483 名前:榊さんのシリアスなSS書きます 投稿日:02/10/10 03:28 ID:???
「生物災害」  1 二人の新人

日本最大手の製薬会社「大森製薬」
表向きはユニークな商品名が特徴の家庭用医薬品を製造している
ごく普通の製薬会社なのだが、裏では軍事用の生物兵器を開発している
恐ろしい会社である・・・

そんな製薬会社の研究所に新人の獣医がやってきた
若くて長身の寡黙な女性で名を「榊」という・・・
彼女は研究所内の実験動物の衛生管理や疾病の治療を行う
部署に配属された

同じ日、もう一人の新人がこの研究所にやってきた
某大学で応用動物学(※1)を専攻していたこの男は
首席で卒業した後すぐにこの研究所への就職が決まったのだ
名を「野村」という

たまたま同じ日に同じ研究所にやってきた
最初はたったそれだけの繋がりだったのだが
後に起こる大事件の際に二人は深く関係する事になる・・・

484 名前:榊さんのシリアスなSS書きます 投稿日:02/10/10 04:23 ID:???
「生物災害」  2 見てはいけなかった物

研究所に来て10日目の深夜・・・・・・
残業の為に研究所に残っている榊は仕事の息抜きにと
中庭で缶コーヒーを飲みながら
「・・・今日も忙しかった」
「本当は希少動物保護センターに行きたかったのに
私は何故こんな研究所に就職してしまったんだろう・・・」
と、ぼやいている・・・

そんな時、彼女は前方の茂みから「何か」が出てくるのを目撃する
「・・・なんだろう?野良ネコでも迷い込んだのかな?」
と思いながら茂みから飛び出した「何か」に近寄ると・・・



その「何か」が野良猫ではない見た事もないような生き物である事に気付く
大きな口に短い手足に丸い体、両生類の様な肌なのだがカエルにしては大きすぎる
大きさはネコほどの大きさなのだから・・・

そんな生き物を目撃して榊は一瞬戸惑ったのだが・・・
冷静に生き物の様子を観察してみると、その生き物が酷く衰弱している事に気が付く

榊にはその生き物がどういう生き物なのかは分からなかったのだが
優しい性格の彼女は
衰弱している生き物を放っておく事は出来なかった
すぐに自分の仕事場にその生き物を連れて行ったのだった・・・・


(パート1に書く予定でしたが書き忘れますたスマソ)
※1・・・バイオテクノロジーなどを駆使して新種の家畜や実験動物を開発する学問

496 名前:榊さんのシリアスなSS書きます 投稿日:02/10/13 02:23 ID:???
「生物災害」  3 謎の生物の謎を解く!

獣医といえども動物の事を何でも知ってる訳ではない
犬猫専門の獣医師や畜産関係の獣医師は多数いるのだが
小動物の事に詳しい獣医は日本にはそう多くない
ハムスターや金魚や熱帯魚ですら動物病院では診察しない事は珍しくないのだから
爬虫類や両生類などに詳しい獣医となると数も少ない訳なのだ・・・

榊は畜産系の獣医故にこの謎の生物に関しては
どんな生き物なのか検討も付かなかった・・・

数日後、榊はその生き物を衣装ケースに入れてある知人の下を訪ねた
その知人は、大学の同級生の男で今は家業の動物の問屋で働いている男だ
この男なら色々な動物を、それこそ珍種から一般種まで扱っているから
この生き物がなんであるのか分かるかもしれない・・・

榊はそう期待してその男の下を訪ねた・・・

497 名前:榊さんのシリアスなSS書きます 投稿日:02/10/13 02:47 ID:???
「生物災害」  4 謎の生物の謎は深まる・・・

榊「・・・久しぶりだ」
男「おお!榊じゃねえか久しぶりだな!元気してるか?」
榊「・・・元気だ」
男「・・・で、肝心の用事ってなんだい?」
榊「実は・・・数日前に拾ったこの生き物がなんであるのかを知りたいんだ」
そう言うと榊は衣装ケースの中の生き物を見せた・・・すると
男「なんだこりゃ!?こんな生き物は見たことねえ!!新種か?
いや・・・都市部で捕まえたんだそれはないか・・・」
この男なら色々な動物を幅広く知っているから・・・と、榊は期待したが
どうやらこの男でもこれがなんであるのか迷ってるようだ
男「どう見ても両生類であることは間違いないんだが・・・・・・
尻尾がないから多分カエルの仲間だとは思うが・・・・・
こいつのサイズは世界最大のゴライアスガエルよりもでかいぞ・・・
なんだコイツは?本ですら見た事もないぞ?
口のデカさや体形はよく店で売ってるツノガエルっぽいが・・・」

