 」
「襲われたん? 」
可愛らしい猫の襲撃を受ける大柄な少女、という構図に違和感を感じて、
大阪は、不思議そうな表情をあどけない顔にあらわす。
「いや…… なでようとすると、噛まれてしまうんだ…… 」
榊は、猫耳をつけた少女の瞳を哀しそうに見つめながら、自分の掌につけられた
傷の経緯を話し出した。

「そ〜なんか〜 」
彼女の報われない話を聞いていた大阪の双眸は、いつのまにか真剣味を
帯びてきている。
「ほならや〜 私が猫さんになるのはどやろ? 」
「えっ? 」
榊は息をのみ、大きく瞳を見開いた。
「私のこと、ずっと撫でていて欲しいんや 」
大阪は、視線を逸らすことなく彼女を見つめつづけている。

「ああ…… 」
暫しの時が刻まれた後、榊は不器用な微笑を浮かべた。
そして、傷だらけの右手をゆっくりと、黒髪で覆われた小さな頭部に近づけていく。
「へへ〜 大丈夫でした」
頂上に温かい感触を感じた大阪は、いたずらっ子のような声を出して笑った。
それにつられたのか、榊の笑顔も曇りのないものに変わっていく。
そして、寄り添うように近づいた二人は、もう一度だけ唇を触れ合わせた。


951 名前:メロン名無しさん 投稿日:03/01/19 14:30 ID:???
翌日、体育館にて――

ボールを奪った長身の少女が、相手陣内に向かって鋭く切り込んでいく。
軽快なドリブル音を木板が貼られた床に刻みながら、立ち塞がるディフェンスを
鮮やかにかわし、豹を思わせるしなやかな動作で跳躍する。
着地した少女が振りかえると、正確にゴールポストに吸いこまれたボールが
コート上に弾んで、あたりに軽やかな音を響かせていた。

「榊さん、かっこいいー 」
得点ボードに2点を加えながら、おかっぱ頭の少女は歓声をあげる。
「そやろ、かっこええやろ」
隣で見物していた少女も、頷きながら同意する。
「私、あの人狙おっかな…… 」
かおりんは、溜息混じりに呟き、そして、隣に佇んでいる大阪の存在に気がついて、
慌てて口に手をあてた。
「そ、そんなんじゃないわよ」
顔を真っ赤にして、慌てて否定の言葉を紡ぎ出す。
「へへ〜 」
しかし大阪は、得意そうな笑顔を浮かべるだけだった。そして、心の中で
そっと呟いた。
(榊さんの『猫』は私だけやで〜 )

(終わり)