男は色々と考えたがついにこの生物が何であるかは分からなかった
だが大よその検討はついたみたいではあったようだ・・・

498 名前:榊さんのシリアスなSS書きます 投稿日:02/10/13 02:48 ID:???
「生物災害」  5 共同研究

男はこう言った

男「俺がしばらく預かってもいいだろうか?うちならエサになるようなモノも
たくさんあるし。こいつの事をもっと詳しく調べてみたいし
是非預かりたいんだけど、いい?」
男がそう言って来た、それに対して榊はOKの返事を出した
動物の飼育に関してはこの男の方が自分より詳しかったし
この男の方が畜産動物以外の動物を扱う経験も長いから
榊はこの男に任せるのが得策だろうと思ったのだ

榊「・・・じゃあ任せる、何か分かったら連絡をくれ」
男「OK!任せろ!色々生き物を飼って18年・・・
その経験を総動員して頑張ってみる!何か分かったら携帯に連絡を入れとくよ」

そう会話し、榊はその男の下を離れる
あの謎の生物をその男に預けて・・・・・・・・・・・・・

499 名前:榊さんのシリアスなSS書きます 投稿日:02/10/13 03:27 ID:???
「生物災害」  5 旧友

今年の春頃に私と仲間は独自の捜査で大森製薬の悪事を突き止め
それを捜査しようとしたのだが・・・・・
警視庁の上層部より理不尽なストップを掛けられたのだ

・・・・・人々は何も知らないし、警察上層部も奴らとグルだ
あの会社は確かに巨大企業で権力も大きい・・・・
だが!だからと言って私とその仲間は奴らを放ってはおけないのだった・・・
私たちの警察官としてのプライドが悪を放っておく事を許さなかったのだった

こう語る女性は警視庁の捜査官をしている
「滝野 智」である
彼女と仲間は大森製薬の調査を独自に行っているうちに
榊が大森製薬の職員として働いている事を知るのだった
それを知った滝野捜査官は早速旧友の下に向かうのであった

彼女なら、榊なら味方になってくれるであろうと信じて・・・

509 名前:榊さんのシリアスなSS書きます 投稿日:02/10/14 03:57 ID:???
「生物災害」    7 協力要請

智と同僚の中野は榊と会う為にフレンチレストランの個室で待っている
智「くそー!高い個室を自腹で予約したから金が!でもこれも捜査の為か・・・」
中野「まぁまぁ滝野さん、私も出しましたから・・・」
智「・・・上は非協力的だもんなーちきしょー!」

そうこう言ってるうちに榊がやってきた
榊「・・・久しぶりだな」
智「おー!榊ちゃんひさしぶりー!」
榊「・・・その人は彼氏?」
智「ちがうちがう!仕事の同僚だよ〜!今日は私の仕事の関係で榊ちゃんに相談があるんだよ」
榊「仕事の相談?智は警察の関係者だろ?それが私に何の・・・」
最初はくだけたムードだったのが次第に真剣なムードに変わっていく

智「実は・・・」
彼女は大森製薬に関する裏事情や捜査状況、今の状況などを詳しく榊に説明し
自分たちは切羽詰っているので是非とも協力して欲しいと頼んだ
すると・・・

510 名前:榊さんのシリアスなSS書きます 投稿日:02/10/14 04:14 ID:???
「生物災害」    8 榊の反応

榊は突然の現実味のない説明に動揺した、最初は嘘かと思ったが・・・
智は公式な物と思われる資料やファイルも見せてくれたし
とても嘘を付いている様には思えないのだった

榊「・・・わかったよ、そんな事実を知った以上は協力しないとは言えないな」
智「その言葉を期待してた、やっぱり榊ちゃんは昔通りのいい人だね」
榊「私は今まで何も知らなかった、知らされてもいなかった
そんな私だけど本当に何か協力できるか?」
智「うーん、今何をしてくれとは頼めないかな・・・もう少し様子を見る」
中野「良心的な関係者の協力はそれだけでも貴重ですよ滝野さん」
智「それもそーだね」
こうして榊は智に協力することとなった・・・・・

そして・・・・・・・・・・・・・・・・

榊「あ!そういえば・・・」
智「どしたの?」
榊は思い出した、智との話に夢中になっていて今まで忘れていた事を
榊「実は・・・」
彼女は男に預けた謎の生物の事を思い出したのだった
智の話を聞いていて彼女はこう思ったのだ
「あの生物は智の話していた事ときっと何か関係がある」
・・・と

511 名前:榊さんのシリアスなSS書きます 投稿日:02/10/14 04:33 ID:???
「生物災害」  9 謎の生物のその後

榊は謎の生物の事を智と中野に説明した
そして、謎の生物のその後の様子もこう説明した

榊「どうやら乾燥のし過ぎで体調を崩していたようなんだ
体調が元に戻ったらエサのコオロギを沢山食べたとか・・・」
智「ふーん」
中野「で、その後にどうなったんです?今でも生きてるんですか?」
榊「生きてる、先週電話で聞いた時は体長が60cm超えたって言ってた」
智「ずいぶんでかいな」
榊「実は明日またあの男の仕事場に行くことになってるんだ、あいつに会うのは3ヶ月ぶりだ」
智「そうなんだ」
中野「私たちも同行しますか?」
智「そだね、いい榊ちゃん?」
榊「かまわない・・・ただ」
智「ただ?」
榊「なんか慌ててる様子だった、なるべく早くに来てくれって言ってた・・・」

こうして榊と智と中野は明日その男の下を三人で訪ねる事になった
少し不安を感じつつ・・・・・・・・・・

526 名前:榊さんのシリアスなSS書きます 投稿日:02/10/17 06:50 ID:???
「生物災害」      10 再び動物の問屋さん

翌日、榊と智と中野は男の下を訪ねる
男は「何か」に対し慌てた様子ではあるが、特になんらかの被害を被った訳ではなさそうだ
男の仕事場も特に前と変わらない様子である
事務所、熱帯魚やら金魚を管理する生簀、ココで飼われてる犬、応接間のアロワナ
各国の養殖場や原産地から輸送されてきた動物を管理するケージ(※2)
多種多様なペット用品が梱包された段ボール箱の山・・・・・
特におかしな様子のない動物の問屋さんの光景は前と変わってはいなかったが
男は慌てた様子でこう説明しだしたのである

男「俺が何を慌てているのかは地下の倉庫に来てくれれば分かる」

この問屋の地下には地下室があるというのだ
普段あまり使わないような荷物をまとめておく物置のような部屋として
存在する地下室なのだそうだが・・・・・・・・・

527 名前:榊さんのシリアスなSS書きます 投稿日:02/10/17 07:09 ID:???
「生物災害」     11 特設ケージ

話によると、その普段は使わないような「地下」に
あの「謎の生物」の特設ケージを作ったのだそうだ・・・
大きくなりすぎたあの生物の為に、「カミツキガメ」に使うような
大型で堅牢な特設ケージを与えてやったそうだ・・・

しかし

信じられないようなスピードで大型化・凶暴化した「謎の生物」は
その特設ケージをも破壊して、その外に出てしまったらしい・・・
幸いそこは地下だったので分厚い鉄扉を閉め
あの謎の生物が外に逃げるという最悪の事態は防げたらしいのだが
今も「謎の生物」は地下の倉庫部屋に潜んでいるという・・・

そう、男はこういう事に慌てていたのだ
「生物の予期せぬ脱走」「ありえない急速成長」「凶暴さ」
に慌てていたのだ・・・・・・・・・・

※2 ケージとは動物を飼育・管理する為の入れ物を指す、英語で檻、鳥篭の意
一般に、観賞魚や亀や小型トカゲ類には水槽、鳥には鳥篭、哺乳類には檻が使われる
ちなみに本SSに出てくるような両生類には通常水槽が使われる  

528 名前:榊さんのシリアスなSS書きます 投稿日:02/10/17 07:25 ID:???
「生物災害」     12 地下へ

榊達は男の案内で地下に向かう

梱包されたペット用品の山が保管されている倉庫
その一角にある古めかしい扉を開けると
薄暗い地下へと続くこれまた古めかしい階段がある
そこを降りると古めかしいが丈夫そうな鉄扉があるのだった・・・

男「あいつに最後に出会ったのは3日前、その時点で1mに達していたよ
凶暴さも爬虫類や両生類の類としては信じられないくらいだ
だから・・・くれぐれも気をつけてくれよ、危なくなったらみんなで逃げるぞ」

男はそう言うと地下室の鍵を開錠する

そして

分厚い鉄扉を素早く開けた・・・・・・!